森村 たかゆき もりむら たかゆき 議員
1973年群馬県出身。東京大学経済学部卒業。
大手商社、保険会社を経て2017年の東京都議会選挙に都民ファーストの会公認で出馬し、初当選(3期)。
2022年11月の代表選で都民ファーストの会代表に就任
2025年6月に投開票された東京都議会議員選挙で最多の議席数を獲得した都民ファーストの会。来年には設立から10年の節目を迎え、地域政党として着実に歩みを進めています。今回のインタビューでは2022年に代表となった森村議員に、政治家に転身した経緯や党の理念、今後のビジョンなどをお聞きしました。
(取材日:2025年10月21日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史 )
「都民ファーストの会」には国に先んじて政策を実現する力がある
ーまずは森村議員が政治の世界に関心を持った経緯を教えてください。
もともと子どものころから「いつかはパブリック(公)の仕事をしてみたい」という思いがありまして、大学時代にも「公務員をめざそう」と思った時期がありました。ただ、同時に思っていたのは「いきなり公務員になって仕事をするよりも、民間で経験を積んでビジネスの基礎を身に付けたほうが良い」ということです。いわゆる「プロジェクトマネジメント能力」と、競争環境の中で勝つ経験を身に付けておきたかったのです。その上で「パブリックのために役に立つ人材になりたい」という考えに至ったわけです。
また、東日本大震災の後、5年間ほど被災地でボランティア事業を行っていました。私は「チャリティーマラソン大会」を運営するチームに所属し、住民の方と交渉を重ねていたのですが、その時に感じたのが「行政や政治の立場でないとわからないこと、できないことがたくさんある」ということです。もちろん、民間の力だけでもできることはたくさんあるのですが、「行政側に行かないとできないこともある」という意識がこのとき芽生えました。
ー最終的に都議会議員選挙に出馬するきっかけは何だったのでしょうか。
直接のきっかけは2016年に小池知事が誕生したことです。当時、私の中にも社会や政治に対する諦めや怒りのような感情があり、小池さんの登場は「何かが変わるかも」という一筋の光明に見えたのです。「この変化を近くで見たい」と思っていたところ、都民ファーストの会が「希望の塾」を開いたので、ミーハーな気持ちで参加したのが最初のステップです。
2016年というと、ちょうど私の第一子が誕生し、アメリカでは大統領選挙でトランプ氏が勝利した年です。プライベートでも世界情勢でも変化があり、そのタイミングで東京都政にも変化が訪れたので、私としても一歩踏み出す契機だったと感じています。

ー出身地でないにも関わらず、直近の都議選でも高い得票率を獲得されました。その秘訣は何でしょうか。
何か特別なことをしたわけではなく、「地域の声を都政に届ける」という意識を持って地道に回り続けた、という感じです。真面目に仕事をしていたら周りが認めてくれる、という感覚に近いですね。また、選挙区の青梅が肌に合っていたのも要因のひとつだと思います。ちょうど子どもが生まれて「自然豊かな場所で子育てがしたい」と青梅に引っ越したのですが、不思議なことに「昔からここに住んでいたのでは?」と思うほど居心地が良いのです。
ー初当選から約8年が経ち、今は代表を務められていますが、この間の心境の変化などはありますか。
自分自身の価値観や軸が変わった、ということはなく、都民ファーストの会としても「都民のための政治をする」という理念は変わっていません。私としては40代で文化も風習もまったく違う世界に転職してきたようなものなので、必死で自分をアジャストさせてきた、という印象です。特に1期目は誰よりも下働きをしようと意識していました。
おかげでいろいろなスキルも身に付き、2期目では役員にも加えていただけるようになりました。同時に都民ファーストの会も成長し、できることが増えてきたので、それに合わせて私の同期メンバーたちもみんな成長を実感していると思います。大まかに例えると、以前は4年かかっていた施策を、今は半年ほどのスパンで形にできるチームになったと思います。このチーム力が、国に先んじて政策を実現する力につながっていると考えています。
改革をめざして集まった「人」が最大の財産

ー都民ファーストの会とは具体的にどのような政党なのか、歴史や理念も踏まえて教えていただけますでしょうか。
もともと小池都知事が知事就任を機に設立された地域政党で、「議会側にも改革勢力を作る必要がある」という問題意識から生まれたものです。設立が2016年なので、まだ10年弱の歴史しかないベンチャー政党だと自覚しています。所属するのは都内の地方議員のみで、国会議員はいません。だから国政の下請けのような立場で物事を考える必要がなく、私たちが主体的に政策を進めていくことができます。
その中で私たちが大切にしているのは「当事者性」です。育児や介護、障がい者の支援など、当事者でないとわからない課題が数多くあり、党員に当事者がいれば課題解決に直結する政策を作ることができます。それも1人ではなく複数の当事者がいれば、多角的な視点で議論ができます。だから、私たちは党員を集める上で「政策的に必要性の高い領域の当事者をリクルートする」という方針で組織形成をしてきました。
ーそうすると、都民ファーストの会は「人」が資産ですね。
その通りで、歴史も資金も乏しい私たちは、所属している「人」こそが経営資源であり財産なのです。その能力をフルに発揮し、どんどん成長してキャパシティを増やせるような環境の整備が私の仕事です。もともと小池さんが東京の大改革のために「この指とまれ」で築いた政党なので、この目的意識を持った「人」を結束させることが組織運営上で一番大切なことです。
ーよく出る質問だと思いますが、都民ファーストの会は、右派(保守)か、左派(リベラル)か、どちらでしょうか。
実をいうと党員の中には保守からリベラルまでさまざまな方がいらっしゃいます。各個人のポリシーには幅がありますが、党としては中道です。そうは言いつつも、社会政策では割とリベラルな政策を打ち出してきました。障がい者が社会参加しながらいきいきと暮らせる環境整備や、性的マイノリティの方たちの権利保護に向けた施策など、国が動きづらい課題を見つけてブレイクスルーするような動きに力を入れてきたと自負しています。
ー森村議員から見て、小池都知事の都政運営や政策づくりには、どのような特徴があるのでしょうか。
一番強く感じるのは「視線が常に海外を向いている」ということです。過去には与党の国会議員を24年務め、大臣も経験されています。「世界の中で日本はどうあるべきなのか」というグローバルな視座を備えている方です。その視座があるからこそ日本の現状に対する危機感を強く持っていて、そこに対して東京都が取るべきリーダーシップやイニシアチブをずっと考えてこられたのです。だから、国が二の足を踏むような政策も力強く推進する力をお持ちですね。
ニューヨークやロンドンにも負けない都市「東京」を国の成長エンジンに

ー6月に都議会議員選挙が行われましたが、その後の公約実現に向けた動きについて教えてください。
都議選では「東京大改革3.0」を掲げ、具体的に10の重点政策を提示しました。その内容は子育て支援のさらなる拡充に加え、住宅政策や企業支援、行政のデジタル化など幅広い分野に及びます。方向性としては、東京大改革2.0までで実現してきた子育て支援の成果を他の分野にも広げることをめざしています。
この重点政策の推進に向けて、新たな取り組みとして項目ごとにプロジェクトチームを作り、今回当選した10人の新人議員に各チームの座長を務めてもらっています。ベテランのサポートを受けながらそれぞれのチームで政策を推進し、新人議員の成長や活躍の場の創出も狙っています。これまでもプロジェクトチームを組んで施策を進めたことはありますが、今回のように公約や重点政策に特化して網羅的に組成するのは初めての試みです。
重要なポイントですが、私たちだけで政策を実現できるとは思っていないので、政策実行に向けた調査の段階から外部の有識者や当事者にも加わってもらって「皆さんと一緒に進める」という姿勢を大切にしています。
ー森村議員が個人的に注力したい政策や取り組みはありますか。
ひとつ挙げるとすれば、多摩地域の振興です。小池さんは知事就任後、多摩振興にとても力を入れていて、実際に多くの課題を解決してきました。多摩から選出された私としても、この改革をさらに加速させていきたいと考えています。
私の住む青梅は西多摩にあるのですが、ここは自然が豊かな一方で都心に1時間ほどで通うことができます。一方で不動産価格は都心に比べて圧倒的に安く、ベッドタウンとして栄えてきた歴史があります。この魅力をさらに生かすためにも、テレワークや二拠点生活の場として発展させることができると考えています。
ーありがとうございます。最後に読者に向けたメッセージをお願いします。
私たちは東京の地域政党ですが、日本全体の国際競争力がこの30年で失われてきたことを強く懸念しています。一方で東京は輝きを失っておらず、ニューヨークやロンドンにも負けていません。そのポテンシャルを生かし、国の成長エンジンとしての機能を東京が果たしていくことができるよう、強い経済力を備えた魅力ある都市づくりを進めていきたいと考えています。
そして、東京には志のある優秀な方が数多くいらっしゃいます。その力を社会のため、未来のために生かす場もあります。「我こそは」という方がいらっしゃいましたら、その志を形にする場である「都民ファーストの会」の門をぜひ叩いてみてください。

ー実際に都民ファーストの会の活動に参加できるプログラムなどはありますか。
はい、2027年4月に統一地方選挙が行われる予定ですが、それに向けて来年4月から政治塾を開きます。より良い政治の追求や政策実現への道のり、政治家のあるべき姿などについて私たちの思いを伝える場になりますので、ぜひチェックしてみてください。













