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「議員定数削減」とは?目的や課題点、各政党の立場をわかりやすく解説

投稿日2025.12.9
最終更新日2025.12.09

自民党と日本維新の会は連立政権の発足にあたり、衆議院議員の定数を1割削減する方針で合意しました。日本維新の会はこの議員定数削減を最重要項目と位置づけており、両党は今国会で関連法案の成立を目指しています。

議員定数削減は、選挙制度そのものの見直しにつながる大きな改革であり、政界内外から注目を集めています。

以下では、議員定数削減の目的や想定される課題、そして主要政党の立場についてわかりやすく解説します。

1. 議員定数削減とは?

議員定数削減とは、国会や地方議会において、選挙で選出される議員の人数(定数)を法律や条例の改正によって減らすことを指します。

現在議論となっている国会議員の定数は、公職選挙法で以下のように定められています。

  • 衆議院:465人(小選挙区289人、比例代表176人)
  • 参議院:248人(比例代表100人、選挙区148人)

このため、議員定数を削減するには、公職選挙法を改正し、法律で定められた議員数を減らす必要があります。

衆議院の議員定数は、これまで段階的に削減されてきました。最も多かったのは1986年の512議席です。1994年に政治改革関連法が成立し、小選挙区制が導入されると、1996年の総選挙では議席数は500に減少しました。

その後も、2000年に比例代表選出議員の定数を20削減、2014年に「1票の格差」是正のため小選挙区選出議員の定数を5削減、2017年には小選挙区6・比例代表4の計10議席を削減するなど、見直しが続いています。

結果として、1986年から現在までの約30年間で、衆議院の議席数は合計47削減されました。

引用:公職選挙法

参考:衆議院HP

2. 議員定数削減が今議論される背景

なぜ現在、議員定数削減が再び議論されているのでしょうか。

議論の発端として、日本維新の会が自民党と連立政権を組むにあたり、議員定数削減を最重要項目に位置づけたことが挙げられます。2025年10月20日に両党が締結した「自由民主党・日本維新の会 連立政権合意書」には、「1割を目標に衆院議員定数を削減するため、25年臨時国会で議員立法案を提出し、成立を目指す」と明記されたためです。

また、日本維新の会が議員定数削減を強く訴える背景には、大阪での経験があると指摘されています。同党は地域政党として発足した当初から「身を切る改革」を掲げ、実際、橋下徹氏が知事に就任して以降、大阪府議会は約2割の議席削減を実施し、財政再建を進めてきました。こうした過去の取り組みが、今回の国政での提案にもつながったと考えられています。

このような提案を踏まえ、自民党の高市早苗首相と日本維新の会の吉村代表は、12月1日の会談で、衆議院の小選挙区25議席・比例代表20議席を削減する案を軸に検討を進める方針を確認しました。

さらに、両党がまとめた法案要綱では、今後、衆議院議長の下に設置される与野党の選挙制度改革協議会で具体的な検討を行うと定めています。また、1年以内に結論が出ない場合は公職選挙法を改正し、小選挙区25・比例20の計45議席を削減するとも明記されています。

引用:日本維新の会HP

参考:日経新聞ABCニュース

3. 議員定数削減のメリットとデメリット

議員定数削減には、財政面・制度面で利点がある一方、代表性の低下などの課題も指摘されています。ここでは主なメリットとデメリットを整理します。

【メリット】

①歳出削減につながる

給与にあたる「歳費」だけでなく、非課税の手当や秘書の給与などを含めると、国会議員1人あたり年間で約7,000万〜8,000万円の公費負担があるとされています。。与党が合意した計45議席の削減を行った場合、年間で約34億円の歳出削減効果が見込まれています。

② 政治コストの削減

意思決定の迅速化:議員数が少なくなれば、議論の集約が早まり、意思決定のスピードが上がるとの指摘もあります。

【デメリット】

① 1票の格差が拡大する可能性

与党が提案する「小選挙区25削減」を実現すると、20都道府県で小選挙区の定数が減る見通しが立てられています。とくに人口が多い首都圏で削減が進むため、1票の価値に差が生じ、「1票の格差」が拡大するリスクが指摘されています。

② 少数意見が反映されにくくなる

比例代表の定数を削減する場合、少数政党が議席を獲得しづらくなり、多様な民意が国会に反映されにくくなる可能性があります。また、政党が乱立する中で比例定数を減らせば、民意の幅広い吸い上げが難しくなるとの懸念もあります。

参考:TBS日経新聞

4. 議員定数削減に対する各党の立場

議員定数削減については、もともと日本共産党やれいわ新選組など一部政党を除き、大きな反対はありませんでした。実際、立憲民主党や国民民主党は過去に定数削減を主張しており、公明党も削減そのものには一定の理解を示してきました。

しかし、自民党と日本維新の会が進める、「衆議院の小選挙区25議席・比例代表20議席を削減する案」、および「1年以内に結論が出なければ公職選挙法を改正して計45議席を削減する」という方針については、与党内も含め各党から反対意見が出ています。

たとえば、自民党の岩屋毅・前外務大臣は、与党内だけで議員定数削減を決めようとしている現状に対し、「進め方が乱暴だ」と意見を述べました。

また、野党各党も、選挙制度に関わる重要な法案を与党間の合意だけで進めようとする手法に強く反発しています。公明党の斉藤鉄夫代表は、1年以内に結論が出なければ自動的に定数を削減するという仕組みに反対し、「乱暴なやり方であり、民主主義の否定だ」と主張しました。

一方で、国民民主党は別の選挙制度改革案として「中選挙区連記制」を独自に提案しています。これは、1つの選挙区から複数名を選出し、有権者は複数の候補者に投票できるという制度で、最終的には議員定数削減の達成とともに、多様な民意を反映しやすくすることを狙いとしています。

今後、自民党と日本維新の会は、議員定数削減の大枠を示す法案を今国会で提出し、成立を目指す方針です。一方、野党は選挙制度改革と一体的に議論すべきだと主張しており、与野党間での調整が課題となっています。

引用:テレビ朝日産経新聞

参考:東京財団国民民主党HP

まとめ

議員定数削減は、国会のあり方や選挙制度に直結する大きな改革であり、財政面の負担軽減や政治の効率化といったメリットがある一方、代表性の低下や1票の格差拡大など、慎重な検討が求められる課題も抱えています。

主要政党の多くが「定数削減」そのものに反対しているわけではないものの、その目的や制度の位置づけ、選挙制度全体の改革との関係性については立場が分かれています。今後は、どの選挙制度のもとで、どのような形で定数削減を行うのか、そして国会の代表性・公平性をどのように担保するのかが問われています。

   
この記事の監修者
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株式会社PoliPoli 政府渉外部門マネージャー 秋圭史
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)