川合 孝典 かわい たかのり 議員
京都府京都市出身。帝人株式会社入社後、労働組合専従を経て、現UAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス労働組合連合会)にて地域活動や議長を歴任。
2007年参議院議員初当選、2016年より2期参議院議員を務める。
国民民主党幹事長代行 兼 参議院幹事長。
物流業界が直面する「2024年問題」や、現役世代の生活を直撃する「年収の壁」など、日本社会は数多くの構造的課題を抱えています。今回は、民間企業や労働組合(UAゼンセン)での現場経験を持ち、一貫して「働く人」の視点から政策立案を続けている国民民主党の川合孝典議員にお話を伺いました。
政治家を志した意外な原点から、物流危機の本質、そして100年人生時代を見据えた社会保障のあり方まで、その熱い想いに迫りました。
(取材日:2025年12月18日)
(文責:株式会社PoliPoli 大森達郎)
自ら望んだ道ではなく、周囲の人の期待に応えた政界入り
ー川合議員は民間企業、労働組合を経て政治家になられましたが、どのような経緯で政治の道へ進まれたのでしょうか。
政治家になることを意識したのは、実は自分の意思ではなく、周囲の人の期待に応えたことがきっかけでした。私のキャリアの原点は、就職と同時に、ご縁があって労働組合の組合員になっていたことでした。
当時は組合活動にもさほど関心がなかったのですが、配属から3日後に先輩に組合の事務所に連れて行っていただきました。今振り返れば、職場のリーダーをしていた先輩が、誰かにその役割を引き継ぎたかったのだと思います。笑
ーそこからどのようにして、現在の立場に至ったのですか。
私の性格として、引き受けた仕事で手抜きをするのが嫌だったんです。会社として働く傍ら、組合の仕事にも真面目に取り組みました。その積み重ねで単組の執行委員となり、36歳で現UAゼンセン東京都支部の議長に就任しました。
当時の労働組合は、「やりたい人」ではなく、労働側にとって良い影響を与えるような、周囲が「やってほしい人」を議員として選ぶようなボトムアップの文化がありました。私もまさか自分が議員になるなんてと思いましたが、国の法律と現場の実情の間に大きな「ずれ」があることを痛感していた私は、その溝を埋めるために現場を知る人間が必要だと考え、立候補を決意しました。
現場の声を着実に法律やルールに反映させることが自分の使命だと感じたのです。

ー議員生活の中で、特に印象に残っている政策は何でしょうか。
一期目に取り組んだ「65歳までの雇用確保」が真っ先に浮かびます。当時は年金の受給開始年齢が65歳へ引き上げられる過渡期でしたが、定年は60歳のままでした。これでは働く意欲があっても5年間無収入になってしまいます。希望者全員が65歳まで働ける権利を保障するため、「高年齢者雇用安定法」の改正に尽力しました。
また、昨今議論が盛んな「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策も、実は10年以上前からUAゼンセンの仲間たちと議論してきたテーマです。現場の従業員が受ける悪質なクレームは、もはや言葉によるパワハラに他なりません。
しかし、当時は「カスハラ」という概念すらなく、むしろ行政は消費者を「保護対象」としていたため、議論は困難を極めました。そこで私は、厚労省がハラスメントを「職場内(パワハラ等)」の問題に限定していた点に着目し、「小売業の売り場は、従業員にとっての『職場』である」と再定義することを提案しました。これにより、労働安全衛生法に基づき事業主に措置義務が生じます。この解釈を突破口に本格的な議論をスタートさせることができました。
長年の粘り強い訴えが実り、2015年の法改正に「5年後の見直し条項」を盛り込ませたことが、現在の実効性ある対策強化へとつながっています。
物流の「2024年問題」の本質と労働改革
ー物流業界の「2024年問題」は私たちの生活にとっても大きな問題となっています。現場の視点から、何が最大のボトルネックだとお考えですか。
物流危機の正体は、単なる労働時間の規制ではありません。長年の商習慣の中で積み上がってきた業界の「重層下請け構造」にあります。私が聞いている範囲では、5次下請けまで存在することがあります。
荷物が下請けに流れるたびに中間手数料が引かれ、実際にハンドルを握るドライバーの収益が削られていく。例えば、最初100円だったものが、下請けに行くほど95円、90円となっていく。これではドライバーは数をこなさざるを得ず、結果として長時間労働を強いられるという負の連鎖が起きています。
ー政治として、どのような解決策が必要だと考えていますか。
「契約」の概念を適正化することが急務で、多層構造を是正していかなければなりません。貨物運送事業法の見直しを通じて、基準運賃の適切な設定や書面での契約を徹底するなど、ルールを形骸化させないことが重要です。
また、これまでの「当たり前」を疑い、見直す努力も必要です。例えば「ジャスト・イン・タイム」の名の下に、極端な話、10トントラックで「ほうき1本」だけを運ぶような不採算な業務が現場の負担となってきました。こうした無駄をどう見直し、物流業界を「近代化」させていくかが、今まさに問われています。

ー物流のみならず、こうした課題に対してAIや自動運転といった最新技術への期待も高まっています。
AIや自動運転は、あくまで現場の負担を軽減し、効率化するための強力な「道具」であるべきです。たくさんの技術がある中で、私が特に注目しているのは、AIを活用した「荷物の集積・共同配送」の最適化です。
各社がバラバラに運ぶのではなく、AIによって空きスペースを減らし、効率的に集荷・配送を行う。こうした「共同化」が進むことは、収益性の向上と労働時間の削減に直結します。
ー一方で、自動化が進むことによる雇用の不安などは感じていませんか。
技術を社会に実装する際、現場でハンドルを握るドライバーの方々の「なりわい」を守る視点は不可欠です。自動化すれば一気に人手不足が解消するほど単純な話ではありません。衛星通信が途切れるトンネル内や住宅街の狭い道など、人間でなければ対応できないフェーズは依然として多く存在します。
「自動化=即解決」と考えるのではなく、最新技術をどう使いこなして生産性を高め、適正な価格転嫁につなげるか。現場を置き去りにしないルール作りこそが、政治の果たすべき役割です。

100年人生時代の「課題先取り」で未来をつくっていく
ー国民民主党のキャッチコピー「手取りを増やす」にも繋がりますが、今後の政策の優先順位を教えてください。
政治の真の役割は、目の前の対応だけでなく、将来を予測して「課題を先出し」することです。たとえば、ついに実現した「103万円の壁」を178万円に引き上げる議論も同様です。これは単なる控除額の変更ではなく、学生やパートで働く方々、そして分厚い中間層の手取りを増やし、消費を活性化させるための未来への投資なのです。
また、人生100年時代において、65歳で定年を迎えた後の「余生35年」をどう生きるかも大きな課題です。元気な間は自分の体力に合わせて働ける環境を整えることで、現役世代の過度な社会保険料負担を軽減し、本当に支援が必要な方へリソースを割く。10年後、20年後の日本を逆算し、今の延長線上ではないパラダイムシフトを起こしていきたいと考えています。
ー最後に、若者に対するメッセージなどあれば。
私はふとした縁で政治に関わることになりましたが、一歩踏み出したことで、現場の小さな声が法律を変える力になることを体感しました。政治に対して「無関心」でいられても、その影響からは「無関係」ではいられません。真面目に働く人が正当に報われ、手取りが増え、安心して将来を描ける「当たり前」の社会を取り戻すために、共に新しい日本をつくっていきましょう。













