政治ドットコム憲法知的財産権とは?複雑な3つの権利を簡単解説

知的財産権とは?複雑な3つの権利を簡単解説

投稿日2020.4.24
最終更新日2020.07.01

知的財産とは、ある人が生み出した発明(アイデアや創作物など)などのことです。
そして知的財産権はアイデアや創作物などを保護するための権利です。

しかしこれだけでは具体的にどのような権利があるのかわからないと思うので、より詳しく解説していきます。

本記事がお役に立てば幸いです。

1、知的財産権とは

知的財産権
知的財産を保護する権利を知的財産権と呼びます。
繰り返しになりますが、知的財産とは、ある人が生み出した発明(アイデアや創作物など)などの無体物のことをいいます。

この知的財産は無体物(形が無い)ですが、形のあるもののように財産として保有できる権利が知的財産権です。
知的財産ないし知的財産権は、さまざまな条約や条例によって定義されています。
しかしここでは国内法である知的財産基本法を根拠に解説をしていきます。

知的財産権は

  • 産業財産権
  • 著作権
  • その他の権利

の3つに分類できます。

2、産業財産権

産業財産権は以下、4つの権利の総称のことで「知財4権」や「工業所有権」とも呼ばれています。
これらは特許庁の権限で管理(所管)されています。

この産業財産権というシステムは、新しい概念(デザインや技術など)について、あえて独占する権利を与えることで、開発を効率化し、産業全体の発展を図ることが目的とされています。

(1)特許権

特許権とは自分の発明を保護し独占できる権利のことです。
「発明」なので、これまでになかった方法を生み出す必要があり、かつ産業の発達に貢献する斬新で社会的なアイデアに限られます。

例を挙げると、

  • 長期保存しても質がまったく劣化しない「雪見だいふく」
  • キャップを外さずに押印できるシャチハタの「Xスタンパー」

が特許を取得済みです。
加えて、特許権には「積極的効力」と「消極的効力」と呼ばれる2つの効力があります。

積極的効力とは、当然ながら発明を事業として独占的に実施できるという意味です。
そして、第三者に対して自らの技術を使用する権限(実施権)、その権限を使う際の担保(質権)を設定することができます。

一方で消極的効力とは、第三者が権限なく自分の発明を事業として行っている場合に排除する権利です。
特許権が侵害された場合、民事・刑事上の措置が認められています。

ただ、事業としてではなく、研究目的などといった非営利目的の場合は法的な効力は期待できません。

(2)実用新案権

実用新案権とは物の形や構造などのアイデアを保護する権利のことです。
仕組みを保護する制度ともいえます。

こちらもアイデアを保護するので、対象は物ではないのがポイント。
具体的には電子機器のボタンの配置などが実用新案権の対象になります。
実用新案権のメリットは短期間で取得できる点です。

審査においては「物品の形状、構造又は組み合わせに係るもの」という形式的な点しかチェックされないため、出願から半年ほどでの通過がほとんどになり、いち早く保護の対象に入れたい場合に実用新案権が活用されるケースが多いです。

(3)意匠権

意匠権とは、商品のデザインを保護する権利です。
新型iPhoneの形状や色彩などが良い例でしょう。
意匠権を取得することで、デザインの独自性が保たれます。

例えば街中で、ほとんど同じような看板やメニューを提供している居酒屋がありますが、意匠権があれば、これを法的に排除できるため強い抑止力が期待できます。

(4)商標権

商標権とは、商品の目印である商標を保護する権利です。
そもそも商標は自社の商品やサービスを他社のものと区別し、ビジネス上の信用力を確立させるのが目的です。

そのためロゴマークやネーミングを財産として保護するために商標権という仕組みがあります。
商標権があることで、消費者はブランド(商品)と品質(味や使い勝手)が結びつくので安心して購入することができるのです。

私たちもスーパーで野菜を買うときに、産地と値段だけでなく「私がつくりました」と農家の方の写真が載っていると、さらに安心しますよね。

生産者と商品の中身が分かれば、メーカーと消費者の双方にメリットが生まれます。

3、著作権(広義)

著作権
著作権とは作品の創作者である著作者の作品(本や曲など)を保護する権利です。
クリエイターを守るための仕組みとも言えるでしょう。

もしシンガーソングライターが新たな楽曲をリリースしたら、それは著作権に守られます。
なぜなら、歌って演奏するだけでなく、自分で新曲という創作を行ったからです。

著作権については更に詳しく見ておきましょう。

(1)著作権(狭義)

著作権は複数の権利から構成されています。
例えば

  • 上映権
  • 演奏権
  • 展示権
  • 翻訳権

などがその例になります。

これらは狭義の著作権と呼ばれます。
また著作権法によると、著作権者等に許諾を得ることなく作品を利用できる場合があります。

具体的には、「家庭内での使用」や「営利目的でない場合」などです。
例えば高校の文化祭で学生バンドが有名アーティストの楽曲を演奏する場合は許可が必要ありません。

営利目的でないので演奏権の効力が失われている状態ですね。
一方でショッピングモールといった商業施設でCDを流す場合、作詞家や作曲家に許可を取り使用料を払うなどの手続き義務が発生します。

(2)著作隣接権

著作隣接権とは、著作物を世に広げる役割を担う人や法人に与えられる権利のことです。
著作権の対象が小説家であれば、著作隣接権は出版社を保護するという風に権利が適用されます。

4、その他様々な権利について

続いてその他の権利についても確認してきましょう。
インターネットの発展した現代において重要な肖像権についても解説します。

(1)肖像権(人格権)

肖像権とは、容姿に関する人権のことです。
そもそも肖像とは、ある人の顔や姿をうつした絵や写真などのことをいいます。
他人から無断で写真をとられたり、それをインターネットなどで公表されたりするのを防ぐのが肖像権の目的です。

私人ないし民間人は上記のような不特定多数の人間に晒されることによる精神苦痛を受けるべきではありません。
勘違いされがちですが、芸能人などの有名人も肖像権に守られています。

ですが有名人は写真そのものに価値があるため、肖像が拡散されやすいのが問題点です。
そのうえ現代では新聞や雑誌に加えて、SNSをはじめとするインターネットの普及により、個人のプライベートが広まりやすくなりました。

もっとも懸念すべきなのは、肖像権が抽象的な概念であり、肖像権を真っ向から担保する「肖像権法」などといった法律がない点です。

ただ判例では認められているため、権利としては正当なものとなっています。
やはり条文がないため、どこからが肖像権侵害にあたるのか線引きが難しいところが課題となっています

(2)インターネット上のドメイン名

インターネット上のドメイン も権利のひとつです。
ドメイン とは、ネット上の住所のようなもの。
例えば、特許庁のURLは以下になります。

【https://www.jpo.go.jp/】

 

上記のうち、【jpo.go.jo】がドメイン名に当たります。
このドメインにはさまざまなルールが定められています。

原則、初めに申請した者にそのドメインが付与される先願主義が適用されています。
一方で、不正な目的でドメインを取得した場合、商標権を有する物の請求があれば、取り消しまたは移転しなければなりません。

(3)商号権

商号権とは、商人が営業を行うために用いる名称である商号を保護する権利です。
会社や個人事業主が自己を表示するための名前が商号です。

商標がロゴなどのマークであるのに対し、商号は名称となります。
「◯◯株式会社」や「◯◯法律事務所」といった例に加えて、経済産業省や厚生労働省なども商号に該当します。

5、知的財産権訴訟事例 

続いて、知的財産権の訴訟事例について見ていきましょう。
ここではスポーツ用品メーカーのプーマ社にまつわるパロディ商標の判例を取りあげます。

判例は「シーサー事件」と「KUMA事件」の2つがあります。
順番に確認していきます。

(1)シーサー事件

第一に「シーサー事件」は原告(個人)が被告(特許庁)に対して、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」(商標法第4条第1項第15号)に当たるとされた「商標登録の取消」の取消を求めた訴訟です。

PUMA本家のロゴと原告側のロゴは文字や動物の絵と、それらの配置が似ていました。
果たしてどのような判決が下されたのでしょうか。

まず原告とPUMAの商品や需要者の共通点が多いことを認めた上で、「呼称や観念、外観が類似しているとは言い切れない」としました。

さらに、原告(個人)が行っている販売は小規模であり、買い手の注意力を常識的に考えても誤解を招くとは言えないという結論に至りました。

そのため商標法の「混同を生ずるおそれ」には該当しないとし、原告の主張を認め、商標登録取消決定が取り消されました。
ロゴと判例はこちらのオンダ国際特許事務所さんのウェブサイトで確認できます。

(2)KUMA事件

続いて「KUMA事件」とは、原告(デザイン会社)が被告(PUMA社)に対して、商品登録無効判決の取消を求めた訴訟のこと。 

こちらの事件も原告側のデザインとプーマ社のロゴの配置やフォントがそっくりになっていました。
プーマ社との差別化を図るキャッチコピー など他の文字もありません。

これに対し裁判所は、デザイン会社の出願時にはすでにPUMAが世間で認知されていることに言及し、類似性において下記のように指摘しました。

  • 4つの英字が横書きで大きく書かれている
  • 右上に四足動物が前足を左に突き出している
  • 動物は文字部分に向かっている
  • 絵はシルエット風に描かれている

これらの点で消費者に酷似した印象を与えると結論づけました。
加えて商品の関連性も強く、商標やブランドについて豊富な知見のない一般消費者がターゲットであることも大きな共通点です。

なにより強調された4つの文字とシルエット風の図形の組み合わせに着目して、被告(PUMA社)の商品を連想してしまうため混同する恐れがあるとしました。

したがって判決に誤りはないとし、原告の訴訟を棄却としました。
こちらもロゴと判例はオンダ国際特許事務所さんのウェブサイトで確認できます。

まとめ

知的財産権は形のない物を財産として保護する権利でした。
もしかしたら種類が多いため、とても難しいと感じるかもしれません。
ですが「誰の(Who)何を(What)どうやって(How)」守るのかを考えれば整理しやすい概念になります。