政治ドットコムトピックス日本の買い占め狂想曲 その3〜東日本大震災編

日本の買い占め狂想曲 その3〜東日本大震災編

投稿日2020.5.21
最終更新日2020.05.21

新型コロナウイルスが猛威を奮っています。政府は緊急事態宣言を発し、不要不急の外出を避けるよう自粛を促しました。これらの影響を受けて、マスクやトイレットペーパーなどの生活必需品や、「ウイルスに効くらしい」というデマや噂によって一部の食料品が品切れとなる騒動が起こりました。
ここでは、かつて日本が直面した事故や災害によって起こった買い占め騒動について振り返ります。第3回となる今回は「東日本大震災」編です。

東日本大震災でさえ短期間で物流は回復

2011年3月11日(金)14時46分、宮城県牡鹿半島の東南東沖を震源とする東北地方太平洋沖地震が発生しました。マグニチュード9.0を記録したこの地震は、日本の観測史上最大の地震となり、東北地方を中心に、未曾有の被害をもたらしました。
地震による家屋の倒壊や火災、津波、原発事故といった被害の他にも、人心の混乱は日本各地に広がり、各種物資の買い占め騒動に発展していきます。
首都圏近郊では、地震発生以降、交通機関が麻痺し帰宅難民が多数発生しました。その結果、コンビニやスーパー、飲料の自動販売機から水や食料が一斉に消えてしまいます。まずは食料を確保しようという群集心理が働いたようです。

さらにはガソリン不足も顕在化します。
地震の被害によって、JX仙台製油所や東京湾岸の製油施設、各地油槽所の稼働がストップしてしまいます。
同時に津波によるタンクローリーの被災が原因で輸送手段も喪失。ガソリン、灯油、軽油の供給が全国的に滞っていきます。
地震前、車にガソリンを給油していなかったドライバーが各地のガソリンスタンドに殺到し、長い行列を作りました。
政府は、西日本地域の石油製品在庫を取り崩したり、製油所の稼働率を上げて増産するなど対策を講じ、3月21日ごろから次第に供給不足は解消していきます。

乾電池、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、紙おむつ、生理用品といった品々の買い占めも問題となりました。
震災当時、電力の供給が不安定になった地域や、停電の不安を感じた市民が懐中電灯を購入。その懐中電灯を使うために乾電池(特に単1・単2)が買い占められました。また、当時は携帯電話も普及していたため、その充電用にも使われたようです。

首都圏を中心に、ティッシュペーパーやトイレットペーパーも品切れを起こしました。
東日本大震災では、製紙工場も壊滅的な打撃を受けました。そのひとつが日本製紙石巻工場です。
宮城県石巻市にある日本製紙石巻工場は、年間で約100万トンの紙を生産する世界屈指の規模を誇る製紙工場です。日本製紙はこの国の出版用紙の約4割を担っている会社であり、石巻工場はまさに出版業界にとっての要といえる存在でした。この石巻工場が被災したのです。

当時、出版業界では紙不足が叫ばれ、インク工場の被災と合わせて「今後、雑誌や書籍の刊行は難しいかもしれない」と悲観する声が多く挙がりました。
出版業界の不安に牽引されてという理由ではありませんが、広がった社会不安や今後に対する不安が呼び水となり、生活必需品であるティッシュペーパーやトイレットペーパーの買い占めへとつながったと考えられます。

クロス・マーケティング、リサーチ・アンド・ディベロプメント社が、震災後に買いだめを行った消費者に行ったアンケート調査があります。
「買いだめ行動のきっかけ」となったのはなにか、という質問に対してもっとも多かった回答は「実際に店頭で商品が足りなくなっていたので」(61.5%)。
災害や事故が起こった場合、報道による情報よりも、「実際に棚に商品がない」という目で見た事実が不安をあおり、消費者を買いだめに走らせていることが分かります。
東日本大震災では、約2週間程度で物流も被災地以外はほぼ回復し、食料品も生活必需品も店頭で買えるようになっています。
今後も、東日本大震災に匹敵する災害は起こるでしょう。
その際には、ガラ空きの棚に影響を受けて不安を覚え、不必要に物資を買い漁るのではなく、まずは一呼吸おいて、これは本当に必要なものなのかを考えた上で行動するようにしたいところです。