検察庁法改正案問題に関する記事が急増
朝日新聞が第1面でどのようなニュースを報じてきたのか。全見出し(小見出し含む)を洗い出して2020年を振り返るシリーズ「5月版」をお届けします。
5月は緊急事態宣言による外出自粛が功を奏したのか、新型コロナウイルスの感染者数が急減した時期に当たります。
東京都の感染者数が1週間で1000人を越えた4月第1週(1049人)、第1波で最多となった第2週(1103人)から1ヵ月、5月第3週には都内の感染者数は41人にまで減少します。
感染者数の減少に伴って、緊急事態宣言の解除が検討されるようになります。
朝日新聞の一面を飾った記事からもその傾向は伺われ、見出しに使われた語句を分析したランキングのトップは「解除」(24回)、その他にも「緊急」(17回)、「事態」(16回)、「緩和」(13回)、「再開」(10回)といった文字が上位にランクインしています。
とはいえ、5月上旬はいまだ先の見通しは立っておらず、「当初の予定だった5月7日に緊急事態を解除するのは困難」として、1ヵ月程度延長する方向で調整している旨が報道され(5月7日朝刊)、最終的に5月25日まで延長されました。
5月半ばには感染者数が減少したとはいえ、新型コロナウイルスへの関心の高さは変わらず、5月に朝日新聞の一面に掲載された記事の59.8%が、新型コロナ関連の内容となっています(113本)。
それまで見られなかった記事内容で上位に食い込んだのが「検察庁法改正案問題」です。
①検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる
②役職延長=63歳以降、「次長検事」「検事長」は検事に戻り、65歳まで働く
※しかし、内閣が認めた場合「次長検事」「検事長」は3年間任期を延長できる特例あり
これらが議論されていたのですが、上記のうち主に②が問題とされ、小泉今日子氏ら俳優・女優や芸人、歌手、アイドルなどがSNSで反対運動を展開。
「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグの付いたツイートは、数日間で約500万回も投稿されました。
Twitterを活用した政治運動は、同じ5月に「種苗法改正反対」が話題となりました。
さらに、この運動成功を受けて、7月の東京都知事選では候補者の一人だった宇都宮健児氏を応援する立憲民主党の枝野幸男代表らが、栃木県宇都宮市の名物・餃子の話題に触れ、「#宇都宮」のハッシュタグでツイートし運動化しようとしましたが、こちらは多くの批判を集める結果となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響は大きく、各界から減収予想が出されるようになりました。
「トヨタ 営業益8割減予想 21年3月期」(5月13日朝刊)
「1〜3月 利益8割減 上場企業」(5月14日朝刊)
「レナウン 民事再生手続き コロナ影響 国内上場企業初」(5月16日朝刊)
と、5月半ばに立て続けに報道されています。
中国の香港への圧力が強まる
世界に目を向けると、香港の民主化運動に対して、中国が本格的に介入していく様子が伝えられました。
5月22日、香港での反政府活動を取り締まるためと称して国家安全機関を設立するとのニュースが報じられました。
前年から続いていた香港でのデモ活動を封じることが狙いと見られ、「一国二制度」の危機が叫ばれるようになります。
5月25日には、香港で起こったデモに対して、催涙弾を発射。混迷の度合いを深めていきます。
この様子を見たアメリカは、5月24日に「中国が国家安全法制の適用を決めた場合、何らかの制裁措置に踏み切る可能性がある」と会見。米中の対立がますます激化していきます。
5月27日には香港で、中国国歌への侮辱行為を禁止する「国歌条例案」の審議に反対する抗議活動も始まり、世界の注目を集めますが、5月28日に中国の全国人民代表大会は、「国家安全法制」の導入に関する決定を採択しています。
■■2020年5月の主な朝日新聞の一面見出し
5月1日 「緊急事態 全国で延長へ」
5月5日 「緊急事態 31日まで決定 全国対象」
5月12日 「検察庁法改正案 抗議ツイート急拡大」
5月14日 「緊急事態 39県解除へ」
5月19日 「検察庁法改正 今国会断念」
5月21日 「黒川検事長が辞意 賭けマージャン認める」
5月25日 「緊急事態 きょう全域解除へ」
5月29日 「香港の反体制活動規制へ 中国国家安全法制を採択」
5月31日 「トランプ氏 WHO脱退 中国に対抗」