
ガソリン価格の高騰が続く中、政府や野党から「ガソリン減税法案」が提案されています。
2025年3月3日に立憲民主党と国民民主党はガソリン税の暫定税率を廃止する法案を衆議院に共同提出しました。法案では「今年の4月からガソリン税の暫定税率を廃止する」としています。しかし、日本維新の会は、地方自治体への税収が大幅に減ることから、「今年からの実施は現実的ではない」として共同提出には至りませんでした。
この法案は、ガソリンにかかる税金の一部を軽減し、消費者の負担を減らそうとするものです。しかし、減税にはメリットだけでなく、デメリットもあります。この記事では、ガソリン減税法案の仕組みや背景、今後の展開についてわかりやすく解説します。
ガソリン減税法案の背景:価格高騰
ガソリン価格が高騰する理由はいくつかあります。まず、大きな要因として原油価格の上昇が挙げられます。世界の原油市場は中東の紛争やロシア・ウクライナ情勢、OPEC(石油輸出国機構)の生産調整などの影響を受けやすいです。これらの要因によって原油価格が高騰すると、日本が輸入するガソリン価格も上がります。
さらに、円安も大きな要因です。日本の原油は海外から輸入されるため、円の価値が下がると購入コストが増え、その分ガソリン価格も高くなります。
また、日本のガソリン価格には多くの税金が含まれています。この税負担があるため、原油価格が下がってもガソリン価格はあまり下がりません。特に「揮発油税」や「石油税」といった税金が価格の一部となっています。
ガソリン減税法案の対象は?本則税率と暫定税率
ガソリン税には本則税率と暫定税率の2種類があります。
- 本則税率:法律で決められた基本の税率(28.7円/L)
- 暫定税率:一時的に上乗せされた税率(25.1円/L)
もともとガソリン税は「道路特定財源」といわれる、道路整備・維持管理などに限定して使われる税でした。そして、1974年に、道路整備の財源が不足したため、「暫定税率」が導入されました。
しかし、その後道路の整備が安定してからも、2009年以降にはガソリン税が「道路特定財源」ではなくなり「一般財源」に組み込まれました。「一般財源」になることで、使途が限定されない税になったのです。そして、厳しい財政や環境面への影響に配慮し、暫定税率は継続されることになりました。
現在の議論では、本則税率には手をつけず、暫定税率の軽減を検討しています。これは、本則税率が道路整備の財源として重要視されているためです。
ガソリン減税法案に関するトリガー条項とは?
ガソリン減税法案は、ガソリン価格の一部を占める税金を軽減し、消費者の負担を減らすことを目的としています。減税に関して注目されているのが「トリガー条項」の発動です。
トリガー条項とは?
トリガー条項は、ガソリン価格が一定の基準を超えた場合に、自動的に税率を引き下げる仕組みです。具体的には、
- ガソリン価格が全国平均160円/Lを3か月以上超えた場合に発動されます。
- 暫定税率の25.1円/Lが停止され、ガソリン価格が約25円下がります。
この制度が発動されれば、ガソリン価格の急上昇を抑えられる可能性があります。しかし、2011年の東日本大震災以降、財源不足を理由にこの制度は「凍結」されたままです。国民民主党はガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除などを盛り込んだ法案を2024年通常国会に提出しました。しかし廃案となり、その後も12月6日に再度提出していました。
参考:NHK
ガソリン減税法案をめぐる野党の動き
ガソリン減税法案については、野党各党がそれぞれ異なる主張を展開しています。
立憲民主党
トリガー条項の凍結解除を強く求めています。ガソリン価格の高騰が長期化する中で、暫定税率の停止は必要な措置であるとし、政府に対し早急な対応を促しています。特に、低所得者層や地方の生活者にとって、燃料費の負担が大きくなっている点を強調しています。
国民民主党
ガソリン減税には前向きな姿勢を示しており、暫定税率の撤廃だけでなく、より幅広い燃料費支援策を提案しています。トリガー条項の解除とともに、燃料価格の変動に応じた新たな支援策の導入も検討すべきだとしています。
日本維新の会
ガソリン減税を含む大胆な税制改革を求めています。維新は、政府の燃料補助金政策が持続可能ではないと批判し、根本的な税制の見直しを提案しています。減税だけでなく、燃料価格の透明化や流通コスト削減などの包括的な改革が必要だとしています。
少数与党の現状で、野党の動きが注目されます。
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まとめ
ガソリン減税法案は、ガソリン価格の高騰を抑えるために、税金の軽減を検討するものです。暫定税率の廃止が議論の中心となっており、もし廃止されればガソリン価格が約25円/L下がる可能性があります。
しかし、減税には財源の問題があり、政府の補助金政策とのバランスも問われています。今後の議論の行方次第で、私たちの生活に大きな影響を与えることになります。
政府や国会の動きをチェックしながら、自分たちの生活にどう関わるのか、引き続き注目していきましょう。
