窃盗が大幅に減少
2021年1月〜3月の、全国の刑法犯総数(認知件数)は13万2501件となり、前年2020年の同時期と比較して、約3万件減少しています(18.1%減)。
特に減少幅が大きいのは、東京都(22.4%が減)と東北地方(21.8%減)で、ともに20%以上の下げ幅を記録しています。
その他の地域も、北海道以外は12〜19%減少しており、全国的に大きく犯罪の認知件数が下がったのは間違いなさそうです。
大きく数を減らしているのは、「窃盗犯」です。侵入盗、乗り物盗ともに約30%減少しました。
いずれもコロナ禍による自粛ムードが広く浸透した結果、平日はテレワークで、休日も不要不急の外出は避けたため、昨年と比較して自宅にいることが多く、窃盗犯もうかつに自宅に押し入ることも、車庫に停めてある車などに手を出すこともはばかられたからではないかと予想されます。
同様に、強盗も前年の442件から289件と34.6%減少しました。
家に人がいることが多くなった結果、そもそも家に盗みに入る発想が減った、それに伴って窃盗犯と家人が室内で鉢合わせになる機会も減った、その帰結で強盗も減ったという相関があるのかもしれません。
ストレスから一部の犯罪が増加?
一方で、一部昨年よりも増加している犯罪があります。
ひとつは「脅迫」。前年の806件から867件と約60件、割合にして7.6%増加しています。
新型コロナウイルスの感染が拡大するに伴って、国内では「自粛警察」「他県ナンバー狩り」も問題視されました。
夜間に営業している飲食店にクレームの範疇を超えた嫌がらせがされたり、他県のナンバーを付けた車に対して、パンクさせたり暴言を吐いたりといった行動です。
データ上、細かい内訳が公開されていないため、断言することは難しいのですが、これらの度を越した行動が「脅迫」として認知され、件数が増加している可能性があるのかもしれません。
「公然わいせつ」も前年比約80件(18.5%)増と、急増しています。
終わりの見えないコロナ禍、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などで、経済的にも精神的にもストレスが貯まる一方。
そんななか、一部の特殊な性癖を持つ人々が、一線を越えて街に繰り出した結果増加した、そんな相関が想像されます。
「公務執行妨害」も若干ではありますが増加しました。
自粛生活が続く中で溜まったストレスを、ぶつけてしまった結果なのかもしれません。
増加=治安の悪化ではないかもしれない
減少率の高い県を見てみると、トップの秋田県から5位の香川県まで、前年と比較して25%以上も犯罪の認知件数が減少していることがわかります。
いずれも新型コロナウイルスの感染者数が大きく増加した土地ではありませんが、全国的に広がる自粛ムードが影響し、犯罪抑止につながったのかもしれません。
一方で、富山県と大分県は前年同時期と比較して犯罪の認知件数が増加しています。
とはいえ、「犯罪が増えた危険地域」と決めつけるのは早計かもしれません。
富山県で昨年と比較して激増したのは「窃盗犯」。2020年1〜3月期に74件だったものが、2021年同時期には277件と3倍以上も増えました。
一方で、277件のうち276件はすでに検挙済み。検挙率は99.6%にも及んでいます。
2020年同時期の検挙率は60.8%(74件中45件検挙)ですので、2021年1〜3月にかけて、富山県では重点的に犯罪の撲滅に向けてキャンペーンを行った可能性が高いと考えられます。
全国的に犯罪統計を見てみると、認知件数が大幅に減少していることがわかります。
長く続くコロナ禍は、生活に大きな影響を及ぼしていますが、この犯罪が減っているという点においては、不幸中の幸いなのかもしれません。