国民審査とは、最高裁判所の裁判官について「裁判官として適格かどうか」を国民が投票で決める制度です。
投票による審査の結果「不適格」とされた裁判官は、罷免される(辞めさせられる)ことになります。
今回は国民審査について、以下のとおりご紹介します。
- 国民審査の概要と目的
- 国民審査が行われるタイミング
- 国民審査の投票手順
- 罷免されるケース
本記事がお役に立てば幸いです。
三権分立について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
1、国民審査とは
国民審査とは、日本国憲法第79条第2項および第3項と、最高裁判所裁判官国民審査法に基づく審査制度です。
最高裁判所における、現役の裁判官について「裁判官としてふさわしいかどうか」を国民が審査します。
衆議院議員総選挙の投票日に行われ、選挙と同様に「投票」という形で実施されます。
具体的には、辞めさせたい裁判官の欄に「×」をつけた状態で投票します。
投票による審査の結果「ふさわしくない」と判断された裁判官は、罷免される(辞めさせられる)ことになります。
参考:総務省|国民審査|制度のポイントを知ろう!
参考:最高裁判所裁判官国民審査って何?:衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査
2、国民審査の目的
裁判官は「公平・中立」な裁判を行うことが仕事です。
内閣や国会から干渉されることなく、独立して判断を行います。
これを司法権の独立と呼びます。
そして、公平・中立な裁判を行うために、裁判官は憲法によって手厚く身分が保障されています。
一方で、人である以上、裁判官として相応しくない行為を犯す可能性もあります。
裁判官が国民の信頼を裏切るような行為を犯した時は、裁判官であっても外部から辞めさせることができる仕組みが必要です。
その仕組みが、国民審査になります。
「公平・中立」な裁判に、必要不可欠な役割を果たしていると言われています。
3、国民審査において投票できる人
国民審査において投票できるのは、選挙権を持つ人です。
2021年現在、満18歳以上の国民に対し、選挙権が与えられています。
そのため、国民審査において投票できる人も、満18歳以上の国民です。
なお、選挙権については、2015年に施行された改正公職選挙法により、投票権を持つ人の条件が変更されました。
具体的には、「20歳以上の国民」から「18歳以上の国民」に対象年齢が引き下げられたのです。
そのため、国民審査における投票条件も同様のタイミングで変更となっています。
4、国民審査の投票はどのように行われるのか
国民審査の投票用紙には、審査を受ける裁判官の氏名が個別に印刷されています。
辞めさせたい裁判官の欄には「×」を記載し、辞めさせたい意思がない裁判官の名前には何も記載せずに投票します。
この時「×」以外の事項を記載した場合は、投票自体が無効となります。
画像出典:総務省
なお、最高裁判所の裁判官は、任命後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に、国民審査を受けます。
そのため、一度国民審査を受けている裁判官については、解散などで再び国民審査が行われたとしても、審査の対象にはなりません。
ただし、国民審査を受けてから10年後に行われる、初めての衆議院議員総選挙の投票日に、再び審査を受けます。
その10年後も同様です。
裁判官の任期によっては、複数回の国民審査を受けることがあります。
参考:総務省|国民審査|制度のポイントを知ろう!
参考:最高裁判所裁判官国民審査のしくみ
5、国民投票で罷免されるのはどんなケースなのか
国民投票で裁判官が罷免されるのは、「×」が記載された票が、無記載の票数を超えた場合です。
罷免が決定すると、審査結果が告示された日から、30日後に罷免されます。
ただし上記条件に当てはまる場合でも、国民審査の投票率が100分の1未満であった場合には罷免されません。
なお、2021年現在まで、上記条件を満たし国民審査で罷免された裁判官はいません。
参考:総務省|国民審査|制度のポイントを知ろう!
参考:最高裁判所裁判官国民審査って何?:衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査
国民審査に関するQ&A
Q1.国民審査とは?
最高裁判所における、現役の裁判官について「裁判官としてふさわしいかどうか」を国民が審査します。
衆議院議員総選挙の投票日に行われ、選挙と同様に「投票」という形で実施されます。具体的には、辞めさせたい裁判官の欄に「×」をつけた状態で投票します。
Q2.国民審査の投票ができる人は?
国民審査において投票できるのは、選挙権を持つ人です。満18歳以上の国民に対し、選挙権が与えられています。
Q3.国民投票で罷免されるのはどんなケース?
国民投票で裁判官が罷免されるのは、「×」が記載された票が、無記載の票数を超えた場合です。
罷免が決定すると、審査結果が告示された日から、30日後に罷免されます。ただし上記条件に当てはまる場合でも、国民審査の投票率が100分の1未満であった場合には罷免されません。
まとめ
今回は国民審査について詳しくご紹介しました。
国民審査の概要に加えて、審査の目的や投票の方法についてもおわかりいただけたのではないでしょうか。
最高裁判所の裁判官を国民が審査する、という大きな意味を持つ「国民審査」ですが、「裁判官としてふさわしいかどうか」の判断自体が難しいという側面もあります。
重要な意味を持つ国民審査について知ることで、次の審査までの心構えとしていただければ幸いです。
本記事が少しでもあなたのお役に立つことを願っています。