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政治ドットコムトピックス明治時代の国民に「議会」を分かりやすく伝える「国会議員双六」

明治時代の国民に「議会」を分かりやすく伝える「国会議員双六」

投稿日2020.12.2
最終更新日2020.12.02

明治時代、帝国議会が規定されるも、国民にとって身近とは言い難い状況でした。国民に議会をもっと身近に感じてもらおうとの意図でしょうか、1892年(明治25年)に開設間もない議会を題材にした「国会議員双六」が発行されています。どんなゲームだったのでしょうか?

4党に分かれて「中央議事堂(上がり)」を目指す

日本では、1889年(明治22年)2月11日に大日本帝国憲法発布され、事実上の立法機関として衆議院と貴族院の両院で構成する帝国議会が規定されました。
翌1890年(明治23年)6月10日には第1回貴族院多額納税者議員選挙が行われ、続いて同年7月1日には第1回衆議院議員総選挙が実施されました。
このような状況下、一般市民にも開設間もない「議会」を分かりやすく伝えようと、「国会議員双六」なるゲームが市販されています。
発行元は国会議員双六発行所。住所にある東京市下谷区芽町2丁目は、現在の東京都台東区池之端あたりとなります。

双六の発売日は1892年(明治25年)12月15日ですので、1893年のお正月に家族で楽しめるようにとの思いで準備したのではないかと想像できます。
お値段は1部15銭。明治30年頃の小学校教員の初任給が月に8〜9円の時代、当時の1円を現代の2万円と仮定すると、国会議員双六は現在の感覚では3000円ほどのようです。
この双六は4人用。それぞれが保守党(桜)、自由党(竹)、改進党(松)、中立党(柳)の四手に分かれて遊ぶもので、上がりは「中央議事堂」になります。
その道中には演説会、市町村会、府県会などのイベントがあるほか、国事犯による入獄、大赦による放免、党派への復帰など、子どもが遊ぶには重い(?)テーマも存分に盛り込まれています。

取扱説明書である「國會議員雙六使用方法書(こくくわいぎいんすごろくしようほうほうがき)」には、「休んでいる間に他党のものが同一方面に来たりしときは自己の選挙区に異変あり」、「壮士の為に妨害せられ元気大に沮喪」といった文言も見られ、当時の豪放磊落な空気がうかがいしれます。
この方法書を確認すると、各種ルールが細かく設定されていますが、末尾には「子どもと一緒に遊ぶときには、これらのルールを省略し、サイコロの数だけで勝敗を決めても良いでしょう(※意訳)」といった旨が書かれているところを見るに、制作者は大人が喧々諤々やりながら、ゴールを目指す本格的な政治ゲームとして企画・制作したようです。

●「國會議員雙六使用方法書」より
この双六は在来(ありきたり)のものとその趣を異にし振り出し四方に分かれ、赤色は保守党、白色は自由党、青色は改進党、ねずみ色は中立党の路線(みちすじ)とし、順次段階を経て中央議事堂へ昇りし者を上がりとす。

中段「山記号」(※山型の記号2つ)印の所に至りしときは、一回休止するものとし、その間に他党のもの同一方面に来たりしときは、自己の選挙区に異変ありしものなれば振り出しへ戻るべきものとす。

下段●印の所に至りしときは、壮士の為に妨害せられ、元気大いに沮喪せしを以て故郷にて休養をなさざるべからざるものとし、再び振り出しへ帰るべし。

「山記号」(※山型の記号2つ)印の所にあるとき、後より他党の者来たらざるときは、一回休止の後、進むと得べし。

而して漸次進み、演壇に至りしときは、各欲するところの数両様の予告を為し、賽を振りいずれにてもその予告の数を得るときは、直ちに上がりとす。
もし、各党ともに仝壇に至りしときは、各その予告を為し、先着者より順次振り試むべし。
しかれども皆適合せざるときは、再度までこれをなすことを得。
仝壇に出たる各員のうち、一名上がりしときは仝壇に在りし他党の各員は立会演説に敗けを取りしものとし、その勝ちを得たる党員に屈服し、該当路線36の所に入るべきものとす。

もっともその敗けしたる党は、一党合して十二点に相当する商品を集めだし、これを降伏の償いとし上がりへ差し出し、その立会演説に勝ちたる党これを受け、その党員に分割すべし。その分割方法は随意に定むべし。
また仝壇にて各党員共上がりに至らざるときは、皆十階づつ下るべきものとす。
自党員上がりしとき、仝党員の仝壇に在りしもの降り方また仝し。
以上、演壇における事項結了せざる間は他の場所にあるものは休止傍観すべし。

演壇に至りしもの他党の来たるを待ち合わせ、勝敗を決せんと欲するときは、予告を見合わせ休止なし居るは随意たるべし。
各党とも一、十、三十、四十、五十▲印のところにおいて、一(賽二個を用いたるときは二)を振るときは、十階(じゅうだん)(賽二つのときは二十階)を進むべし。
賽は一個または二個を用ゆるも、便宜たるべし。
但十の所にて賽一個を用い、一を振りたるときに限り進み方は九階に止む。
また人員は四人を通例とし、それ以上もしくは以内に手も為すと得べし。
この双六を始むるにあたり、第一に振り出すはいずれの党なるかを定むるには、賽を振り試み多数を得たるものを第一とし、また勝敗を続くるときは前回第一の勝者を第一とし、順次左回りを以て他党に及ぼすものとす。

また一党数人づつなるときは、その党中一二三の順序を立て、各党第一を終わり、第二に遷る例とす。
上がり間際に至り降り出したる数、余剰を生ずるときは、逆算して戻るを例とす。
戻りて演壇に至りしときは、前述の例に依る。

上がりの得点数は第一の勝者七十二点とし、第二以下八点づつを減ずるものとし、五十点未満は敗者とす。
ゆえに当初、各党四十八点宛に対する商品を定め上がりへ集出し置くべし。

また勝者演壇において予告したる数に適し上がりし者は、規定する所の商品を享受するの光栄を得べしといえども、空しく演壇を通過し振り出し数のみにて上がりしものは徳義上の制裁として商品の遠慮をなさざるべからず。
その数第一の勝者は八点、第二は四点、第三は二点とし、これに相当する商品を上がりへ残し置き、次回の競争において演壇より予告数にて上がりし第一の勝者これを受くべし。

上陳する方法のほか、各自の申し合わせを以て種々の事柄を設くるもよろしかるべく、また少年者の如き繁雑を厭ずる人々は、これらの事柄を省き、振り出し数のみにて上がるの方法により、勝敗を試むるも随意たるべし。

「国会議員双六」取扱説明書

 

「国会議員双六」発行広告

 

「国会議員双六」全体図

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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