東京都の56.4%が「テレワークを導入している」と回答
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、企業のテレワークが推進されています。
2021年4月末現在、3度目となる緊急事態宣言が発令されており、政府はもとより感染が拡大している東京都も企業に対してテレワークを求めています。
2020年から、東京都は独自に企業のテレワーク導入割合を調査しており、不定期に公開しています。
2021年1月から3月にかけて断続的に行われた「テレワーク導入率調査」(2021年4月2日公表)では、300人以上の企業89社、100〜299人の企業130社、30〜99人の企業320社にアンケートを実施しています。
その結果、300人以上の企業では84.3%、100〜299人の企業では63.1%、30〜99人の企業では45.9%が「テレワークを導入している」と回答しています。
アンケート対象企業の56.4%がテレワークを導入していると答えているものの、朝晩の通勤電車はそれほど空いているようには見えません。
果たして本当に、テレワークは浸透しているのでしょうか。
2015年と比較して2020年4月の指標は半分以下に低下
国土交通省が毎月公表している「鉄道輸送統計調査」があります。
本調査では、営業キロ、旅客及び貨物数量、旅客人キロ、貨物トンキロ、列車キロ、車両キロ及び収入などについて分析しています。
本調査の「鉄・軌道旅客輸送総括表」で、毎月の乗客数がどれだけ上下しているのかがわかります。
グラフは、コロナ禍前の2015年度の「旅客人キロ」(※輸送した旅客数にそれぞれが乗車した距離を乗じたものの累計)の月別平均を100とした場合、2020年の各月はどれほどの割合になるかを示したものです。
まだ、国内では新型コロナウイルスが対岸の火事だった2020年1月は、2015年度の平均値と比較して105.4と、むしろ多くの人々が鉄道を利用していました。
2月に入ると国内の感染者数が200人を超え、この感染力の強い未知のウイルスに対する恐怖感が広がり始めます。
2月の旅客人キロは2015年度平均と比較して90.2と10ポイント低下、感染者数が2000人に迫り、いよいよ身近に感じ始めた3月には69.7まで下がります。
第1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月〜5月に掛けて、国民が広く外出を自粛したことが数値上でも明らかになります。
「旅客人キロ」は、4月は47.4、5月は46.6と、2015年度平均と比較して半分以下の水準にまで低下しています。
特に、5月は通常であればゴールデンウィークの行楽時期。にもかかわらず、2020年でもっとも低い数値となるほど、国民が自粛を徹底したことがわかります。
この時期、東京都が公開したテレワークの実態調査では、アンケート回答企業の62.7%がテレワークを導入していると回答。
旅客人キロの減少幅を見ると、この高水準も頷けます。
自粛疲れ? 2回目の緊急事態宣言の状況
2020年6月から12月まで、旅客人キロは2015年度平均と比較して60〜75の水準で推移します。
緊急事態宣言が発出されていなくても、多くの国民が鉄道の利用を控え、できるだけ自宅での「ステイホーム」を推進していたと考えられます。
一方で、2回目の緊急事態宣言が発令された2021年1月〜2月の数値が、少々不穏な動きとなっています。
1回目の緊急事態宣言時は46〜47まで指標が下がった「旅客人キロ」でしたが、2021年1月は58.1、2月は54.4。同じ緊急事態宣言下でありながら、それぞれ10ポイント程度数値が上昇しています。
2021年4月末現在、3回目の緊急事態宣言が発出されましたが、「自粛疲れ」の声が聞かれ、緊急事態宣言下でありながらも、繁華街の人手が思うように減っていないことが報じられていますが、旅客人キロを基準に見てみても、2回目の緊急事態宣言時点ですでに1回目の宣言時よりも外出が抑えられていない傾向が見られます。
東京都が公表している2021年1月〜3月時点のテレワーク導入企業の割合は、およそ50〜60%に達しているとされています。
これは第1回目の緊急事態宣言が出された2020年4月とほぼ同水準なのですが、「旅客人キロ」で見る鉄道の利用状況を見る限り、2021年1月〜2月についてはそこまで通勤客を含めた鉄道利用者が減っているわけではなさそうです。
新型コロナウイルスの感染者数を減らすためには、市街地の人流を減らすことが第一。
できるだけ多くの企業がテレワークを導入し、出社による外出と、通勤に伴う買い物や外食の割合をどれだけ減らせるのかが、今後の感染対策にとってキモになるように思えます。