政治ドットコム日本国憲法知的財産権とは?複雑な3つの権利を簡単解説

知的財産権とは?複雑な3つの権利を簡単解説

投稿日2021.3.11
最終更新日2021.03.11
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

知的財産とは、ある人が生み出した形の無い発明(アイデアや創作物)などのことです。
そして知的財産権は、そうした無形のアイデアや創作物などを保護するための権利です。

しかしこれだけでは具体的にどのような権利なのかわからないと思うので

  • 知的財産権の概要
  • 知的財産権の種類
  • 知的財産権に関する訴訟事例

などについて解説していきます。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、知的財産権とは

知的財産権
知的財産を保護するための権利を「知的財産権」と呼びます。
繰り返しになりますが、知的財産とは、ある人が生み出した形の無い発明(アイデアや創作物)などのことをいいます。

この知的財産は無体物(形が無い)ですが、形があるもののように財産として保有できる権利が知的財産権なのです。

知的財産ないし知的財産権は、さまざまな条約や条例によって定義されています。
しかし、ここでは国内法である「知的財産基本法」をベースに解説をしていきます。

知的財産権は

  • 産業財産権
  • 著作権
  • その他の権利

の3つに分類できます。
それぞれの知的財産権について解説していきます。

参考:特許庁 知的財産権について

2、産業財産権

産業財産権は、以下4つの権利の総称のことで「知財4権」や「工業所有権」とも呼ばれます。

この産業財産権は、「特許庁」で管理(所管)されています。

この産業財産権というシステムは、新しい概念(デザインや技術など)について、あえて独占する権利を与えることで、開発を効率化し、産業全体の発展を図ることが目的とされています。

産業財産権である4つの権利

  1. 特許権
  2. 実用新案権
  3. 意匠権
  4. 商標権

について見ていきましょう。

(1)特許権

特許権とは、自分の発明を保護し独占できる権利のことです。
「発明」なので、これまでになかった方法、かつ産業の発達に貢献する斬新で社会的なアイデアに限られます。

例を挙げると

  • 長期保存しても質がまったく劣化しない「雪見だいふく」
  • キャップを外さずに押印できるシャチハタの「Xスタンパー」

が特許権を取得しています。

加えて、特許権には

  • 積極的効力
  • 消極的効力

と呼ばれる2つの効力があります。

積極的効力とは、発明を事業として独占的に実施できるという意味です。
第三者に対して自らの技術を使用する権限(実施権)や、その権利を使う際の担保を設定する権限(質権)があります。

一方で消極的効力とは、第三者が許可なく自分の発明を事業として利用している場合に、その第三者に対して法的な措置が取れるという意味です。

特許権が侵害された場合、民事・刑事上の措置が認められています。
ただ、事業としてではなく、個人的な研究といった非営利目的の場合は、法的な措置を講じることはできません。

(2)実用新案権

実用新案権とは、物の形や構造などに関するアイデアを保護する権利のことです。
具体的には、「電子機器のボタンの配置」などが実用新案権の対象になります。

実用新案権には、短期間で取得できるというメリットがあります。

審査においてチェックされるのは「物品の形状、構造又は組み合わせに係るもの」という点で、出願から半年ほどで審査を通過する場合が多いようです。

いち早く自分のアイデアを保護したい場合には、実用新案権を利用すると良いかもしれません。

(3)意匠権

意匠権とは、商品のデザインを保護する権利です。
新型iPhoneの形状や色彩などが良い例でしょう。

意匠権を取得することで、類似デザインを営利目的に利用する相手に対して、法的な措置を取れるようになるので、デザインの独自性を保つことができます。

例えば、街中でほとんど同じような看板やメニューを提供している居酒屋がありますが、意匠権があれば、こうした飲食店の模倣行為に対して強い抑止力を期待することができます。

(4)商標権

商標権とは、商品の目印である商標を保護する権利です。
そもそも商標は自社の商品やサービスを他社のものと区別し、ビジネス上の信用力を確立させるのが目的です。

そうした商標本来の機能を維持するために、ロゴマークやネーミングを財産として保護できるようにする商標権という仕組みがあります。

商標権があることで、消費者は商品名と機能(味や使い勝手)が結びつきやすくなるので安心して購入することができるのです。

私たちも電子機器を買うときに、値段と性能だけでなく、有名なメーカーのロゴがついていれば、より安心して購入することができますよね。

商標権があることで、メーカーと消費者の双方にメリットが生まれるのです。

3、著作権(広義)

著作権
著作権(広義)とは、作品の創作者である著作者の作品(本や曲など)を保護する権利です。
クリエイターを守るための権利とも言えるでしょう。

もしシンガーソングライターが新曲をリリースしたら、その楽曲は著作権によって守られます。
また著作権(広義)は、「著作権(狭義)」と「著作者人格権」に分かれます。

その他「著作隣接権」という権利も含めて、著作権について更に詳しく見ていきましょう。

参考:文化庁 著作権なるほど質問箱

(1)著作権(狭義)

著作権(狭義)は、複数の権利から構成されています。

例えば

  • 上映権
  • 演奏権
  • 展示権
  • 翻訳権

などがその例になります。

ただ著作権法によると、著作権者等から許可を得ることなく作品を利用できる場合があります。
具体的には、「家庭内での使用」や「営利目的でない場合」などです。

例えば、高校の文化祭で学生バンドによる有名アーティストの楽曲演奏は、営利目的ではないので、演奏権は適用されません。

一方でショッピングモールといった商業施設でCDを流す場合、作詞家や作曲家に許可を取り、使用料を払うなどの手続きが必要になることがあります。

(2)著作者人格権

著作者人格権は、著作者の心理的な部分を保護をするための権利で、以下の4つの権利があります。

  • 公表権
  • 氏名表示権
  • 同一性保持権
  • 名誉・声望保持権

著作者の著作物への思い入れをケアする権利と言えます。
著作権(狭義)とは異なり、他人に譲渡したりすることができないのが特徴です。

例えば、「氏名表示権」を利用すれば、他の誰かが作品を公表する際に自分の名前やペンネームなども一緒に公表させることができます。

また、「同一性保持権」を使えば、他の人が著作物を利用する際に、タイトルや内容を無断で変更することを禁止することができます。

(3)著作隣接権

著作隣接権とは、著作物を世間に出す役割を担う人や法人に与えられる権利のことです。

著作権の対象が小説家であれば、著作隣接権の対象は出版社などになります。

具体的には、出版物を大量に発行するための「複製権」などが出版社には与えられます。

4、その他の権利

続いてその他の権利についても確認してきましょう。
まずは、インターネットの発展した現代において重要な「肖像権」について解説します。

(1)肖像権(人格権)

肖像権(人格権)とは、容姿に関する権利のことです。
そもそも肖像とは、ある人の顔や姿をうつした絵や写真などのことをいいます。

他人から無断で写真をとられたり、それをインターネットなどで公表されたりするのを防ぐのが肖像権の目的です。

芸能人などの有名人も肖像権に守られています。
しかし、有名人は写真そのものに価値がある場合が多いため、肖像が拡散されやすいです。

そのうえ現代では新聞や雑誌に加えて、SNSをはじめとするインターネットの普及により、個人のプライベートが広まりやすくなりました。

肖像権の問題点としては、肖像権を真っ向から担保する「肖像権法」などといった法律がない点が挙げられます。

条文がないため、どこからが肖像権侵害にあたるのかといった線引きが難しいところが課題となっています。

ただ判例では認められているため、権利としては効力があると言えます。

(2)インターネット上のドメイン名

インターネット上のドメイン名も権利のひとつです。
ドメインとは、ネット上の住所のようなものにあたります。

例えば、特許庁のURLは以下のものですが

【https://www.jpo.go.jp/】

上記のうち、【jpo.go.jo】がドメイン名に当たります。

このドメインにはさまざまなルールが定められています。
原則、初めに申請した者にそのドメインを利用する権利が付与される先願主義が適用されています。

一方で、不正な目的でドメインを使った場合、そのドメインを利用する権利を持つ者から請求があれば、取り消しまたは移転しなければなりません。

(3)商号権

商号権とは、商人が営業時に用いる名称である「商号」を保護するための権利です。

商標がロゴなどのマークであるのに対し、商号は社名などの名称のことを指します。

「◯◯株式会社」や「◯◯法律事務所」、経済産業省や厚生労働省なども商号に該当します。

5、知的財産権に関する訴訟事例 

知的財産権訴訟事例
続いて、知的財産権の訴訟事例について見ていきましょう。
ここではスポーツ用品メーカーのプーマ社にまつわるパロディ商標の判例を取りあげます。

判例は「シーサー事件」と「KUMA事件」の2つがあります。

順番に見ていきましょう。

(1)シーサー事件

「シーサー事件」は、原告(個人)が被告(特許庁)に対して、特許庁による「商標登録の取消決定」の取消を求めた訴訟です。

PUMA本家のロゴと原告側のロゴは、文字や動物の絵、配置が似ていました。

裁判所は、原告とPUMAの商品や需要者に共通点が多いことは認めましたが、「呼称や観念、外観が類似しているとは言い切れない」としました。

そして、原告(個人)が行っている販売は小規模であり、誤解を招くとは言えないという結論に至りました。

そのため商標法の「混同を生ずるおそれ」には該当しないとし、原告の主張を認め、商標登録取消決定が取り消されました。

参考:裁判所 判決言渡 商標登録取消決定取消請求事件

(2)KUMA事件

「KUMA事件」とは、原告(デザイン会社)が被告(PUMA社)に対して、特許庁による「商品登録の無効判決」の取消を求めた訴訟です。

こちらの事件も原告側のデザインとプーマ社のロゴの配置やフォントがそっくりになっていることが争点となりました。

裁判所は、デザイン会社の出願時にはすでにPUMAが世間で認知されていることに言及しつつ、下記のような類似点を指摘しました。

  • 4つの英字が横書きで大きく書かれている
  • 右上に四足動物が前足を左に突き出している
  • 動物は文字部分に向かっている
  • 絵はシルエット風に描かれている

特に強調された4つの文字とシルエット風の図形の組み合わせに着目して、被告(PUMA社)の商品を連想してしまうため、混同する恐れがあるとしました。

したがって特許庁の無効判決に誤りはないとし、原告の訴えを棄却としました。

参考:裁判所 判決言渡 審決取消請求事件

まとめ

知的財産権は形のない物を財産として保護する権利でした。

もしかしたら種類が多いため、複雑に感じるかもしれません。

「誰の(Who)何を(What)どうやって(How)」守る権利なのかを考えれば、より理解がしやすくなるかと思います。