全国民が1.44種の宗教に入信している
文化庁が毎年取りまとめている「宗教統計調査」の最新データが公表されました。宗教統計調査は、毎年の宗教法人数や信者の人数を調査したもので、昭和24年から実施されています。
最新の令和2年度調査では、令和元年(2019年)12月31日現在の、国内の宗教法人数や信者数などが公表されました。
今回の発表によると、日本全国の宗教団体の数は21万5090。合計の信者数は1億8310万人となりました。
日本の人口はおよそ1億2千万人ですので、単純計算すると「すべての日本人が1.44種類のなんらかの宗教の信者となっている」ことになりますが、当然のことながら「そんなわけあるかい!」という数字になっています。
毎年、この調査では人口よりも信者数のほうが多い「逆転現象」が起こります。その理由は、信者数は団体任せの自己申告制であるためと言われています。
宗教に行政が関与するのはかなりデリケートで、宗教団体への行政の関与をできるだけ減らそうとした結果とされています。
歯医者やコンビニよりも、寺社仏閣のほうが多い
日本は歴史の長い国だけあって、非常に多くの伝統的な神社や寺院が生活に密着して残されています。
全国の神社の数は80934社、寺院の数は76907院が登録されており、それぞれ一般的に「たくさんある」とされている、歯医者やコンビニよりも多いのが現状です。
都道府県別に見てみると、神社の数がもっとも多いのは新潟県で4689社もの神社が県内に残っています。
では、なぜ新潟県に神社が多いのでしょうか。
あまり知られてはいませんが、明治時代まで国内でもっとも人口が多かったのが新潟県でした(東京都は4位)。
当時、1つの村に1つの神社を作る風習から、新潟県内で多くの神社が建てられた結果、現在も多くの神社が残っているとのことです。
寺院の数では静岡県が2619院でトップとなりました。
静岡県は16世紀の戦国時代は、今川家のお膝元でした。今川義元を輩出した東海の名家です。
今川義元といえば、1560年に桶狭間の戦いで織田信長にまさかの敗北を喫した戦国大名。彼は曹洞宗と臨済宗を広く布教していました。
そのため、現在でも静岡県内では禅宗のお寺が多く残されています。
3つ4つは当たり前? 宗教をいくつ掛け持ちしているか
信者数のトップ5を見てみましょう。
1位の東京都の信者数は4400万人と圧倒的な存在感を示しています。
東京都の人口はおよそ1300万人ですので、ツッコミどころは多々あるのですが、グッとこらえて2位以下を見てみると、大阪府、兵庫県、埼玉県、長野県と続いていきます。
宗教団体が自己申告した信者数をそのまま鵜呑みに信じたとしたら、県民1人がいくつの宗教を掛け持ちしているのか、「信者数÷人口」で見てみましょう。
国内でもっとも信仰心が高く(?)、他県よりも多くの宗教を掛け持ちしているのが長野県で、3.51種類の宗教をひとりで信仰している計算となりました。
人口1300万人に対して4400万人の信者がいる東京都では、全都民が3.28種類の宗教を信仰していることになっています。
一方で、神奈川県などの「掛け持ち数が少ない県」では1.00を下回る結果となり、都道府県ごとに大きな差が生まれていることがわかります。
信仰という、大変センシティブな分野だけあって、なかなか正確な調査や統計を作るのは難しいことが、本調査からは伝わってきます。