新型コロナが日本人の生活に影響を及ぼし始める
朝日新聞が第1面でどのようなニュースを報じてきたのか。全見出し(小見出し含む)を洗い出して2020年を振り返るシリーズ「2月版」をお届けします。
前月の1月中、もっとも朝日新聞の一面見出しで使われた語句は「米(24回)」、次に多かったのが「中国(21回)」でした。
わずか1ヵ月でこの状況は一変し、2月中に見出しに使われた語句トップ3は「肺炎(39回)」「新型(37回)」「感染(32回)」となります。
言わずもがな、いずれも新型コロナウイルスに関連する語句。それまで対岸の火事だった感染症が、日本人にとっても最重要なテーマとなったことを示しています。
1月30日の未明、WHOは中国国内で蔓延している新型肺炎について「緊急事態宣言」を発令します。これは、2019年7月18日に出されたエボラ出血熱以来、6例目となります(2月1日報道)。
2月上旬は、横浜港沖に停泊していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」に注目が集まりました。
同船は1月20日に横浜港を出港後、鹿児島、香港、ベトナムや台湾を経て2月4日に横浜港へと帰港する旅程でした。
ところが、1月25日に香港で下船した乗客から新型コロナウイルスの陽性反応が検出されると事態は急変、乗員・乗客合わせて約3,700人が「濃厚接触者」とみなされ、洋上で14日間待機することになります。
2月3日夜から横浜港で約3700人の検疫が始まりました。
2月6日の朝日新聞一面では「クルーズ船 感染10人 船内3700人 14日間待機」と報じています。
密閉された空間内で感染者は激増し、「クルーズ船 新型肺炎さらに10人」(2月6日夕刊)、「クルーズ船 感染者61人に」(2月8日朝刊)、「クルーズ船 感染135人 に」(2月11日朝刊)と報道も過熱していきました。
乗船していた約3700人は、2月20日から下船を開始し、船長を含めて全員が3月1日までに下船しました。3月1日時点で、乗客・乗員の706人が感染、4人が死亡しています。
2月20日付けの朝日新聞一面では「クルーズ客 443人下船 白い目で見られるのでは不安」と、社会からの差別を心配する声を取り上げています。
感染者への誹謗中傷を予見した記事を2月14日に朝日新聞が一面で取り上げています。
「中傷、過剰反応…11年前に学ぶ、新型肺炎の向き合い方」と見出しがついたこの記事では、2009年の新型インフルエンザ大流行の際、感染者の出た学校に誹謗中傷が相次いだこと、感染した生徒の制服のクリーニングも断られたことなどが報じられています。
報道各社の啓蒙も虚しく、のちに日本各地で感染者や医療関係者などに対する誹謗中傷が問題となってしまいます。
また、2月14日には、新型コロナウイルスで国内初の死者が出たことが報じられました。
新型コロナウイルスが経済に顕著な影響を与え始めます。
2月10日、 日産自動車は10日、子会社の日産自動車九州の工場で生産ラインを停止すると発表します。新型コロナウイルスの拡大で中国からの部品の調達が遅れ、生産に必要な部品を調達しにくくなったことが原因でした。
新型コロナの影響で日本の自動車メーカーの工場が稼働を停止するのはこれが初めて。以後、スバル、ホンダ、三菱自動車等、各社一時停止に追い込まれてしまいます。
2月27日には、全国すべての小中高校と特別支援学校について、3月2日から春休みに入るまでの臨時休校が要請されています。
■■2020年2月の主な朝日新聞の一面見出し
2月5日 「クルーズ船 集団感染 新型肺炎 10人」
2月7日 「分断の米国、弾劾無罪 トランプ氏の疑惑、大統領選の争点」
2月11日 「日産、九州工場を一時停止へ 新型肺炎で部品調達が停滞」
2月14日 「としまえん 8月末から段階的閉園」
2月18日 「コアラ受難、安住の地でも カンガルー島、数万匹犠牲か 豪の森林火災」
2月27日 「イベント 2週間 自粛要請 新型肺炎巡り 首相」
2月28日 「ディズニー 来月15日まで休園」