特許とは、国が発明者である個人または法人に特許権を与える行政行為です。
本記事では
- 特許の概要
- 特許権を得る方法
- 特許情報、特許庁について
についてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、特許とは
特許とは、国が発明者(個人または法人)に特許権を与える行政行為です。
特許は
- 発明の保護、利用
- 発明による産業の発展
を目的としています。
2018年度の日本貿易振興機構の調べによると、
- 日本の特許出願数:31万件
- 世界の特許出願数:333万件
です。
ここでは、
- 特許法
- 特許権
についてそれぞれ解説していきましょう。
(1)特許法
特許法は『特許権』について定めている法律です。
第1条を見ると、発明の保護および利用における記載があります。
特許法 第1条
この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
引用:特許法 e-GOV
また、特許法では保護すべき『発明』について以下のように定めています。
特許法 第2条
この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
引用:特許法 e-GOV
(2)特許権
特許権とは、特許法で定められている権利です。
特許権には以下4つの特徴があります。
- 特許権は、技術的思想の創作である「発明」に与えられる
- 特許権を持つ者は、発明の生産、使用、販売などを独占できる
- 特許権を持つ者は、権利を侵害する者に対し、差し止めや損害賠償が請求できる
- 特許権の権利期間は、出願から20年とする
知的財産権に関しては以下の関連記事にてご紹介しています。
知的財産権とは?著作権などの3種類の権利をわかりやすく解説
2、なぜ特許という制度が必要なのか
特許制度が必要な理由は『役立つ発明を共有するため』です。
もし『特許』がなければ、発明は第三者に利用され、利益を横取りされてしまう恐れがあります。
そうした状況においては、発明者は発明の詳細を隠すようになるかもしれません。
このように多くの発明が隠されてしまうと、社会全体における、その発明がもたらす可能性のあった様々な利益が失われてしまうのです。
そこで、発明者に一定の権利を与える『特許』という制度を定めることで、発明者が安心して発明を公開できるようにしたのです。
『特許』は海外でもポピュラーな制度の1つです。
ただし、世界共通の特許制度はないため、外国で特許を取りたい場合は、各国での申請が必要になります。
3、特許権を得る方法
特許権は原則、誰でも獲得することができます。
特許権は
- 特許願の作成、提出
- 出願審査請求
- 登録料納付
の順で取得することができます。
具体的な流れについて見ていきましょう。
(1)特許願の作成と提出
特許願は郵送またはオンラインで出願できます。
どちらの出願にも14,000円の出願料が必要です(通常出願)。
出願すると、特許庁の方で「方式審査」が行われ、書類に不備が無いかをチェックされます。もし不備があれば、「補正命令」があるので、それに従い修正することになります。
ここでは
- 郵送
- オンライン
のそれぞれの流れをご紹介します。
※最新の情報は必ず特許庁のホームページでご確認下さい
①郵送の場合
出願様式をA4用紙に印刷し、手書きで記入します。
ダウンロード時にパソコンで入力しても構いません。
記入の際は特許庁が公開している『特許出願書類の書き方ガイド』を参考にしましょう。
書類に記入後、郵便局等で特許印紙を購入し、指定の箇所に貼り付けます。
その後、書留・簡易書留郵便・特定記録郵便のいずれかで郵送します。
特許庁の1階にある「出願受付窓口」に直接提出することもできます。
郵送先は以下の通りです。
〒100ー8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 特許庁長官 宛
宛名面(表面)余白に「特許願 在中」と記載 |
書面での提出には『電子化手数料』がかかるので注意しましょう。
払込用紙は出願日から数週間後に送付されます。
電子化手数料は1,200円+(700円×書面のページ数)です。
参考:各種申請書類一覧(紙手続の様式) 独立行政法人 工業所有権情報・研修館
特許出願書類の書き方ガイド 特許庁
1. 書類で出願する方法 特許庁
②オンライン
画像引用元:事前準備の流れ 電子出願ソフトサポートサイト
オンライン出願では、所定の認証局が発行する電子証明書を購入します。
出願にはパソコンと専用のソフトウェア(インターネット出願ソフト)が必要ですが、パソコンを持っていない方は、「知財総合支援窓口」での電子出願も可能です。
インターネット出願ソフトは『電子出願ソフトサポートサイト』から入手できます。
入手したソフトを利用し、申請書類を特許庁に送信します。
参考:出願ソフトの入手 電子出願ソフトサポートサイト
はじめて出願される方へ 電子出願ソフトサポートサイト
(2)出願審査請求
画像引用元:初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~ 特許庁
方式審査に通った後は『出願審査請求』を行います。
出願審査請求をしないと、審査が開始されないので注意しましょう。請求期限は、出願してから3年以内です。
請求から通知が来るまでの平均期間は、2019年時点で9.6か月でした。審査に時間がかかることは予め考慮しておきましょう。
出願審査請求後は、特許審査官による『実体審査』が行われます。
実体審査に落ちた出願には『拒絶理由通知』が届きます。
ただし、拒絶理由通知が届いた場合でも、意見書や手続補正書を提出することで、拒絶が解消することができます。
そして実体審査を通過した出願は、『特許査定』が行われます。
(3)登録料納付
特許審査に通過すると、特許庁から査定等本が届きます。
その後、登録料を納付することで『特許権』を取得できます(設定登録)。
特許権を維持するためには、毎年登録料を納付する必要があるので注意しましょう。
4、特許情報とは
特許情報とは『どのような発明に特許が与えられているのか』という情報です。
特許の出願時には「特許情報」に注意しなければなりません。
もし、既に似たような特許が申請されている場合には、特許権の取得は難しいからです。
出願前に『特許公報』などで、特許情報を調べることを『先行技術調査』と呼びます。
先行技術調査では、以下の項目をチェックしましょう。
- すでに類似した技術が公開されていないか
- 特許権が設定されている技術を無断で使っていないか
特許公報は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)にて、無料で閲覧できます。
参考:特許公報を検索してみましょう 特許庁
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat) 独立行政法人 工業所有権情報・研修館
5、特許庁について
特許庁は、経済産業省の中にある行政機関です。
特許庁の主な仕事は『産業財産権制度』の運用になります。
産業財産権とは知的財産権のうち
- 特許権
- 実用新案権
- 意匠権
- 商標権
の4つの権利を指します。
実用新案権とは、『物品の形状・構造・組合せについてのアイデア』に関する権利です。
意匠権(いしょうけん)とは、『物品の形状・模様・色彩、又はこれらの組み合わせによって、視覚的な美を感じられるもの』に関する権利です。洋服などのデザイン意匠権にあたり、模造品の無断制作などを防止できます。
商標権とは、『商品やサービスに付けるマークやネーミング』に関する権利です。メーカーのキャラクターやロゴが商標権にあたり、無断使用等を防ぎます。
また、海外のコピー製品・海賊版対策の強化も特許庁の仕事です。
参考:特許庁の役割 特許庁 産業財産権について 特許庁
意匠制度の概要 特許庁 商標制度の概要 特許庁
まとめ
今回は特許について解説しました。
発明は産業を大きく進歩させる一方で、無断の模倣や盗用をされてしまうと、開発者側に大きな損害を与えてしまうリスクもあります。
発明を守るためにも特許は重要な制度です。
特許情報プラットフォームには、様々な最新技術が載っているので、興味のある方はアクセスしてみてください。