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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー前原誠司共同代表が描く、教育革命からの日本再生 日本維新の会が挑む「チャンスがあふれる国」への道

前原誠司共同代表が描く、教育革命からの日本再生 日本維新の会が挑む「チャンスがあふれる国」への道

投稿日2025.2.12
最終更新日2025.02.12

政界に新たな動きが生まれています。2024年12月に行われた日本維新の会代表選挙を経て、吉村洋文代表が共同代表に指名したのが前原誠司議員でした。前原議員は民主党政権時代に党代表や外務大臣、国土交通大臣などを歴任。2023年に「教育無償化を実現する会」を立ち上げ、教育改革の実現に向けて活動してきました。2024年10月に日本維新の会に合流し、現在は共同代表として改革に取り組んでいます。

今回のインタビューでは、少数与党における日本維新の会の舵取りや、教育無償化政策にかける思いについて伺いました。

(取材日:2025年1月16日)
(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 井出光)

前原誠司議員前原誠司(まえはら せいじ)議員
1962年生まれ、京都市出身。京都大学法学部卒業。
京都府議会議員を経て、1993年衆議院議員選挙で初当選(11期)。
民主党政権下では外務大臣や国土交通大臣などを歴任。
趣味はSLの写真撮影。

「お前は政治家に向いていると思うぞ」教授の一言で政治の道へ

―前原議員が政治家を志したきっかけは何だったのでしょうか。

浪人時代に出会った1冊の本がきっかけでした。
受験勉強の息抜きに立ち寄った本屋で、たまたま高坂正堯先生の『国際政治—恐怖と希望』という本と出会いました。「政治とは複雑怪奇」という趣旨の内容が書かれていて、高坂先生のリアリズム、現実主義的な考え方に感銘を受けたんです。

先生の経歴を確認すると、高坂先生は京都大学法学部の教授でした。そこから高坂先生の授業を受けたいという思いが生まれ、無事合格しました。私は完全な「高坂ファン」というか「高坂フリーク」でしたから、専門課程に入る前の2年生から国際政治の授業に潜り込み、3年生で念願の高坂ゼミに入りました。

大学院に進学し先生の下で学び続け、学者になることを夢見ていました。ところが高坂先生から「お前は学者になるほど頭も良くないし、勉強もしとらんと、政治家に向いていると思うぞ」と言われてしまって。大好きな先生にそんなことを言われ後ろから頭を殴られたような思いでしたが、この一言で松下政経塾への入塾を決意し、政治の道へ進むことになりました。

―政治家を志した当時はどの政策分野に力を入れようと考えていたのでしょうか。

大学時代に国際政治を学んだこともあり、外交に最も注力しようと考えていました。当時は米ソ冷戦時代で、いつ核戦争が起きてもおかしくないような緊張状態。そんな中、日本は安全保障を同盟国のアメリカにまかせきりの状態で、これではいけない、日本はしっかり自立する必要があると強く感じていました。そういう意味では、国際政治や外交活動は私にとって政治家としての入り口だったことは間違いありません。

ただ、今は外交に限らず幅広い分野で勉強をしています。私は当初からずっと総理大臣を目指しています。総理大臣になるためには一分野の専門家であるスペシャリストでは務まりません。経済や社会保障など、あらゆる分野に精通したジェネラリストにもなる必要があります。

前原誠司議員

教育無償化は日本再生のセンターピン

―前原議員は2024年10月に日本維新の会に合流し、12月には党の共同代表に就任されました。どのような経緯で就任されたのでしょうか。

共同代表の打診があったときは、正直、私自身びっくりしました。

日本維新の会の代表選が12月1日に予定されていて、その前日に吉村洋文さん(現代表)とお会いして共同代表を打診されました。

民主党政権時代に私が国土交通大臣として取り組んだ、関西国際空港・伊丹空港の統合やコンセッション(運営権売却)といった改革実績を評価してくだっていたようです。そして、若い議員たちをまとめてほしいと。「本当に私でいいんですか?」と確認せずにはいられませんでしたが、「お願いします」と強い要望をいただき、お引き受けした次第です。

―前原議員から見て、日本維新の会の強みはどこにあるのでしょうか。

衆議院には若くて優秀な議員が多くいる一方で、参議院には実績、経験を積まれた方々が並びます。

たとえば浅田均議員は参議院会長、大阪府議会議長を経験されていますし、猪瀬直樹議員、嘉田由紀子議員、松沢しげふみ議員の3人は知事経験者。維新の会の議員数はそれほど多くないですが、総合力という意味では他の党に引けを取らないと思っています。

―2024年10月の衆議院議員選挙では、日本維新の会は6議席減の38議席。これから党として、力を入れていきたいことは何でしょうか。

国会が少数与党の状態になったからこそ、日本維新の会は何を目指す政党なのかということをより明確にしていかなければいけません。

元々、維新は国と地方のあり方の見直し、統治機構改革、二重行政の解消、そういった行財政改革をしっかりやっていきながら浮いたお金を教育に充ててきました。それで大阪で人気を誇ってきたわけですよね。ですから、それを全国に展開していく。行財政改革を一つひとつ進めていくことが党として大事なことだと考えています。これは多くの団体から支援を受けている自民党には絶対にできないことです。

吉村代表が代表選挙で主張していたガバナンスコードについては、具現化するために様々な取り組みをしています。「飲み食い政治」からの決別、「身を切る改革」の継続。また、参議院の1人区の野党一本化も吉村代表が代表選で主張していたことで、これをどのように実現していくかサポートしていきます。

―少数与党になった国会での他党との向き合い方についてお考えを聞かせてください。

他党がどうというよりも、まず自分たちの足腰をどう強めていくかが大事です。この少数与党という状況を、各党でどう活かして行けるかが問われています。

現在の国会では、自民党、公明党だけでは予算も法律も成立させることができません。どこかの政党の協力が不可欠な状況です。

では、我々維新として何にこだわり、予算の修正を飲ませるのか。自分自身が自公に足りないものをどう逆提案をし、政策を実現していくか。コンセプトと力量が問われるわけです。

すでに教育の無償化については、自民党、公明党と3党協議の枠組みをつくりました。今後は社会保険に関わる3党協議の場も設けたいですね。前原誠司議員

―教育無償化の意義について、改めて教えてください。

「失われた30年」(バブル崩壊の1990年代初頭から2020年代初頭までの30年間)で日本の国際競争力は低下し、企業の時価総額が高い企業がなくなってきています。新たなスタートアップ企業の創出も少なく、ましてやユニコーン企業(評価額が10億ドル以上、設立10年以内の非上場のスタートアップ企業)の誕生も稀です。このまま「失われた40年」「50年」になってしまうのではないかといった危機感をずっと持っていました。

最も大きな問題は何かと考えたときに、この国は人への投資があまりにも少なすぎるという事実に突き当たったわけです。

たとえばOECD(経済開発協力機構)に加盟する先進国35ヶ国で、日本の教育費は下から2番目。親の所得格差が子どもの教育機会格差、そして生涯収入格差につながっている現状があります。裕福な家庭の子どもは塾に通い、難関大学に進学し、良い就職先を得る。一方で、そうではない子どもは大学進学すら難しいこともあります。

つまり、教育の不平等が格差の再生産を引き起こしているということ。この現状はいち早く変えなければいけません。

まずは誰もが学べる環境をつくっていく。学びたいと思う子どもには等しく学べる環境をつくり、一人ひとりの能力を引き出すことで、労働生産性が上がり、賃金も上がります。教育は日本再生のセンターピンなのです。ここを倒さなければストライクは取れない。つまり、教育無償化は「前提条件」なのです。

―実際にどのようなプランで教育無償化を進めていくのでしょうか。

現在、3党協議も進めていますが、まずは2025年度からの高校の授業料無償化を実現したいです。これには予算の修正が必要になりますが、最優先で取り組んでいきます。

それから2026年4月からは0〜2歳の保育料と学校給食費の無償化も実施していきたいです。

また、2025年4月から始まる3人以上の多子世帯の大学授業料については、これを1人でも無償化にすべきだと考えています。しっかりと法律にまとめて動き出せるようにしていきます。前原誠司議員

ただし、無償化はあくまで教育改革の入り口にすぎません。
最も重要なのは大学改革です。大学を拠点にしたまちづくりをしていきたい。大学をスタートアップ企業の拠点にして地域の雇用を生み、経済成長、地方創生につなげていく。地方の拠点大学がスタートアップを支援する。その企業がうまくいけば地域活性化、国の活性化になるはずです。

教育を無償化するからには、しっかりと勉強してもらう。日本を変えていくんだという大学がもっと出てきて、そこから日本を牽引するような企業が生まれてくるかもしれない。そう考えるとワクワクしませんか。

人づくりこそ国づくり。社会保険料を下げること、行財政改革を徹底的にすることも大切ですが、私は日本維新の会の教育改革を担いたいと思っています。

チャンスがあふれる国を 若者へのメッセージ

―教育無償化のほかに、注力していきたい政策は何でしょうか。

前原誠司議員

手取りを増やす政策です。私たち維新は国民民主党が取り組んでいる「103万円の壁」とは違うアプローチをしていきます。実は「103万円の壁」は「壁」ではないんです。本人の手取りは減らない。ただ、アルバイトする大学生の年収が103万円を超えてしまうと扶養控除がなくなり、親の手取りが減る。だから子どもが103万円以上稼げないという状況にはなっています。

それ以上に切実なのは、パートやアルバイトをされている方々が直面している106万、130万の壁。これは社会保険料による壁で、いわば「崖」なんです。106万円を超えると、手取りがストンと落ちるわけです。働いて手取りが下がるなんてあまりにもひどいじゃないですか。ここを財政出動で埋めて、崖にならないようにしていくべきだと考えています。

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

前原誠司議員

アメリカの優秀な学生はスタートアップ、ベンチャー企業に就職するか、自分で起業します。一方で、日本の優秀な学生は大企業への就職を目指すことが多い。つまり「ベンチャースピリット」がアメリカにはあって、日本にはない。大学を中心とした教育システムを変革し、若者の挑戦を後押しする仕組みに変えていかなければいけないと思うんです。

たしかに今の日本は高齢化が進んでどよんとした雰囲気ですが、若い人たちには無限の可能性があります。

私自身、何もないところから政治の道を志し、民主党政権下で3度の大臣職を務めさせていただきました。民主党、民進党、教育無償化を実現する会の代表を経て、日本維新の会の共同代表に就任させていただきました。裕福な家庭でもなく母子家庭で、政治家の家系でもない私がここまで来れたのはチャンスをいただけたから。チャンスさえあれば、誰もが自分の可能性を開花することができるのです。

だからこそ、すべての人が挑戦することができる社会をつくっていきたい。誰もが持っている無限の可能性を具現化できるチャンスがあふれる国を目指していきます。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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