ホットラインでは会話は暗号化される
要人同士の電話会談となると、携帯電話に直接掛けて「もしもし」とやるわけにはいきません。安全保障のため、詳細は明らかにされていませんが、盗聴などを避けるため、通常の電話回線やインターネット回線は用いられておらず、アメリカ、韓国、中国などの国とは特別なホットラインを設置。通話を暗号化する装置を活用することでセキュリティを担保していると言われています。
多忙なスケジュールの合間を縫って話をするわけですから、まずは互いの日程調整が行われます。
何時から、どのような要件で電話会談をするのか、まずは両国ですり合わせます。これは、両国の外務省の担当局同士で行われているようです。
その際に問題になるのが「時差」です。
たとえば韓国や中国など、日本と大きく変わらない(中国の場合1時間程度の時差)場合は良いのですが、アメリカやヨーロッパとなると両国間で昼夜が逆転するほどの時差が発生します。
そのため、どちらかの国が早朝や深夜に対応する、ということが起こります。
菅首相とバイデン前副大統領との場合、バイデン氏がどこにいたのかは不明ですが、仮にワシントンDCにいたと仮定した場合、時差は14時間になります。
電話い会談の行われた日本時間午前8時半は、ワシントンDCでは夕方の6時半。菅首相がバイデン氏に合わせた形で行われていることがわかります。
電話会談は互いに受話器を持って話をするわけではないと、2017年に河野太郎内閣府特命担当大臣がブログで解説しています(出典:ブログ「ごまめの歯ぎしり」より「電話会談」2017年11月19日付)
河野氏の説明によると、「スピーカーのついた会談用の電話を前に、外務大臣以下関係部局の人間がテーブルを囲んで耳を澄ましている」、現在、広く企業でも活用されている「会議用マイクスピーカー」のようなものを使っているようです。
会談には外務省の若手が務める通訳のほか、外務省の担当局長や担当課長も同席します。アメリカ大統領が会談相手の場合には外務省北米局長が同席すると言われています。
海外の首脳とやり取りをする際、双方ともに言語の壁が問題となります。
会談の際、それぞれの首脳は母国語をマイクに向かって話します。その内容を同席している通訳が翻訳し、進行していきます。
英語圏の首脳と会談を行う際、英語が堪能な総理や大臣の場合、通訳を介さず互いに英語でやり取りを行うこともあるようです。
ただ、その場合は簡単な挨拶や雑談の部分のようです(出典:河野太郎ブログ「ごまめの歯ぎしり」)
政治的に高度なやり取りを行う場合、専門性の高い語句を使った会話になることがあります。
その内容に齟齬が生じないよう、本題に入ると日本語に戻すと河野氏はブログで語っています。
国同士の信頼関係を作り出すのは人と人とのやり取り。
電話といえども、直接話しかけるのはとても重要なことと言えるでしょう。