
2025年夏の参議院選挙に向けて、日本維新の会は立憲民主党に対して、定員が1人の1人区で野党候補者の一本化を目指す予備選挙の実施案を提案し、参加を要請しています。
以下では、日本維新の会が提案した予備選挙の目的や具体的内容、野党各党の反応について詳しく説明します。
1.予備選挙とは?概要とその目的
予備選挙とは、本選挙の前に政党が候補者を決めるために行う選挙のことです。アメリカでは大統領選挙の候補者選びで広く用いられていますが、日本ではほとんど実施されていません。予備選挙の主な目的は、本選挙で勝利する可能性が高い候補者を選び出すことにあります。また、選挙に対する関心を喚起し、有権者の参加意欲を高める役割も担っています。
一方で、日本維新の会が1月に提案した2025年夏の参議院選挙に向けた予備選挙では、特に「1人区」と呼ばれる単独選挙区における野党候補者の一本化が目的として明確に示されました。
1人区について、参議院選挙では全国に32あり、結果を左右する重要な区と位置付けられています。1人区では、2人以上が当選する複数区と異なり、議席の変動が大きくなるため、候補者調整が非常に重要になります。
2019年参議院選挙では立憲、国民民主、共産、社民の4党が候補者一本化して野党側が10議席を得た一方で、野党間の調整が不調のまま臨んだ2022年参院選では4議席にとどまりました。これらの結果から、野党候補が複数立候補すると、政権への批判票が分散し、与党に有利な結果を招く可能性があり、野党候補者の一本化が重要視されています。
参考:朝日新聞
2.予備選挙を維新が提案した背景
これまで野党間の選挙区調整には距離を置いていた日本維新の会ですが、なぜ予備選挙を提案したのでしょうか?
2024年の衆議院選挙で議席を減らしたことを受けて、代表選で「予備選」を通じた一本化を訴えた吉村洋文・大阪府知事が勝利したことが提案の要因として挙げられます。吉村氏が代表に就任した後、2025年夏の参院選に向けて予備選挙案が公表されました。
衆議院選挙で議席を減らした維新は、予備選挙を通じた野党一本化によって参議院選挙で現有議席を確保し、党勢反転へつなげる狙いがあると指摘されています。野党との協力による議席増や、維新の影響力強化といった目的が予備選挙の提案の背景にあると考えられます。
参考:日経新聞
3.予備選挙の具体的内容
実際の予備選挙では、どのようにして候補者を決定するのでしょうか?現時点では結論が出ておらず、具体的な方式について議論が続いていますが、以下のような内容が提案されています。
日本維新の会が1月に公表した予備選挙の制度案は、1人区ごとに、インターネットによる世論調査結果と、昨年の衆院選における比例選挙の結果を組み合わせるというものでした。
この制度案に対して、立憲民主党の野田佳彦代表は、「相当、改善しなければならない部分がある」と難色を示している様子が報道されています。その理由として、制度案が候補者ではなく政党に比重が置かれた方式であり、「個人の知名度や実力が本来問われるべき」であるとしています。
以上のような立憲民主党の懸念を踏まえ、日本維新の会は今後「1人区ごとに候補者名を問う世論調査」を実施する方向で調整を進めています。これにより、個別の候補者に焦点を当てて野党候補の一本化を進め、立憲民主党の協力を得る狙いです。
引用:朝日新聞
参考:読売新聞
4.予備選挙に対する野党各党の反応
1人区での野党候補者の一本化に向けて予備選挙を提案する日本維新の会に対して、野党各党の反応は様々です。
野党第1党の立憲民主党は、予備選挙実施に対して前向きな姿勢を示しています。選挙対策を担う大串代表代行は、「野党候補者の一本化が非常に重要だという思いは一緒だ」と述べた一方で、「予備選挙はすべての野党が参加して初めて意味を持つものだ」として、ほかの野党にも参加を働きかけるよう求めました。
他方で、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は、予備選挙について「非現実的だ」と述べ、「我々の目標は今の政権を倒すことではなくて政策実現することだ」と強調しました。こうした非協力的な姿勢の背景には、前回の衆議院選挙で議席を4倍の28議席に伸ばした実績があり、対与党で他の野党と連携するよりも、党の独自色の打ち出しを優先する立場があると指摘されています。このような予備選挙に対する懐疑的な立場は、れいわ新選組と社民党にも見られています。
さらに、共産党は予備選挙への参加を拒否する姿勢を明確に示しており、小池晃書記局長は1月27日の記者会見で、日本維新の会との憲法を巡る立場の違いを踏まえ、「国の根幹に関わる問題で正反対の政党が選挙協力するのは、国民的な納得が得られない」と述べ、予備選挙に参加しない意向を示しました。
参考:朝日新聞
まとめ
予備選挙は、2025年夏の参議院選挙に向けて、野党候補者の一本化を目指す重要な試みとして、日本維新の会が提案しています。特に、1人区における候補者調整が結果を左右するため、予備選挙による調整がカギを握っているといえます。しかし、予備選挙に対する野党各党の反応は一様ではなく、賛成の声もあれば懐疑的な意見も多く見られます。そのため、予備選挙が実際に実施され、野党が一つにまとまるかどうかは依然として不透明です。今後の動向によっては、野党の協力体制の築きが、与党の過半数割れや政権交代の成否に大きな影響を与える可能性があります。参議院選挙を控え、今後の展開に注目が集まっています。
