
マイナ保険証とは、健康保険証の機能をマイナンバーカードに統合する仕組みのことを指します。政府主導で、デジタル社会の実現と医療分野の効率化を目的に進められました。
2024年12月2日から、これまでの健康保険証は新規発行されなくなり、現在使用している保険証は、その有効期限まで(2025年12月1日)、使用可能という形となりました。
なお、マイナンバーカードを持っていない人や、マイナ保険証の利用登録をしていない人は、現行の保険証の有効期限より前に、保険者から送付される「資格確認書」で医療機関で受診が可能です。
以下では、マイナ保険証に関する法案の背景、内容、課題について詳しく説明します。
マイナ保険証に関連する法案の提案主体
マイナ保険証の導入は、自民党・公明党連立政権の下、内閣府とデジタル庁が中心となり進められました。菅義偉首相(当時)の政権下で打ち出された「デジタル化推進」の一環として提案され、2021年にはマイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになりました。岸田文雄政権(当時)もこれを継承し、2024年には健康保険証の廃止を目指して法案が成立しました。
法案提出の背景と理由
マイナ保険証の導入背景には、以下の課題と目的が挙げられます。
① デジタル化の遅れ
日本の行政手続きや医療分野ではデジタル化が遅れており、効率性向上が求められていました。
② 業務の効率化とコスト削減
健康保険証の発行や更新にかかる事務手続きやコストを削減し、医療機関や保険者の負担を軽減するという目的があります。
③ 医療データの一元管理
患者の診療履歴や薬剤情報をデジタルで一元管理することで、医療サービスの質が向上することが期待されています。
④ 不正利用の防止
従来の健康保険証は第三者による不正利用が課題でしたが、マイナ保険証では顔認証やセキュリティ機能が強化され、不正を防止する仕組みが整えられています。
マイナ保険証のメリット
マイナ保険証の制度に関して、厚生労働省は以下のようなメリットを挙げています。
① データに基づくより良い医療が受けられる
「受診時・調剤時にマイナンバーカードを用いて受付し、情報提供に同意することで、過去に処方されたお薬や特定健診などの情報を医師・薬剤師にスムーズに共有することができます」
② 手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除される
「マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、『限度額適用認定証』がなくても、公的医療保険が適用される診療に対しては限度額を超える分を支払う必要がありません」
③ マイナポータルで確定申告時に医療費控除が簡単にできる
「マイナポータルからe-Taxに連携することで、確定申告時の医療費控除申請がカンタンになります。医療費の領収証を管理・保管しなくてもマイナポータルで医療費通知情報の管理が可能となり、マイナポータルとe-Taxを連携することで、データを自動入力できます」
④ 医療現場で働く人の負担を軽減できる
「マイナンバーカードを健康保険証として利用し情報提供に同意いただくと、お薬や特定健診などの情報を医師・薬剤師にスムーズに共有することができ、業務効率化が図れます」
引用:厚生労働省HP
マイナ保険証に対する課題
マイナ保険証の導入には多くのメリットが期待されている一方で、以下のような課題も指摘されています。
① 個人情報保護への懸念
医療データを含む個人情報がデジタル化されることで、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まるという指摘があります。
② マイナンバーカードの普及率
2024年時点でマイナンバーカードの普及率は約80%に達したものの、未取得者やカードを申請していない人が一定数存在します。そのため、健康保険証廃止に伴う混乱が懸念されています。
③ 高齢者やデジタル弱者への配慮不足
高齢者やデジタル機器に慣れていない人々にとって、オンライン資格確認の手続きや利用方法が難しいという声があります。
④ システム障害への懸念
オンライン資格確認システムがトラブルを起こすケースがあり、一部の医療機関で利用が滞る事態が発生しています。
まとめ:マイナ保険証のこれから
マイナ保険証は、行政のデジタル化推進と医療サービスの効率化を目指した政策として導入されました。効率性や利便性の向上が期待される一方、課題も残されています。これらの問題を解消することで、制度の円滑な運用につながるでしょう。
