歴代首相出身数は山口県が圧倒
47都道府県のうち、総理大臣を輩出しているのは全28都道府県。一方で、これまで一度も生まれていないのは19県となっています。
明治18年、伊藤博文氏が初代総理大臣となって以降、大正時代初期まで露骨な「薩長土肥」ブランド、なかでも明治時代は「薩長」推しが続きます。
特に第7代の総理である伊藤博文氏(第3次)まで、総理大臣は山口県(長州藩)と鹿児島県(薩摩藩)出身者が交互に担当します。
この風潮に変化が訪れるのは大正7年、岩手県出身の原敬氏が第19代総理大臣に就任してからです。以降、東京都、愛知県、島根県、岡山県、そして「薩長土肥」で唯一首相を出していなかった高知県(濱口雄幸氏)など、全国各地から総理大臣が誕生します。
ここで時代別に首相を輩出した都道府県の数を見てみましょう。
明治時代は4府県のみだったものが、大正時代には9都県へ。昭和(戦前)には10都府県、昭和(戦後)には14都府県と、徐々に出身地もバラエティに富んでいきます。平成も14都道県と、昭和(戦後)と同数の地域から総理大臣が誕生しています。
約1/3の日数を山口県出身総理が担当
現在の安倍晋三氏は98代目の内閣総理大臣ですが、実際に首相を経験した人の数は安倍氏を含めて62人となります(令和2年1月末現在)。ひとりで複数次にわたって内閣を組閣した総理がいるからです。
この全62人の首相経験者の出身地を見てみると、ダントツで旧長州藩である山口県の出身者が多いことがわかります。
都道府県別に歴代の首相輩出回数を、総理経験者である62人のユニーク数で見てみると、山口県が8人でトップ。東京都、岩手県、群馬県がそれぞれ4人と続きます。
続いて、全98代の歴代首相経験者の出身地を、都道府県別に見てみると、山口県が20人、東京都が9人、群馬県と高知県が6人と、ユニーク数と比べてさらに山口県が圧倒的なシェアを占めることがわかります。
ユニーク数では全体に12.9%だった山口県勢が、総数では20.4%と約8ポイント増加しており、山口県出身総理は、ひとりで複数次、内閣を担当しているケースが多く、安定した長期政権を運営できている傾向にある、と言い換えられるかもしれません。
出身都道府県別に、首相の在任期間を見てみると、その傾向はより顕著に現れます。
明治18年12月22日、初代内閣総理大臣に伊藤博文氏が就任してから、第98代の安倍晋三氏が桂太郎氏の在任期間を追い抜いた令和元年11月20日まで、その日数は約48,000日。そのうちの31.44%にあたる、約15,000日を山口県出身総理が占めています。
これは、山口県出身の安倍晋三氏、桂太郎氏、佐藤榮作氏、伊藤博文氏ら「長期政権4人衆」による安定政権が、大きく数字に寄与しています。
続く群馬県は7.19%。政権運営した約3,500日のうち、中曽根康弘氏が約1,800日を占めており、半分以上が中曽根氏の任期であることがわかります。
ユニーク数では首相を輩出した都道府県、第2位であるはずの東京都は、首相の政権運営日数では第3位となる7.09%。これまで計9代、全5名の総理大臣を輩出していますが、政権を担当できた日数は山口県の約1/5にとどまっています。
薩長土肥の「土」にあたる、高知県も奮闘しています。都道府県別に見た歴代首相の輩出回数では、ユニーク数でも総数でも、上位10位以内にはランクインしなかったにもかかわらず、在任期間では第4位の6.71%。これは高知県出身者が政権運営した約3,200日の大半を占めた、吉田茂氏(約2,600日)の活躍によるものです。
以下、原敬氏や鈴木善幸氏の出身地である岩手県、池田勇人氏、宮澤喜一氏の選挙区である広島県、小泉純一郎氏のお膝元である神奈川県、明治時代には一世を風靡した鹿児島県と続きます。