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政治ドットコムニュースレター骨太の方針2024【教育】

骨太の方針2024【教育】

投稿日2024.8.1
最終更新日2024.08.01

2024年6月21日、政府は『骨太の方針2024』を閣議決定しました。正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針2024〜賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」です。
骨太の方針は、総理大臣をトップとする経済財政諮問会議で決定されています。国が取り組む重要な政策課題や、その政策課題に対する方向性が示されており、年末の予算案の議論に向けての基礎となる重要な方針です。言い換えると、骨太の方針は、国が何を重要視していて、何にどのように予算をつけるのか、という大まかな方向性が示される文書です。

骨太の方針には、さまざまな政策に関する方針が書かれています。今回のニュースレターでは、『骨太の方針2024』より「教育」の政策に関する記述をピックアップして解説します。


『骨太の方針2024』における教育政策の記述

『骨太の方針2024』では教育政策について
主に47〜48ページの

第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現~「経済・財政新生計画」~ 

3.主要分野ごとの基本方針と重要課題 、(3)公教育の再生・研究活動の推進

などを中心に記載があります。
政府から発表されている原文は最下部に一覧にしています。
注目の項目を取り上げ、論点や今後の課題について見てみます。

(1)教職調整額10%引き上げなどの取り組みで、教師数の確保ができるか

教職調整額とは、残業手当の代わりに、教師の勤務時間の内外を包括的に評価し、その負担に対する補償として支給される手当です。現行の制度では、この教職調整額の率を月給の4%として支給していましたが、教職がより魅力ある職となるように処遇改善を図り、優れた人材を確保するため、この調整額を少なくとも10%以上に引き上げる必要があるとの中央教育審議会の提言がありました。

政府は財源確保と併せて、2025 年通常国会へ給特法改正案を提出するなど、教師の処遇を抜本的に改善するとしています。

<これまでの課題>

  • 2022年の調査によると、各都道府県・指定都市等の教育委員会において学校に配置することとしている教師の数(配当数)を満たしていない小中学校は全国で1,350校
  • 2021年度に精神疾患を理由に離職した教員が953人で、過去最多となり、2018年度の比べると、171人増加している

<これまでの取り組み>

  • 2021年1月、文部科学省は中央教育審議会の答で、「令和の日本型学校教育」の方針を発表
  • 2023年、文部科学省は「質の高い教師の確保特別部会を設置。当年「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策」の提言を発表。2024年5月に、「「令和の日本型学校教育」を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について」を発表。

<これからの課題>

  • 管理職ではない教師に支給される教職調整額の増額によって、非管理職と管理職の給与のバランスを考慮に入れる必要がある。管理職も職責を踏まえての本給の改善を必要とされている
  • 教員に対して命じることのできる四つの時間外業務の超勤4項目のあり方について、引き続き議論が必要である

(参考)
文部科学省「「令和の日本型学校教育」を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ) 」
文部科学省は「質の高い教師の確保特別部会」

 

(2)臨床、研究、教育の3本柱を維持するため大学病院改革プランを策定

教師の働き方だけではなく、大学病院に勤務する医師の働き方も課題となっています。

文部科学省が3月に策定した「大学病院改革ガイドライン」では、各大学病院の役割・機能を再確認し、若手医師の処遇改善や運営体制の強化を図ることとしました。また、医学生や専門医の養成を通じた教育・研究の充実、地域医療機関との連携強化、財務基盤の安定化といった四つの視点から改革を進め、地域社会と協働する環境を整備する方針です。

<これまでの課題>

  • 地域の医療提供体制における役割・機能の拡大に伴い、収入を増えているが、支出がそれ以上に増加し、経営改善を行ってもなお、増収減益傾向が長く続いている
  • 若手医師や職員の勤務時間のうち診療に従事する時間の割合が増え、本来、大学病院が担うべき教育・研究に従事する時間の割合が減少している

<これまでの取り組み>

<これからの課題>

  • 急速に少子高齢化が進み、2025年には「団塊の世代」が全て 75 歳以上となる超高齢社会を迎えることとなり、一層の医療の需要が高まると予測される
  • 現状の診療報酬制度下において、大学病院の多種多様な機能を考慮した評価が十分になされていないと「今後の医学教育の在り方に関する検討会」でも指摘されている

(参考)
文部科学省「大学病院改革ガイドラインについて」
厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会」
文部科学省「今後の医学教育の在り方に関する検討会」

 

(3)スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)の環境整備に移行

2023年度の骨太の方針では、地域と連携したコミュニティ・スクールの導入し、チーム学校の考え方を促進すべく、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置促進が記載されましたが、今年度は「いつでも相談できる環境の整備」に重点が置かれています。SCは、児童生徒本人や保護者への心理的な支援を、SSWは家庭環境などを把握し、地域の機関と連携した福祉的なアプローチから支援を行うことで、不登校やいじめ・自殺に対応する仕組みを作っています。

<これまでの課題>

  • 2023年、文部科学省の調査により小中学校における不登校児童生徒数が29万9048と、前年度比で22.1%増加(前年度は24万4940人)
  • 同調査では、学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けられていない小・中学生が4.6万人と報告がある

<これまでの取り組み>

  • 2017年、学校教育法施行規則が改正され、「スクールカウンセラーは、小学校における児童の心理に関する支援に従事する。」と、スクールソーシャルワーカーとともに初めて法令に職務が規定
  • 2023年、文部科学大臣の下、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を策定

<これからの課題>

  • SCとSSWの配置について、地域差や学校の差が大きい
  • 配置はしたものの、配置時間の不足により、予防的な活動ができないことや校内連携を行うなうことができず、効果的な活用に至っていない

(参考)
文部科学省「C O C O L O プラン」
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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