出産費用が保険適用になるかどうかは、日本で話題になっている問題の一つです。
2023年4月時点で岸田文雄総理大臣は、出産費用の保険適用について「令和8年度(2026年度)をめどに自己負担が生じない制度を検討する」と表明しました。
また、2023年4月からは出産育児一時金の支給額が上がっています。
今回の記事では以下について解説します。
- 出産時にかかる費用・保険は適用される?
- 妊娠・出産時に利用できる制度
- 出産費用の保険適用はいつから?
本記事がお役に立てば幸いです。
1、出産時にかかる費用・保険は適用される?
引用:厚生労働省
令和3年(2021年)時点で、出産にかかる平均費用は462,902円です。
ただし、出産方法や出産する病院によって金額が変わってきます。
(1)出産方法ごとの費用
①【保険適用外】正常分娩
自然分娩とは、特別な処置を行わずに陣痛を待ち、産道から赤ちゃんを出産する方法です。
自然分娩の出産平均費用は473,315円で、健康保険・民間の医療保険のどちらも適用されず、すべて自費となります。出産・妊娠は病気やケガではないため、保険制度の対象外とみなされるためです。
また、麻酔(局所麻酔)を使って陣痛などの痛みを軽減しながら出産できる無痛分娩も、保険対象外となります。
②【保険適用】異常分娩
異常分娩とは、分娩で異常が発生し、鉗子娩出術、吸引娩出術、帝王切開術などの処置が行なわれることです。異常分娩は、医療行為のため健康保険が適用されます。
現在は女性の出産年齢の上昇に伴い、お腹をメスで切り、膣を経由せずに赤ちゃんを取り出す帝王切開分娩も増えています。
帝王切開分娩の場合、以下のような金額になります。
- 緊急帝王切開:22万2,000円(保険適用前)、66,600円(保険適用)
- 選択帝王切開:20万1,400円(保険適用前)、60,420円(保険適用)
健康保険の適用で自己負担が3割となるため、安くなりますが、帝王切開分娩は自然分娩より入院期間が長くなる傾向にあるため、自己負担の総額は40〜100万円程度になると言われています。
(2)出産病院ごとの費用
引用:厚生労働省
厚生労働省の集計では、年間平均1%前後出産費用が増加しています。費用は、私的病院>診療所>公的病院の順番で安くなっていきます。
また病院の種類に関わらず、専門性の高い医療行為ができる病院や、設備が整っている病院、食事が充実している病院などは費用が高くなる傾向にあります。
2、妊娠・出産時に利用できる制度
ここでは、妊娠・出産時に利用できる制度について紹介します。
(1)出産育児一時金
出産育児一時金とは、妊娠4ヵ月(85日)以上の人が出産したときに支給される一時金です。
2023年4月から支給額が上がっています。
令和5年4月1日〜 | 令和4年1月1日〜令和5年3月31日 | 〜令和3年12月31日 | |
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週以降に出産した場合 | 1児につき50万円 | 1児につき42万円 | 1児につき42万円 |
産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合・産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週未満で出産した場合 | 1児につき48.8万円 | 1児につき40.8万円 | 1児につき40.4万円 |
また、出産育児一時金が直接医療機関に支払われる「直接支払制度」を利用すれば、出産育児一時金を上回った金額のみを医療機関の窓口で支払うことが可能です。
「直接支払制度」を利用できるかどうかは、各医療機関等に確認をしましょう。
(2)出産手当金
出産手当金とは、出産時に労働者に支給される一時金で、出産前後の一定期間の収入減少を補うために支払われます。
対象となる期間は、出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までです。会社を休み、給与の支払いがなかった期間が対象となります。
1日あたりの支給金額は、以下の式で算出ができます。
【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)
(3)傷病手当金
傷病手当金とは、病気やけがで労働ができなくなった場合に、国民健康保険や厚生年金保険に加入している人が受給できる給付金です。
以下の4つ全てに該当する場合に受け取ることができます。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること(切迫流産や悪阻(つわり)なども可)
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
1日あたりの支給金額は、以下の式で算出ができます。
【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)
(4)高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、超過分を国が助成する制度です。
公的医療保険制度が適用される異常分娩は、高額療養費制度の対象になる場合があります。帝王切開など事前に決まっている場合は、事前に限度額適用認定証を申請しておきましょう。
(5)医療費控除
医療費控除とは、所得税や住民税の納税義務者が、自分や配偶者、扶養親族等の医療費を一定額以上支払った場合に、控除できる制度です。
以下の式で算出できます。
(1年間に支払った医療費の総額 – 保険金などで補てんされる全額)-(10万)=医療費控除額
※最大で200万円まで
(6)妊婦健康診査(妊婦健診)費用の助成
多くの自治体では、妊婦健診費用の一部の助成を行なっています。
一般的には、自治体の窓口などで妊娠の届出をした際に、母子手帳と一緒に14回程度の補助券が交付されます。補助券は基本的に健診1回につき1枚利用でき、助成金額を超えた分は自己負担となります。
金額は自治体によって異なるため、区市町村の窓口に確認をしましょう。
3、出産費用の保険適用はいつから?
2023年4月時点で岸田総理大臣は、出産費用の保険適用について「令和8年度(2026年度)をめどに自己負担が生じない制度を検討する」と表明しました。
また、厚生労働省は2024年4月をめどに、医療機関ごとに出産費用を公表する仕組みを作るとしています。
公的医療保険が適用されない正常分娩の出産費用は医療機関によって異なります。この仕組みで費用を公表し、透明性を高めることが狙いです。
4、岸田総理が明言した他の少子化対策
岸田総理が明言している少子化対策は他にも以下のようなものがあります。
(1)経済的支援の拡充
岸田総理は児童手当を中心とした経済的支援の強化を提案しており、家庭の子育て負担を軽減することで少子化対策を進める考えを示しています。この取り組みにより、子育て世代が経済的に安定し、子どもを持ちたいと考える人々が増えることが期待されます。
参照:NHK
(2)住宅ローン優遇措置
多子世帯に対して住宅ローンの優遇措置を提供することで、家族が安心して住める環境を整備し、少子化対策を支援する考えが示されています。これにより、子育て世代がより良い住環境で子どもを育てられるようになることが期待されます。
参照:讀賣新聞
(3)給付型奨学金の拡大
給付型奨学金制度を拡大することで、教育費の負担を軽減し、子育て世代へのサポートを強化する方針が示されています。この制度の拡充により、教育を受ける機会が増え、子どもたちの将来に対する展望が明るくなることが期待されます。
参照:讀賣新聞
まとめ
今回の記事では出産費用の保険適用について解説しました。
出産に関する日本の課題は多く残っているため、今後の動きをぜひチェックしておきましょう。
『PoliPoli』で公開されている子供関連の取り組み
誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス『PoliPoli』では、出産費用軽減の政策について、以下のように公開されています。
あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。
PoliPoli|出産費用等の負担を軽減したい!
(1)出産費用負担軽減の政策提案者
議員名 | 国光 あやの |
政党 | 衆議院議員・自由民主党 |
プロフィール | https://polipoli-web.com/politicians/fprd652tT4oMjuzuPR5t/policies |
(2)出産費用負担軽減の政策目標
政策目標は主に以下の通りです。
- 出産時の負担軽減~お財布のいらない出産~
- 出産費用の見える化~選べる出産~
- 子育て関連予算の引き上げ
(3)実現への取り組み
実現への取り組みは以下の通りです。
- 出産育児一時金、50万円への引き上げを実現!
- 出産費用の見える化を実現!費用の詳細を公表へ!
この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。
『ポリスタ』で公開されている健康関連の動画
『ポリスタ』は、自民党議員と若手の有識者が政策に関するディスカッションや対談を行うクロストーク番組です。是非以下の動画もチェックしてみてください。