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政治ドットコム政治用語質問通告とは何か?概要や課題点についてわかりやすく解説

質問通告とは何か?概要や課題点についてわかりやすく解説

投稿日2026.1.30
最終更新日2026.01.30

国会中継やニュースで目にするのは、鋭い追及や迫力ある答弁の応酬です。しかし、そのやり取りの背後には、あまり知られていない「国会の質問通告」という重要なプロセスが存在します。
質問通告とは、議員が予算委員会などで行う質問内容を、事前に政府側へ伝える手続きのことです。この制度は、正確な政府答弁を支え、国会審議を円滑に進めるための土台となっています。

一方で近年、質問通告の遅延が行政現場の過重負担を招いているとの指摘も増えています。なぜ質問通告が遅れると問題なのか。与野党はどのような立場で対立しているのか。そして、改善に向けた議論はどこまで進んでいるのでしょうか。

この記事では、質問通告の概要や目的、現在議論となっている課題点についてわかりやすく解説します。

1. 質問通告とは?

質問通告とは、議員が国会で質問する際、事前に質問の趣旨や論点を政府側に伝える行為を指します。特に国会審議の中心となる予算委員会では、ほぼすべての質疑が質問通告を前提に行われています。

質問通告の主な目的は、政府答弁が不正確になることを防ぐ点にあります。国会での答弁は、法令解釈や過去の答弁との整合性、統計データ、予算措置などを踏まえた公式な説明として行われるため、官僚は事前に関係資料を精査し、答弁案を準備する必要があります。例えば、半導体工場の誘致に関する質疑では、補助金の規模や雇用への影響、経済安全保障上の位置づけなど、多岐にわたる論点が同時に問われます。事前の質問通告がなければ、こうした点について正確で責任ある答弁を行うことは困難です。また、論点をあらかじめ共有することで、限られた審議時間の中で無駄なやり取りを避け、議論を円滑に進める役割も果たしています。

一方で、質問通告は法令に基づく制度ではありません。国会法や各議院の規則には、質問通告の方法や期限に関する詳細な規定はなく、義務として定められているわけでもありません。現在行われている質問通告は、長年の慣行として積み重ねられてきたものです。この点が、後に述べる通告の遅れや当日通告をめぐる問題の背景となっています。

もっとも、通告の時期については、与野党間の申し合わせによって一定の目安が設けられてきました。1999年の与野党合意では、質問通告は原則として「2日前の正午まで」とされており、2023年には衆議院議院運営委員会理事会において、「速やかな質問通告に努める」ことが改めて確認されています。ただし、これらはいずれも政治的な合意にとどまり、法的な拘束力を持つものではありません。

参考:立憲民主党HP日本経済新聞

2. 質問通告から国会答弁までの流れ

法令に基づく制度ではなく、慣行として積み重ねられてきた質問通告は、実際には一定の手順に沿って運用されています。概ね次のような流れで行われているとされています。

1. 議員が質問を作成する

 与野党の議員が、それぞれ国会で行う質問を準備する。どの程度まで具体的に質問内容を事前に通告するかについては明確なルールがなく、詳細な設問まで示す場合もあれば、大まかな論点提示にとどまる場合もある。

2. 質問の割り振りが行われる

 質問内容に応じて、どの省庁・どの部局が答弁を担当するかが整理され、当該省庁に質問が伝達される。

3. 答弁書の原案が作成される

 割り振られた省庁・部局が中心となり、法令解釈、過去の答弁、統計データ、予算措置などを踏まえて答弁書の原案を作成する。

4. 関係部局との調整が行われる

 答弁書の原案について、関連する部局が意見を出し合い、必要に応じて内容の調整が行われる。政策の影響範囲が広い場合には、複数部局が関与することもある。

5. 答弁する閣僚に答弁書が渡される

 最終的に取りまとめられた答弁書が、実際に国会で答弁に立つ閣僚に共有される。

6. 閣僚への事前説明が行われる

 内容に応じて、委員会開会前に担当官僚から閣僚へ説明が行われる。

. 国会で答弁が行われる

参考:日本経済新聞日本経済研究センター

3. 質問通告をめぐる主な論点

上記の通り、質問通告は一定の手順に沿って行われていますが、その運用をめぐってはさまざまな課題が指摘されています。なかでも大きな論点となっているのが、通告の遅さや、それが国会審議の質に与える影響です。

1. 通告の遅さ

質問通告を巡る最大の争点が、「通告の遅さ」です。

内閣人事局が公表した調査によると、2025年通常国会のうち2〜3月を対象とした集計期間では、委員会質疑の2日前までに質問通告が行われた割合は50.1%にとどまったことが明らかになったとされています。

また、こうした通告の遅れにより、答弁を準備する官僚側が短時間で対応を迫られ、結果として残業が常態化しているとの指摘があります。特に国会対応を担当する官僚にとっては、深夜に及ぶ残業の要因となり、長時間労働の温床になっているとされています。

では、なぜ質問通告の遅れは発生してしまうのでしょうか。その背景として指摘されているのが、委員会の開催日程が直前に決まるケースが多い点です。質問を行う議員側も、十分な準備時間を確保できないまま質問を作成せざるを得ず、結果として通告が遅れる構造が生まれています。

2. 質問通告は国会審議の質を高めているのか

質問通告に対しては、国会審議の質との関係を疑問視する声もあります。よく指摘されるのが、事前に答弁内容が準備されることで、「台本型質疑で緊張感がない」との批判も根強くあります。即興性のある質疑が、政治のダイナミズムを生むという考え方です。

こうした議論を考えるうえで、しばしば引き合いに出されるのがイギリスの制度です。イギリスでは、議員が首相に質問する場合、原則として事前の質問通告は必要とされていません。首相は担当閣僚に答弁を委ねることもできず、すべての質問に自ら答えることが求められます。このため、即時の判断力や政治的な説明能力が強く問われる仕組みとなっています。

もっとも、日本の国会とイギリスの議会では制度や政治文化が異なるため、単純な比較はできません。それでも、質問通告が国会審議の質をどのように高め、あるいは制約しているのかという点は、今なお議論が続く重要な論点となっています。

引用:内閣官房

参考:日本経済新聞

4. 質問通告をめぐる改善策の議論

質問通告をめぐる議論は、通告の是非や厳格化だけでなく、国会運営の具体的な仕組みをどう改善するかという観点から展開されています。以下では、現在指摘されている主な論点を、いくつかの観点に分けて整理します。 

① 国会日程の決め方を見直す

最も多く指摘されているのが、国会日程の不透明さです。先述の通り、現在の国会では、委員会の開催日や質疑時間、与野党間の質問配分が直前まで確定しないケースが少なくありません。こうした運営では、議員側も十分な準備時間を確保できず、結果として質問通告が遅れる構造が生まれています。

② 委員会の開始時間を調整する

国会運営の工夫として、予算委員会の開始時間を見直すべきだという議論もあります。従来、予算委員会は午前9時開始が一般的でしたが、これを夕方に設定することで、官僚が午前中の時間を使って想定問答を作成できるようになります。これにより、質問通告が遅れた場合でも深夜残業を減らし、官僚の過重な負担を軽減できるのではないかという考え方です。

③ 質問通告のデジタル化・可視化

運用面の改善策としては、質問通告のデジタル化や可視化を求める声もあります。

たとえば、チームみらいは、どの議員が、いつ質問通告を行っているのかが十分に見える形になっていない点を問題視し、質問通告の提出時期を可視化することで、通告の遅れに対する透明性を高め、国会全体の自律的な改善につなげるべきだと主張しています。

④ 質問通告の慣習そのものを見直す

さらに踏み込んだ議論として、詳細な質問通告を事前に行う慣習自体を見直すべきだという意見もあります。この立場では、答弁時点で即座に答えられない数字や資料については、後日、国会に提出する形でもよいのではないかとされています。質問通告を減らすことで、国会審議の即興性や政治的なやり取りを重視するとともに、官僚の負担を軽減するという考えです。

参考:TBSテレビチームみらい

まとめ

質問通告は、国会審議を円滑に進め、政府答弁の正確性と一貫性を担保するために、長年の慣行として運用されてきた重要な仕組みです。法令に基づく制度ではないものの、予算委員会を中心に国会審議の前提として定着しており、限られた審議時間の中で政策論点を整理する役割を果たしてきました。一方で、通告の遅れが官僚の長時間労働を招いている点や、国会審議の緊張感を損ねているのではないかといった課題も指摘されています。質問通告を単なる手続きの問題として捉えるのではなく、国会審議の質と行政現場の持続可能性をいかに両立させるのかという観点から、今後の制度設計が問われています。

   
この記事の監修者
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株式会社PoliPoli 政府渉外部門マネージャー 秋圭史
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)