地方議員、政治家秘書、国家公務員が王道の道筋
衆議院議員に当選する「直前」に、議員の先生方はどのような活動をしていたのか。
やはりもっとも多かったのは、「地方議員」で31.7%。約3人に1人の衆議院議員の先生方が、市会議員や県議会議員といった活動を経てから衆議院議員選挙に立候補し、当選されていることが分かります。
続いて「政治家秘書」。
こちらも84人、18.1%を記録しています。
この、直前に政治家秘書を経てから国政に挑戦した衆議院議員の先生方の割合を、参議院議員の先生方と比較すると、参議院議員が10.5%で衆議院議員が18.1%ということで、約1.8倍にも増加しています。
これは、後ほど詳述しますが、親族に政治家がいる議員の割合が、参議院と比較して衆議院のほうが多いため、先代や親族の地盤や人脈を継承することを前提に、会社勤めなどを辞めて政治家秘書として経験を積み、衆議院議員選挙に挑戦している方々が多いためと予想されます。
3位の「国家公務員」は11.4%と、参議院議員の先生方と比較してもそれほど大きな違いはありません(参議院議員:10.5%)。ただし、参議院では「国家公務員」は2位でしたが、衆議院では3位に後退しています。
衆参で大きく様相が異なるのは、「タレント・アナウンサー等」や「労働組合役員」の割合です。
「タレント・アナウンサー等」では、参議院では25人・10.1%を記録していますが、衆議院では11人・2.4%。
「労働組合役員」では、参議院では19人・7.7%ですが、衆議院では2人・0.4%となり、大きく割合を減らしています。
衆議院議員の前職を見てみると、「地方議員」「政治家秘書」「国家公務員」への集中が参議院と比較して高く、他の前職の割合が参議院と比較すると減少している傾向にあると言えそうです。
親族に政治家がいる先生は政治家秘書を経験
衆議院の先生方の親族に政治家がいるかどうか、その割合について見てみましょう。
この「親族」は、一親等などの直近から曽祖父、大叔父など一般的には「遠い」親族に関しても、調べられる限り調べて含めています。
衆議院議員の先生方の親族に政治家がいる割合は124人・26.7%。参議院議員の先生方では39人・15.9%ですので、約11ポイント衆議院議員の先生方のほうが高いようです。
先述したとおり、衆議院議員の先生方の前職では「政治家秘書」が第2位にランクインしています。
これは、参議院議員の先生方と比較して、一親等など近い親族の政治家が多く、先代の引退を前提にした地盤と人脈の承継のために、まずは秘書として顔を広く売ったり、政治の世界の肌感を経験させたりといったことが行われていると予想されます。
親族に政治家がいて、直前に政治家秘書を経験してから衆議院議員選挙に挑戦した議員の先生は、124人中53人・42.7%と大きな割合を占めています。
同じく、親族に政治家がいて、直前では「地方議員」を経験してから衆議院議員選挙に挑戦した先生方は31人・25%となります。
4人に1人とそれなりの高割合ではありますが、衆参どちらと比較しても、直前に「地方議員」を経験した先生方の割合よりも低いところを見ると、親族に政治家がいる衆議院の先生方は、地方議員を経るのではなく政治家秘書を経験してから選挙に打って出る先生方のほうが多いことが分かります。
その他、親族に政治家がいる衆議院議員の前職を見てみると、先述の政治家秘書と地方議員で67.7%。残りは約33%です。多いのは、「会社員」「国家公務員」「経営者」の順となっています。
衆議院議員を目指すならまずは「地方議員」を
では、親族に政治家がいない衆議院議員の前職の割合はどのようになっているのでしょうか。
やはり「地方議員」が圧倒的な存在感で116人・34.1%とトップ。約3人に1人が地方議員として成果を挙げ、国政に挑戦しています。
続いて「国家公務員」の46人・13.5%。官僚として経験・実績を積み、専門的な知見を積み重ねて衆議院議員選挙に打って出ています。
3位は「政治家秘書」と「会社員」。親族に政治家がいなくても、体ひとつで秘書となり、顔と名前を売りつつ経験を積んで衆議院議員選挙にチャレンジする、という流れもひとつのスタンダードのようです。
また、外資系コンサルティング企業などのいわゆる「超一流企業」で活躍後、なんらかの課題や問題を解決するために国政に挑戦するという先生方も約10人に1人いらっしゃるようです。
衆議院議員の先生方の場合、この上位4つの前職が圧倒的で(合わせて65.9%)、参議院議員の先生方と比較すると多様性という面では偏りが見られる傾向にあるようです。
では、親族に政治家がおらず、どうしても衆議院議員として活躍したいと考えたとき、どのようなキャリアを積むとよいのでしょうか。
1.地方議員として活躍し、段階を経て国政に挑む
2.政治家秘書として活動をする
3.国家公務員、一流企業の会社員など、社会的に高いステータスを得てからチャレンジする
現在の統計から見る限り、これらの経験が生きているようです。