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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー自由民主党・平沼正二郎議員に聞く!「強くてしなやかな国」の作り方

自由民主党・平沼正二郎議員に聞く!「強くてしなやかな国」の作り方

投稿日2024.7.31
最終更新日2024.07.31

今年1月に発生した能登半島地震をきっかけに、国内における防災・減災の重要性が改めて認識されました。政府は昨年、国土強靱化基本法を改正し、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき「強くてしなやかな国」を作るための取り組みが推進されています。

今回のインタビューでは、復興大臣政務官兼内閣府大臣政務官を務める自由民主党・平沼正二郎議員に国土強靭化の取り組み、また平沼議員の政治家としての原点などについてお伺いしました。

平沼正二郎インタビュー

平沼 正二郎(ひらぬま しょうじろう)衆議院議員
1979年岡山県生まれ。学習院大学卒業。
ソニーマーケティング(株)などを経て、2021年衆議院議員選挙に初当選。
父は平沼赳夫元衆議院議員、座右の銘は「義を見てせざるは勇無きなり」。

(1)政治を意識せず民間企業に就職、のちに政治を志す

ー政治家の父を持つ平沼議員ですが、小さな頃から政治家になるという目標を持っていらっしゃったのでしょうか。

子どもの時は父親の職業をあまり理解していなかったので、特に政治家になろうとは思っていませんでした。父があまり家に帰ってこなかったこともあり、政治家であることも気が付かなかったくらいです。小学校高学年になって、ようやく父が政治家であることをはっきり意識しました。それまでは「なぜ運動会で父の祝辞が読まれるのだろう」と不思議に思っていました。

ー大学卒業後は民間企業に入社されていますが、その時点でも政治家になるつもりはなかったのでしょうか。

当時、父親のあとを追うことは考えていませんでした。好きなことをしていいと言われていたので、大学ではマーケティングを学び、ものづくりに関心を持っていたため、ソニーのグループ会社に入社しました。技術だけではものが売れない時代となるなか、市場を調査し商品開発につなげる仕事などをしていました。

担当していたサービスの事業立ち上げは順調に業績を伸ばし、次の仕事を任せられるタイミングで、ソニーの同期が30歳になるのを機に起業することとなり、私もそれに加わりました。ちょうど2006年に会社法が改正し、会社設立時の資本金なしの「1円起業」が可能になったころです。ITサービスの開業が相次いでおり、私も勢いで参加しました。

ーその後、政治家を目指すこととなったきっかけはなんだったのでしょうか。

直接的なきっかけは、父が病気で倒れたことです。2017年に父が脳梗塞となり、政界を引退することを決めました。ただ、リハビリすればもう一期は望めそうなことと、また選挙にはさまざまな準備が必要なこともあり、「次の次の選挙で私が出馬する」という約束で私は地元に戻ってきました。しかし、地元に戻ってくると同時に衆議院が解散され、総選挙になってしまったんです。父も体調が万全ではなく、私が急遽出馬することになりました。

2017年衆議院選挙では準備不足もあり、残念ながら落選してしまいます。しかし、地域を回り、応援していただいている方々とお話しする中で、地方都市の衰退や農村の高齢化を目の当たりにし、危機感を覚えました。改めて、政治をしっかりとやらなくては私の故郷がなくなってしまうと思いましたし、落選したとはいえ、本当に多くの方々が期待をしていただいていることに対して、裏切ることをしたくないと思いました。その後、2021年の衆議院選挙では小選挙区で当選し、現在1期目です。

平沼正二郎インタビュー

ー昨年9月には、内閣府大臣政務官、復興大臣政務官に就任されました。初当選から今までの手応えなどを教えてください。

やっと政治の動きをつかんできたと感じます。3年目になり、政府の中でどの職員がどのような役割を果たすのか、また法案の成立までの細かな過程など、いろいろとわかってきました。

昨年には内閣府大臣政務官・復興大臣政務官を拝命しましたが、内閣府の所掌事務は非常に多く、海底から宇宙まで担当しています。もともとIT企業出身なのでデジタル政策を中心にやってきましたが、今はどの分野でもデジタル化が重要なテーマになっています。引き続き、デジタルは自分の軸となるのではないかと思います。

(2)防災・減災のための「国土強靭化」

ー平沼議員は内閣大臣政務官として、「国土強靭化」にも取り組まれています。「国土強靭化」について、現在の取り組みなどについて教えてください。

「国土強靭化」とは、一般の方にはなかなか聞き慣れない言葉ですが、インフラの強化による防災、減災を目指す取り組みのことです。現在、地球環境が変化し、災害が激甚化する一方で、高度成長期に造られたインフラの老朽化が問題となっています。国土強靭化では、橋梁や堤防などのインフラの整備をしっかりと行うことで、災害に強いまちづくりを進めます。実際に、国土強靭化によって対策を行ったダムや河川は災害の被害を抑えられているという結果が出ています。さまざまな災害から国民の生命と財産を守るため、国土強靭化を進める必要があります。

平沼正二郎インタビュー

ー昨年6月には、「国土強靱化基本法」が改正されました。これまでとどのような点が変わったのでしょうか?

「国土強靭化基本法」の改正によって、国土強靭化に関して実施する施策をまとめた中期計画が法定化されました。2020年に「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を取りまとめているのですが、これは法定の計画ではなかったんです。今後は国土強靭化において具体的に行う施策を取りまとめた計画が、法律に基づいて策定されます。

「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」では、デジタル化の推進を柱の一つに掲げています。能登半島地震を経て、「国土強靭化」におけるデジタル化の現状と課題を教えてください。

今年1月に発生した能登半島地震では、デジタル化におけるさまざま課題が浮き彫りになりました。被災者支援では、避難している方がどこに何人いるのか把握することが重要なのですが、この情報を集めることがまず大変でした。厚生労働省が持つD-MAT(Disaster Medical Assistance Team:災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チームのこと)の情報と、内閣府の防災情報システムのデータ連携ができず、全体の被害状況を把握することが難しかったのです。また、避難者情報だけではなく、物資の配分や福祉支援などでも、それぞれが別のシステムを使っており、全体を把握することが難しくなっていました。今後は、さまざまな情報を一元的に管理できるシステムが必要となります。

また、ドローンによる情報収集など新しい技術への対応も必要です。能登半島地震では、人工衛星を使ったインターネット回線であるスターリンクが活躍しました。ドローンもスターリンクもとても便利ですが、実際に使える人がいなければ意味がありません。人が動かなければならない部分も残っているので、災害が起こる前から事前に備えることが大切です。

ー国民1人1人が、防災・減災に関してできることは何でしょうか。

やはり各個々人がハザードマップを見て、危険性などを理解し避難ルートなどを確認しておくことは大切だと思います。また、地震や大雨などの災害が起こったときには災害を意識するんですが、時間が経つとどうしても忘れてしまいます。せっかく買った非常食も賞味期限が切れているとか、よくありますよね。一人一人が防災意識を持って、時には非常持ち出し袋を点検したり、非常食をローリングストックしたり、そういった対策はぜひ行っていただきたいと思います。

(3)「民間の感覚」を忘れずに政治に取り組む

ー平沼議員が今後注力したい政策について教えてください。

私が関心を持っているのは安全保障です。今年、経済安全保障対策として、セキュリティクリアランス制度を創設する新法が成立しました。セキュリティクリアランス制度は、安全保障上重要な情報として指定された情報(「重要経済安保情報」)に対するアクセスを、民間企業の従業員も含め、国が信頼性を確認した人に限定する制度です。

セキュリティクリアランス制度が必要となった理由の一つは、日本が国際的な枠組みに入れないことが課題となっているからです。これまで、諸外国でセキュリティクリアランスが社会実装されるなか、日本では個人や企業の信頼性を担保する法制度がありませんでした。安全保障に関わる情報共有は国家間を超えた信頼関係が不可欠です。政府間の情報共有や、民間での国際的な共同開発において、セキュリティクリアランスを持っている人だけが参加できる枠組みがすでにあるのですが、日本はセキュリティクリアランス制度がないためこれらに参加できなかったのです。

現在は、法律の実際の運用をどうするのかという議論を行っているところです。どういう項目をどのようにチェックするのかなど、運用に関する具体的な内容に関する議論が進んでいます。私もこの議論に注目していますし、今後も積極的に関わっていきたいと思っています。

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

私は父が政治家でしたが、昔から政治にすごく関心があったわけではなく、好きなことをやらせてもらっていました。若い方にはいろいろなことにチャレンジして、自分の楽しいこと、夢中になれることを見つけて欲しいと思います。

私は、次の世代、次の次の世代が「日本に生まれてよかったな」と言ってもらえる社会をつくりたいと思っています。民間出身の議員は珍しいので、民間の感覚を忘れず政治に取り組んでいきたいと思います。

平沼正二郎インタビュー

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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