従わない場合は罰金も スプーン有料化
2021年3月9日、プラスチックゴミの排出削減やリサイクル強化を進めるため、「プラスチック資源循環促進法」の法案が閣議決定されました。
この法案では、飲食店やコンビニエンスストアで、弁当やスイーツ、飲料を購入した際、現行では無料で配られているプラスチック製のストローやスプーン、フォークを有料化することなどを求めています。
また、家庭から出る食品トレイや文房具などを「プラスチック資源」と定義。一括回収する仕組みを導入することも盛り込まれました。
飲食店やコンビニエンスストアなどでの使い捨てプラスチック製品の削減義務付けについては、有料化や代替素材への切り替え、必要かどうかを購入客に確認するといった取り組みを求め、怠った事業者が勧告や命令に従わない場合は50万円以下の罰金を科すことも定められています。
これは、2020年7月1日から全国で一律にスタートしたレジ袋有料化施策の発展版。法案の閣議決定の背景にはどのような理由があるのでしょうか?
「脱プラスチック」「脱石油」は世界の潮流
すでに導入されている「レジ袋有料化」の大きな背景には、国際社会の脱石油、脱プラスチックへの流れがあります。
特にプラスチックごみによる海洋汚染問題は深刻で、世界各国で課題となっています。
海洋生物が海中を漂うプラスチック製品を餌と誤認して取り込んでしまい、腸閉塞を起こして死んでしまう、微細な粒子に分解されたプラスチック(マイクロプラスチック)が海洋生物の体内に蓄積され、その生物を捕獲して食した人体にもダメージを与えてしまう、ビニール袋などが漁獲用の網に引っかかり破損させるなど、悪影響が拡大していました。
2010年の調査結果によると、日本の陸上から海洋に流出したプラスチックごみの量は年間2〜6万トンと推定されており、その解消は喫緊の課題のひとつとなっていました。
これらの問題について世界的な方向性を見出そうと、2018年6月にはカナダで開催された「G7シャルルボワサミット」では、「2030年までにすべてのプラスチックを再利用や回収可能なものにする」といった達成期限と数値目標が定められた「海洋プラスチック憲章」が掲げられました。
ところが、日本とアメリカはこの憲章に署名しませんでした。当然、国内外から猛烈な批判を浴びてしまいます。
これらの批判を受けて、世界的な脱石油、脱プラスチックの流れに乗るべく、2019年5月31日、政府から「プラスチック資源循環戦略」が発表されました。
この中の重点戦略として、「ワンウェイプラスチックの使用削減(レジ袋有料化義務化等の「価値づけ」)」が定められ、2020年7月から始まった「レジ袋有料化」へとつながっていきます。
政府発行の資料より「プラスチック資源循環戦略(概要)」
レジ袋有料化は世界のスタンダード
2020年7月、レジ袋が有料化された際、驚かれた方も多かったと思います。
特に、コロナ禍真っ只中の時期、少しでも人と人との接触を避けたいと思っていたにもかかわらず、「ビニール袋いりますか?」「1枚○円です」のやり取りが新たに発生してしまうこともあり、「余計なことを!」と感じた方々も多かったのではと推察します。
ですが、海外を見てみると脱プラスチックの動きは著しく、すでに2018年の段階で世界127ヵ国以上がビニール製のレジ袋を有料、または禁止しています。
イギリス、ベルギー、デンマーク、ギリシャ、オランダ、ポルトガル、台湾、カンボジア、トルコ、インドネシア、コロンビア、その他ヨーロッパ諸国では有料化。
アメリカ、イタリア、フランス、カナダ、中国、パキスタン、インド、イスラエル、サウジアラビア、アフリカ諸国などでは部分的、もしくは全面禁止となっており、レジ袋の有料化(または禁止)が世界的な潮流であることがわかります。
レジ袋の有料化がどれほど環境に貢献したのか、日本国内での検証はこれからとなりますが、イギリスでは2015年にレジ袋が約7円になったことで、使用率は14%減。同じくオランダで1枚約30円になったことで、使用率が20%減少、廃棄されるレジ袋の量は40%減と、大きな効果が現れています。
四方を海に囲まれ、豊かな海洋資源に支えられている島国・日本。
これまで無料だったものが有料になることで一時的な不便さは感じるでしょうが、美しい自然を次世代に残すためにも、引き続き積極的なマイバッグの活用と合わせて、プラスチック製の使い捨てスプーン等の利用について再考していきたいところです。
この新法案は今国会で審議され、2022年4月に施行される見通しです。