政治ドットコムトピックス江戸時代「アジアでもっとも裕福な国」だった日本のGDPはどれくらい?

江戸時代「アジアでもっとも裕福な国」だった日本のGDPはどれくらい?

投稿日2021.5.26
最終更新日2021.05.26
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

西暦1年から21世紀まで、残された歴史資料を元に各国のGDP推移を2000年以上にわたって推計する「マディソン・プロジェクト」と呼ばれる研究があります。
西欧諸国からアジア各国まで、各国の国民一人あたりの推計GDPを、1990年のドル換算で推計するという、壮大な研究です。
この「マディソン・プロジェクト」で算出された日本の一人あたりの推計GDPを、さらに深く細かく、日本の歴史や経済状況を掘り起こして分析したのが関西学院大学経済学部専任講師の高島正憲氏です。
ここでは、マディソン・プロジェクトと高島氏による研究成果を元に、日本がどのように経済成長を続けてきたのか、見てみましょう。

GDPで見る世界各国の栄枯盛衰

表は、13ヵ国の西暦1年から1874年までの経済成長について、1人あたりのGDP推計値をまとめたものです。
10世紀以前の古代の世界、西暦1〜730年までの推計値のほとんどは、旧ローマ帝国の支配地だった地中海周辺の地域に限定したデータが推計されており、1人あたりのGDPは600〜900ドルで推移しています。
西暦730年当時の日本は奈良時代。国内初の中央集権国家が誕生した時代です。
推計された一人あたりのGDPを見てみると約400ドル。中東の国々と比べると約半分の水準です。

中国は古くから統一国家が存在していましたが、信頼できる推計値が存在するのは10世紀後半以降とのこと。当時は「宋」と呼ばれる国でした。
宋の時代は中国国内で各種の生産力が大幅に向上しており、日本とも日宋貿易を展開。強い経済力を誇っていました。
その当時の中国の推計値は1006ドル。日本の推計値はありませんが、200年後となる13世紀の日本の数値が依然500ドル台であることから考えても、当時の日本の経済力は中国の約半分だったことが予想されます。

日本は長年にわたって低成長をじわじわと続けていたようですが、この状況に変化が起こったのが17世紀初頭。徳川家康が日本を統一し、江戸幕府を開いた時代です。
長年500ドル台で推移していた一人あたりの推計GDPが600ドル台に乗り、以降も成長を続けていきます。

当時の各国の状況を見てみると、上位はオランダ、ベルギー、イタリア、ポルトガル、スペイン、ドイツ、スウェーデンなどの西欧諸国。
なかでもオランダは日本の4倍以上となる2662ドルを叩き出しています。
当時のオランダはまさに「オランダ黄金時代」と呼ばれる時期で、貿易、科学、軍事、芸術とあらゆる分野で世界をリードしていた時代でした。

一方、アジア諸国は全盛期からは衰えて入るものの、中国が西欧諸国に次ぐ水準を維持しており、インドがその後追う展開を見せています。
中東地域に関しては数字がありませんが、「経済成長の日本史」の著者である高島正憲氏は「前後の時期から推測すれば、トルコは700ドル程度でインドとほぼ同水準、それ以外の地域で約600ドルと考えられる状態であった。」と述べています。

農村工業の発展が経済力に

日本がアジア諸国のなかで大きな存在感を発揮しだすのは17世紀に入ってから。
日本の一人あたりの推計GDPが、17世紀中にはインドを、18世紀にはついに中国とトルコを追い越しています。
アジアでもっとも高いGDPを叩き出すようになると、以降も着実に成長を続けていきます。
中東諸国と比べても、中東各国は中世からマイナス成長を続けており、おそらくこの時代には日本が追い越していたと考えられます。
江戸時代中期から後期にかけて、アジア・中東エリアで、日本がもっとも経済力を持つ国になったと考えられています。

15世紀ごろまで、長くアジア諸国の中で最貧国だった日本が、18世紀にはアジアでもっとも裕福な国になるまで、どのような成長をしてきたのでしょうか。
緩やかに成長を続けてきた日本ですが、それでもポイントとなる時期はあったと考えられています。


それぞれ、律令国家の変革期(奈良時代)、戦国時代(16世紀)、徳川幕府の成立(17世紀)による社会経済の安定期、工業化による農村工業の発展期(19世紀)と、異なった条件下で経済成長が起こったと、研究者の間で考えられています。
特に江戸時代後半に農村工業の発展は大きかったようで、17世紀で0.01%だったGDPの成長率が18世紀に0.24%、19世紀には0.29%にまで上昇しています。

明治時代以降、日本がアジアで大きな存在感を示すきっかけは、江戸時代後半にあったと言えるのかもしれません。

それから約140年。2018年、日本の一人あたりGDPは約40倍の39,289ドルとなっています。

■参考文献
「経済成長の日本史」高島正憲著/一般社団法人名古屋大学出版会刊
「岩波講座 日本経済の歴史 1 中世」「岩波講座 日本経済の歴史 2 近世」深尾京司、中村尚史、中林真幸編
「岩波講座 日本経済の歴史 2 近世」