副大統領と知事が大統領への登竜門
アメリカ大統領選挙に挑む直前、歴代の大統領はなにをしていたのかを調べてみると、大きく分けて2通りのキャリアを経ていることが分かります。
ひとつは「副大統領」。前任の大統領の最側近としてかたわらに控え、満を持して次の大統領職を担うケースが、これまで14回見られます(31.1%)。
副大統領から大統領へキャリアをつなげた例は、すでに2代目大統領のジョン・アダムズから見られます。
彼は、初代大統領のジョージ・ワシントンの元で副大統領を務めた後、大統領へと歩を進めました。
直近の例では41代大統領のジョージ・H・W・ブッシュが、副大統領経験者です。
「パパブッシュ」「大ブッシュ」として知られる彼は、1981〜1989年に掛けて、ロナルド・レーガン大統領のもとで副大統領を務め、その後、大統領になっています。
副大統領時代はレーガン大統領を忠実に支え、厚い信頼を寄せられました。この信頼がブッシュ自身の大統領のキャリアへとつながっていくことになります。
もうひとつのケースは、州知事を経て大統領選へと挑むケース。全45代の大統領のうち、10人(22.2%)が、州知事経験者です。
確認される限り、最古の州知事経験者の大統領は、第11代大統領のジェームズ・ポーク。1845年から1849年まで大統領を務めた彼は、1839年から1841年にかけて、テネシー州の州知事として成功を収めています。
第36代から現在の第45代大統領まで、直近10人の大統領を見てみると、副大統領経験者、州知事経験者ともに4人。現代において大統領になるには、副大統領か州知事を経験するのが最短の道、と言えるのかもしれません。
弁護士資格を持つ大統領経験者が多いことも、アメリカ大統領の特徴のひとつです。
累計で44人いる大統領経験者のうち、確認される限り26人が弁護士資格を持っています(59.1%)。
古くは2代目大統領のジョン・アダムズから、直近では44代目大統領のバラク・オバマまで、すべての時代において幅広く存在します。
その背景には、立法府を束ねる長として法律を熟知していることの強み、社会的地位や人格・能力への信頼性の担保といった仕事面への期待はもちろん、選挙に落ちても食いっぱぐれないという現実的な理由もあるかもしれません。
軍人として名声を得て、その声望を背景に大統領になるというキャリアを経るケースもあります。
そもそも、初代大統領のジョージ・ワシントン自身が、フレンチ・インディアン戦争や独立戦争を戦った軍人でした。
第18代大統領のユリシーズ・グラントは、南北戦争時に南軍の英雄であったロバート・E・リー将軍を破ったことで名を挙げています。
ジョン・F・ケネディも、第二次世界大戦中、ガダルカナル島の戦いにおいて乗っていたボートが日本軍の駆逐艦と衝突。九死に一生を得るできごとを体験しています。
彼らは戦地での経験や活躍を広く喧伝することで、国民の支持を集め、票に結びつけています。
これらを見ると、副大統領でも州知事でも、弁護士でも軍人でもなく、さらに加えるなら政治活動すら経験していない第45代大統領のドナルド・トランプがいかに異色の経歴かが分かります。