生活保護とは、生活が困窮している国民をサポートする制度です。
生活保護法に基づき、様々な保障が設けられています。
本記事では
- 生活保護の概要
- 生活保護の給付内容
- 生活保護の受給要件
- 生活保護の申請手続き
- 生活保護受給者の権利と義務
について解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、生活保護とは
生活保護とは、生活保護法に基づき、国民の最低限度の生活を保障する制度です。
病気のため働けない人や収入が極端に低い人に対し、保護費を支給することで、最低限の生活を保障します。
生活保護の目的は、生活の保障と自立のサポートです。
また最低限度の生活とは、「健康で文化的な生活水準を維持することができるもの」と定められています。
2、生活保護ではどのような給付が受けられるのか
生活保護で支給される保護費は、生活費と収入のバランスで決まります。
収入が最低限度の生活費に満たない場合、不足分の金額を「保護費」として支給するのです。
画像引用元:支給される保護費 生活保護を受けるための要件及び生活保護の内容 生活保護制度 厚生労働省
生活保護の対象となる具体的な費用には
- 生活費用
- 家賃
- 義務教育の費用
- 医療費用
- 介護費用
- 出産費用
- 就労にかかる費用
- 葬祭費用
があります。
それぞれについて見ていきましょう。
(1)生活費用
- 食費
- 被服費(洋服代)
- 光熱水費
といった生活にかかる費用が、「生活扶助」として支給されます。
生活扶助は、以下2つの費用を合計して計算されます。
- 年齢別の個人的費用(食費など)
- 世帯別の世帯共通的費用(光熱水費など)
また特定の世帯には、生活扶助の追加があります。
例えば、ひとり親に対する「母子加算」では、子ども1人につき、2万1,400円が加算されます(3段階施行の1年目 2018年10月~2019年9月の金額に基づく)。
参考:各種扶助・加算の概要(平成30年10月)生活保護制度の概要等について 厚生労働省
(2)家賃
アパート等の家賃は、「住宅扶助」として支給されます。
住宅扶助は地域によって上限額が定められています。
例えば、東京23区の上限額は
- 単身世帯:5万3,700円
- 2人世帯:6万4,000円
- 3~5人世帯:6万9,800円
です。
厚生労働省 2019年3月18日 第1回生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会 参考資料 2に基づく
(3)義務教育の費用
小学校から中学校の義務教育に必要な費用は、「教育扶助」として支給されます。
具体的には
- 学用品費
- 教材代
- 給食費
などが支給されます。
(4)医療費用
医療サービスを受けるための費用は、「医療扶助」として支給されます。
医療扶助は、原則現物給付です。
ここでの現物給付とは、お金ではなく、サービス自体の給付を指します。
(5)介護費用
介護サービスを受けるための費用は、「介護扶助」として支給されます。
医療扶助と同じように、介護扶助も原則現物給付です。
(6)出産費用
出産のための費用は、「出産扶助」として支給されます。
出産扶助では、出産に伴う
- 分娩介助
- 検査
- 室料
といった費用が補填されます。
出産扶助の上限額は、
- 施設分娩:29万5,000円以内
- 居宅分娩:25万9,000円以内
です(2019年度時点)。
参考:厚生労働省 2019年3月18日 第1回生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会 参考資料 2
(7)就労にかかる費用
就労に必要な技能習得などにかかる費用は、「生業扶助」として支給されます。
生業扶助の対象には
- 生業費
- 技能修得費
- 高等学校等就学費
- 就職支度費
の4種類の費用があります。
①生業費
生業費とは、
- 生計を維持するための小規模の事業資金
- 生業に必要な道具代
- 資料代
にかかる費用です。
②技能修得費
技能修得費とは、
- 技能を修得する授業料
- 教材代等の経費
にかかる費用です。
③高等学校等就学費
高等学校等就学費とは、
- 高等学校教育の学用品費
- 教材代
- 交通費
にかかる費用です。
④就職支度費
就職支度費とは、
- 就職確定者の就職のために必要な洋服代
- 初任給までの通勤費
にかかる費用です。
(8)葬祭費用
葬祭に必要な費用は、「葬祭扶助」として支給されます。
葬祭扶助は、
- 葬祭料
- 読経料
などにかかる費用を補填します。
参考:各種扶助・加算の概要(平成30年10月)生活保護制度の概要等について 厚生労働省
3、生活保護の対象者
厚生省が定める最低限の生活に必要な費用を、現状の資産や能力などでカバーできない人が生活保護の対象者です。
資産とは、
- 預貯金
- 売却可能な土地または家屋
などを指します。
能力とは、働くことができる能力です。
財産がなく、働くことが困難な場合で、他の制度を利用しても生活が厳しい人は、生活保護の受給要件を満たしているといえるでしょう。
生活保護には「扶養義務者の扶養」という要件もあります。
親族などから援助を受けられる場合は、その援助を先に受ける必要があります。
ただ厚生労働省では、2021年3月に扶養義務者を見直し、
- 夫の暴力から逃れてきた母子
- 虐待等の経緯がある者
- 当該扶養義務者と10年程度音信不通である者
は例外的に義務者から外されます。
参考:扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について 厚生労働省
4、生活保護を受けるための具体的な手続き
生活保護を受けるには
- 事前相談
- 申請後の調査
- 保護費の支給
というステップを踏む必要があります。
各ステップの具体的な内容について解説していきます。
(1)事前相談
生活保護を申請する場合は、まず最寄りの福祉事務所に相談しましょう。
生活保護担当者から
- 生活保護制度
- 生活福祉資金
- 各種社会保障施策等
の説明を受けます。上記制度の活用について検討され、必要に応じて申請の手続きをします。
(2)申請後の調査
生活保護の申請後は、保護対象となるかどうかの調査が行われます。
具体的に行われる調査は以下の通りです。
- 生活状況を把握するための実地調査(家庭訪問など)
- 預貯金、保険、不動産等の資産調査
- 扶養義務者による扶養の可否の調査
- 年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
- 就労の可能性の調査
参考:2. 保護の申請 生活保護の手続きの流れ 生活保護制度 厚生労働省
(3)保護費の支給
申請が通過した場合は、基準となる最低限の生活費から収入を引いた額が、保護費として支給されます。
受給者は、毎月の収入状況の申告が必要です。
また年数回、福祉事務所のケースワーカーによる訪問調査が実施されます。
就労できる可能性のある受給者には、就労のための助言や指導が行われます。
参考:2. 保護の申請 生活保護の手続きの流れ 生活保護制度 厚生労働省
5、生活保護受給者の権利や義務について
最後に生活保護受給者の
- 権利
- 義務
について見ていきましょう。
(1)権利について
生活保護受給者には、平等に保護を受ける権利が保障されています。
正当な理由がなく保護を変更されたり、すでに給付された保護費が差し押さえられたりすることはありません。
また保護費に租税や、その他の公課が課されることはありません。
(2)義務について
生活保護受給者は、資産、能力、その他のあらゆるものを生活に活用する義務があります。
具体的には
- 生計の把握
- 支出の節約
- 能力に応じた勤労
- 健康の保持及び増進
に努めることが、生活保護受給者の義務に含まれます。
また、福祉事務所からの必要な指導・指示に従うことも生活保護受給者の義務です。
まとめ
今回は生活保護について解説しました。
生活保護は、国民の最低限の生活を保障し、自立を促す制度です。
その他の手当や制度の活用を念頭に置きつつ、やむを得ず生活が困窮する場合は、最寄りの福祉事務所に相談してみましょう。