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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー国民民主党・田中健議員に聞く! 将来に希望を持てる社会を実現するために必要なこととは

国民民主党・田中健議員に聞く! 将来に希望を持てる社会を実現するために必要なこととは

投稿日2024.8.2
最終更新日2024.08.20

子どもと接する職場で働く人の性犯罪歴の確認を課す、日本版DBS法が6月に可決・成立しました。2026年度の施行が予定されており、施行後は学校、保育所、幼稚園など子どもと関わる職場において新規採用者及び現職員の性犯罪の前科確認が事業者に義務付けられます。

今回のインタビューでは、衆議院厚生労働委員会にて日本版DBS法の質疑に携わり、また子育て支援政策に詳しい国民民主党・田中健議員に、「子ども・子育て支援金」の問題点や日本版DBS法で残された課題、そして今後に向けて取り組んでいる政策分野についてお伺いしました。

(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)(取材日:2024年7月11日)

田中 健(たなか けん)議員
1977年静岡県庵原郡生まれ。青山学院大学卒業。
第一勧業銀行(現 みずほ銀行)勤務を経て大田区議会議員に(1期)。
2009年から東京都議会議員(2期)、2021年衆議院議員初当選。
新聞奨学生として新聞配達をしながら大学に通っていた。

(1)20代で「下町ロケット」の世界で活躍する銀行員から大田区議へ

ー田中議員はメガバンクの銀行員から政治家というキャリアをお持ちですが、どのような経緯で政治家を目指されたのでしょうか?

私は静岡県の公立高校から青山学院大学に進学して、新聞奨学生をしながら大学に通い、卒業後は第一勧業銀行(現、みずほ銀行)に入行しました。第一勧銀は東大出身者などが多く、配属先は本部や都心の支店を希望する人がほとんどでしたが、私は中小企業の多い大田区と東大阪の支店の配属を希望したんです。すると希望が通り、大田区の蒲田支店に配属されて、中小企業の担当として仕事を始めました。

ご存じの通り東京の大田区は日本の中小企業のメッカと言うべき地域で、当時5,000〜6,000社の中小企業がありました。またドラマにもなった「下町ロケット」の舞台です。大田区では中小企業の銀行担当者として、町工場の親父さんや地域の人たちにかわいがってもらい、大変でしたが楽しく充実した銀行員生活を送ることができました

ー銀行員として充実していた田中議員が政治家を目指したきっかけはなんだったのでしょうか。

2002年3月に竹中平蔵さんが金融担当大臣に就任したことをきっかけに、銀行は不良債権処理のスピードアップが求められました。当時は大手銀行でも不良債権処理に苦しんでいた時期です。銀行が生き残るために不良債権処理を進める必要はあったのですが、2002年3月以降は政治判断でそのスピードの加速が求められました。

私はそれまで、新しい松下電器(現、パナソニック)やソニーを作るんだ、という意気込みで中小企業への融資をしていたのですが、全く逆方向の業務が迫られました。これまで仲良くしていた親父さんに対し、明日までに返済がないと手形が落ちずに倒産しますよ、とか、返済が滞ったら融資を引き上げますよ、という話をするのが仕事になったのです。銀行は何のためにあるのだろう、と思い悩むようになりましたね。頭では不良債権処理の必要性は理解しつつも、特に政治判断で不良債権処理優先の方向になったのは、20代の私は全く納得がいきませんでした。

ー安定した職業である銀行員から政治家への転身は、大きな博打にも見えます。決断に踏み切れた理由はなんだったのでしょうか?

私が政治を目指した原点は、銀行という枠の中で自分の思うように中小企業の支援ができないなら根本の政治から変えていこう、という思いです。20代の銀行員でまだ狭い範囲内のことしか分かっていませんでしたが、思いはその一点です。大田区が私の原点ともいうべき土地であり、私はその大田区の議員となることを決意しました。20代でまだ結婚もしていなかったから踏み切れたんでしょうね。

迷いや不安は当然ありましたが、考えても仕方ない、と割り切りました。10月1日に銀行を辞めたのですが、同じ日にプロ野球・読売ジャイアンツの松井秀喜選手がメジャーリーグ行きを宣言して、その姿を自分に重ねてテンションを上げたことを覚えています。次の統一地方選挙は3月で、半年程度しか準備期間がなく、考える暇なく走り始めました。

そして統一地方選挙で大田区議に当選したのが、政治の道の始まりです。その後は、大田区議1期、東京都議会議員2期を経て、現在は衆議院議員を務めています。初回の都議選では当選に至らず、当選までの2年間は細野豪志議員の秘書を務めました。細野事務所で2年の経験を積む中で、様々な問題が具体的に把握できて、2度目の都議選は自信をもって臨みトップ当選しました。その後に細野議員の声がけもあり、私の地元でもある静岡4区から衆院選に立候補することとなり現在に至ります。

(2)子育て支援とDBS、子どもを守り育てる政策に注力

ー現在注力している政策について教えていただけないでしょうか?

子どもを守り育てる政策に注力しています。具体的には2つの分野があり、子育て支援政策とDBS法案となります。

まず子育て支援政策ですが、与党が進めている「子ども・子育て支援金」について、私を含め国民民主党は反対の立場です。子育て支援自体には賛成ですが、国民民主党としては支援金のあり方がおかしいと指摘しています。現在の子育て支援問題の背景には、子育て世代の可処分所得が少ない、という現状があります。その解決には、給料を増やす・経済を活性化することが密接に関係します。現在、ようやく給料が増え始めていますが、今回の支援金は財源が社会保険料への上乗せです。現役世代の税金と社会保険料の負担率が既に50%に近い中で、社会保険料の引き上げは実質的に子育て世代に対する増税であり、今の経済の好循環に水を差すため賛成できません。

しかも、政府は負担額について、当初は平均500円程度と言っていましたが、所得別に計算すると実際には1,000円、1,500円になることが明らかになるなど、説明が二転三転しました。給料が伸びているので「追加負担ゼロ」との説明もありました。確かに言葉の上ではそうなのかもしれませんが、本来手元に残るお金をとられるのですから、やはり負担増です。現在の社会保障制度は過去の制度のつぎはぎであり、いずれ社会保障制度のあり方自体に手を付ける必要があるでしょう。厚生労働委員会のメンバーや理事の中では、将来的な増税もやむを得ない、という意見もあります。しかし、まだやるべきこと・やれることがたくさんあります。それを行うまで増税はすべきではありません。

つぎはぎの社会保障制度のため、本当は後期高齢者医療制度のあり方や、そもそもの社会保障のあり方まで変えなければ駄目だと考えています。2026年からは「子ども国債」の発行も始まります。社会保障の負担のあり方と給付のあり方は、今後一丁目一番地で取り組むべき政策課題です。

ーDBS法案の取り組みについても教えてください。

DBS法は国民民主党が長年制定を主張してきた法律です。DBS(Disclosure and Barring Service)とは、性犯罪の犯罪歴を持つ者が子どもに関わる職業に就くことを防ぐための制度です。6月の国会で法案が成立しており、2026年度をめどに法律が施行されます。具体的な内容としては、教員・保育従事者などの子どもへの性暴力防止と、新規採用者及び現職員の性犯罪の前科確認を事業者へ義務付けること(違反の場合は公表)の2点からなります。国民民主党としては、内容はまだ不十分と考えていますが、一歩前進として賛成しました。

ーどの辺りに課題が残されているのでしょうか?

今回成立した日本版DBS法は、性犯罪の前科確認を事業者に義務付けています。ただし子どもに対する性犯罪は、個人塾や個人事業主のベビーシッターでも発生しています。その部分は今回の法律では対応できません。ただし事業者に加え個人まで対象を広げると、どのように犯罪歴がないことを示すか・秘密は守られるかなど、非常に難しい問題が多く発生します。また制度の参考となったイギリスでも、制度自体は何度も社会情勢に合わせて修正されています。日本版DBS法も、実情に合わせた改正の議論がすぐに始まるのではないでしょうか。

小児性愛は男子も女子も関係ありません。ただし小児性愛者を単純に排除すればいいという話ではなく、その存在を病気として認めて、治療を同時に行う必要があると考えています。しかし病気として認められておらず、保険も効かず医療行為が難しいというのが現実です。小児性愛はアルコール依存症やギャンブル依存症と同様の性依存と考えることもできます。その調査を厚生労働省も始めたところです。子どもに対する性犯罪者に対しては、収監中はカウンセリングなどがあるものの、出所するとそのような支援はなくなってしまいます。小児性愛者は再犯率が高いため、民間や公的な施設でカウンセリングを受けられるなど、継続的に通える場所が必要ではないでしょうか。ただし日本にはそのような施設がなく、性犯罪者にGPSを付けるという議論も出ています。しかし人権にも関わる問題なので、今回の法案にはGPSの義務付けなどは盛り込まれていません。

ー今後の改善ポイントをどのようにお考えでしょうか?

立法側がよかれと思って作った法律でも、当事者からは余計なお世話、と思われてしまうものもあります。イギリスのDBS法が複数回修正されているように、日本のDBS法も今後実際に施行されると様々な問題が出てくると思います。やはり現場の人の声を聞くことが大切で、塾などの現場の声を聞きながら修正することが重要だと考えています。

(3)子どもが将来に希望を持てる社会へ

ー他に力を入れている政策課題などがあれば教えてください。

自然を元に戻す活動に力を入れています。私の地元では、昔は大量に取れていた桜エビが近年全く取れなくなりました。調べてみると、川の流域で不法投棄が続いた結果として川が汚染されていたんです。更に調べると、上流で100年前から取水をしており、川の水流がかつてに比べ大幅に少なくなっていると分かりました。取水自体は企業の工場が戦時中の軍事協力の見返りに水利権を得て合法的に行っていたのですが、既に工場は役割を終えた状態です。川の水を約100年間産業用に使っていたのですが、今後それを元に戻して次の世代に自然をつなぐ必要があります。そういった活動を地道に行っています。

また地元でゴルフ場が倒産して、最終的に自治体がゴルフ場跡地を買ったものの、次の計画が白紙でそれを森に戻す計画もあります。子ども達や地域も巻き込んで、自分たちで木を植えて森を育てる循環が作れたらよいですね。様々な法律の規制もありますが、法的な規制は国会議員の私達が一緒に考えていこうと思っています。

ー最後に、政治家としてこれを成し遂げたい、という目標などはありますか?

子どもが将来に希望を持てる社会を実現することが目標です。残念ながら現在は、中高生の7~8割が10年後の将来が不安、と言っています。そんな社会は絶対によくなりませんし、結婚して子どもをつくろうとは思いませんよね。そしてそんな国からは優秀な人は出て行くでしょう。その不安を取り除くのが政治の役割であり、私の仕事だと考えています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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