「政治をもっと身近に。」
政治に関する情報をわかりやすくお届けします。

政治ドットコム地方自治暮らし教師の給料ってどう決まる?「給得法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」の仕組みと改正に向けた動向

教師の給料ってどう決まる?「給得法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」の仕組みと改正に向けた動向

投稿日2025.2.7
最終更新日2025.02.07

日本の公立学校の先生の給与は、一般の公務員とは異なる特別な仕組みで決められています。その根拠となるのが、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」、通称「給特法」です。1966年に制定され、以降、半世紀以上にわたって公立学校の教員の働き方に大きな影響を与えてきました。

近年、教員の長時間労働や過重負担が社会問題として取り上げられるなか、この法律が果たしている役割や、改正の必要性についても議論が続いています。本記事では、給特法の内容と成り立ち、そして現在の課題について詳しく解説します。

残業代が出ない?!給特法が定める公立学校の教員の給与ルール

給特法の最大の特徴は、教員に時間外勤務手当(いわゆる残業代)を支給しないことです。一般の公務員であれば、時間外勤務をすればその分の給与が支払われます。しかし、公立学校の先生には「教職調整額」と呼ばれる一律の手当が支給され、それをもって時間外勤務手当に代える仕組みになっています。

この教職調整額は、給与月額の4%と法律で決められています。たとえば、基本給が30万円の先生なら、教職調整額は1万2000円です。実際にどれだけ時間外労働をしても、支給される額は変わりません。

この制度は、もともと「教員は自らの裁量で業務を遂行する専門職であり、時間ではなく成果に基づいて働くべき」という考え方をもとに導入されました。しかし、現実には部活動の指導、授業準備、保護者対応、事務作業などに追われ、長時間労働が常態化しています。

なぜ給特法は導入されたのか?背景にある歴史

1960年代、日本の公立学校では教員不足が深刻な問題となっていました。当時の教員の給与は、一般の地方公務員と比べても決して高くなく、長時間労働が当たり前の職場環境でした。そこで、給与を引き上げつつ、労働時間に関する特別ルールを設けることで、教員の待遇を改善しようとしたのが給特法です。

制定当初、教職調整額の割合は10%とされていました。その後、財政の都合などもあり、1971年の改正で4%へと引き下げられました。しかし、それ以降は一度も見直されていません。

この制度の背景には、「教員の仕事は授業だけではなく、放課後の生徒指導や教材研究など、多岐にわたる。そのすべてを時間換算して給与に反映するのは難しい」という考え方もありました。結果的に、時間外勤務手当の代わりに一定の調整額を支給する形が取られました。

給特法改正に向けた動きの背景には長時間労働が常態化する教員の実態

給特法の導入当時と現在では、学校の状況が大きく変わっています。少子化が進む一方で、教育内容は多様化し、教員の負担は増す一方です。

文部科学省の調査によると、公立小学校の教員の約77%、中学校の教員の約91%が、過労死ラインとされる「月80時間以上の時間外労働」をしているという結果が出ています。給特法のもとでは、こうした長時間労働をしても給与にはほとんど反映されません。

部活動の指導や保護者対応、校務分掌、行事の準備など、授業以外の業務が膨大になっていることも要因の一つです。また、「定時に帰ることが悪い」という文化が根付いてしまい、教員が自主的に働き続けてしまう環境も問題視されています。

給特法見直しの動きと今後の課題

こうした状況を受け、近年では給特法の見直しが議論されています。2022年には、政府が「学校の働き方改革」として、時間外労働の削減を目指す方針を打ち出しました。しかし、実際の現場ではなかなか変化が見られないのが現状です。

主な課題としては、以下のような点が挙げられます。

  1. 教職調整額の割合の見直し
    現在の4%という割合が適正なのか、改めて検討する必要があります。長時間労働が常態化している現状を考えれば、より高い割合への引き上げも選択肢となります。
  2. 業務量の削減
    そもそも教員が過剰な業務を抱えすぎているという問題もあります。事務作業の外部委託や、部活動の地域移行など、根本的な業務の削減が求められます。
  3. 時間外労働の適正な管理
    教員の勤務時間を正確に把握し、過剰な労働を抑制する仕組みが必要です。タイムカードの導入や、勤務時間に応じた手当の支給など、一般企業と同様の仕組みを整えるべきだという意見もあります。

まとめ:教員の適正な働き方を実現する給特法のこれから

給特法は、もともと教員の働き方を守るために作られた法律でした。しかし、現在の学校現場の状況を考えると、時代にそぐわない部分も多いです。長時間労働が常態化し、適正な報酬が支払われていないという現実を踏まえれば、抜本的な見直しが求められます。

教員が心身ともに健康で働ける環境を整えることは、ひいては子どもたちの教育の質の向上にもつながります。給特法のあり方を見直し、現代の教育現場に適した仕組みを構築することが、これからの課題となるでしょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
株式会社PoliPoliが運営する「政治をもっと身近に。」を理念とするWebメディアです。 社内編集チーム・ライター、外部のプロの編集者による豊富な知見や取材に基づき、生活に関わる政策テーマ、政治家や企業の独自インタビューを発信しています。