ライドシェアとは、一般のドライバーが自家用車を使ってお客様を運び、対価を得るサービスのことを指します。
Uberを代表とするライドシェアは、海外では急速に普及が進んでいますが、日本では道路運送法の規制により、これまで原則として認められていませんでした。
しかし、深刻化するタクシー運転手不足や、地方での移動手段の確保といった課題を背景に、日本でもライドシェア解禁の機運が高まっています。2024年4月からタクシー会社の管理下で限定的な運用もスタートします。
本記事では、ライドシェアの仕組みや、日本での法的な位置づけ、解禁に向けた議論など、ライドシェアをめぐる最新の動向を詳しく解説していきます。
1、ライドシェアとは?利用方法とカーシェアリングとの違い
(1)ライドシェアとは?
ライドシェアは、一般の人が自家用車を使って有償で他人を運ぶ配車サービスのことです。スマートフォンアプリを介して、車を持つ運転手と移動を希望する乗客をマッチングさせる仕組みとなっています。
主に都市部において、公共交通機関に加えて新たなモビリティ(移動手段)として注目が高まっている形態のサービスです。
(2)ライドシェアの利用方法
ライドシェアは以下のような流れで利用します。
- 利用者は配車アプリをインストールし、出発地と目的地を入力する
- アプリが利用者の位置情報から、付近で配車可能な運転手を自動的に検索する
- 適切な運転手が見つかると、利用者に運転手の情報(氏名、車種、到着予想時間など)が提示される
- 利用者が運転手を確定すると、運転手に連絡が入る
- 利用者は運転手の到着を待った後、同乗して目的地まで運んでもらう
- 利用者は目的地で降車し、アプリを通じて料金を支払う
(3)カーシェアリングとの違い
ライドシェアと似た概念にカーシェアリングがありますが、大きな違いがあります。
運転手の違い
カーシェアリングは、事業者が保有する車両を一般の利用者に対して有償で貸し出すサービスです。つまり、利用者自身が直接運転を行うことになります。
一方のライドシェアは、運転手が乗客を乗せて目的地まで運転するため、利用者は運転する必要がありません。
運送関連の法令の適用範囲
法令の適用範囲にも違いがあります。カーシェアリングは車両の貸し出しであり、貸し出した側は運送行為には当たりません。
一方でライドシェアの運転手は、有償運送行為となるため、運送関連の法令の適用を受けることになります。
このように、ライドシェアとカーシェアリングは、サービスの提供形態や法的位置づけが大きく異なります。利用者の利便性や、事業者の責任の範囲などにも違いが生じることから、両者を混同せずに理解することが重要だと言えるでしょう。
2、ライドシェアのメリットとデメリット
ライドシェアが普及すれば、一般の方々が自家用車を活用して、新たな収入を得られるようになります。
一方で、運転中の事故や乗客とのトラブルに巻き込まれるリスクも存在します。利用者からすれば、低コストでの移動が可能になる反面、サービス水準のばらつきや安全面での不安もあるでしょう。
ライドシェアには気になるポイントがいくつかありますが、新しいモビリティとして定着していく可能性は高いと言えます。本章では、ライドシェアのメリット・デメリットについて、提供者側と利用者側の双方の視点から整理します。
(1)提供者側(ドライバー)のライドシェアのメリット
- 自家用車の空き時間を活用して、新たな収入源を得ることができる
- 自家用車の資産を有効活用でき、効率の良い運用ができる
- 自身の通勤時の経費を賄える可能性がある
- アプリを通じて柔軟に働けるため、副業としても合理的である
- 新たな仕事場所として経験を得ることができる
(2)提供者側(ドライバー)のライドシェアのデメリット
- 運転中の事故や乗客トラブルのリスクがある
- 自家用車の管理負担(整備、清掃など)が大きい
- 収入が不安定で、生活の立て直しには適さない
- 損害賠償責任を含む保険加入など、法的な管理が複雑
(3)利用者側のライドシェアのメリット
- タクシーなどの従来の有償運送より低コストで移動できる
- アプリのマッチング機能により、待ち時間が短く利便性が高い
- 新しいモビリティサービスとして移動の選択肢が増える
- 個人のサービス提供となるため、サービスの質が高い
(4)利用者側のライドシェアのデメリット
- 運転手の資質や接客態度にばらつきがあり、サービス水準が一定でない
- 運転手の人となりや車内環境に不安がある(安全面、衛生面など)
- プライバシーが運転手に開示される心配がある
3、海外におけるライドシェアの普及状況
海外でのライドシェアの普及は目覚ましいものがあり、UberやLyftといったサービスが先導しています。これらのライドシェアサービスは世界中の多くの都市で利用されており、日常的な移動手段の一つとして定着しています。
世界のライドシェアリング市場は、2021年から2028年の予測期間において年間平均成長率(CAGR)が16.3%となっています。また、市場規模は2021年の843億ドルから2028年には2427億3000万ドルに成長すると予測されています。
4、日本におけるライドシェアの解禁とその背景
日本では、ライドシェアは長らく道路運送法の規制対象となり、原則禁止とされてきました。しかし近年、タクシーやバスの運転手不足、過疎地での移動手段の確保などを背景に、ライドシェア解禁を求める声が高まっています。
政府は2024年4月からの限定的な解禁を決定しましたが、ドライバーの安全性やサービス品質、タクシー業界への影響など、様々な課題への対応が求められています。
この章では、ライドシェアの法律、解禁の背景、解禁に当たっての懸念点等を詳しく説明します。
(1)2024年3月までの日本におけるライドシェアの法律・規制
日本では長らく、自家用車を使った有償運送は道路運送法で原則禁止とされてきました。いわゆる「白タク(自家用車の証である白ナンバー車のタクシー)」行為は違法であり、見つかった場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性がありました。
そのため、スマートフォンアプリを介して一般ドライバーが乗客を有償で運ぶライドシェアは事実上認められておらず、タクシー業界からも、安全性の観点などから反対の声が根強くありました。
(2)ライドシェア解禁の背景
近年、ライドシェア解禁を求める機運が高まってきました。その最大の要因が、深刻化する運転手不足です。
全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、2023年3月末のタクシー運転手数は約23万人で、2019年3月末と比較して約20%も減少しています。
一方で、インバウンド観光客の増加に伴い、都市部や観光地を中心に輸送需要は増大しています。タクシーの台数が追い付かず、利用者が車両を確保できない事態も発生しています。
また、交通手段を確保するのが難しい過疎地域で、自治体やNPOが送迎を行う「自家用有償旅客運送」制度を拡充する方針を固めています。
こうした状況を受け、政府は運転手不足の解消とサービス向上を目的に、ライドシェアの限定的な解禁を決定しました。2024年4月にサービス開始となる予定です。一方、全面解禁に関しては、2025年4月以降に検討する予定だと発表しています。
引用:NHK「タクシー運転手 4年で2割減 コロナや高齢化による離職が背景に」
引用:時事通信ニュース「ライドシェア、一部解禁=来年4月、タクシー会社管理で―政府、20日にも方針」
(3)道路運送法とライドシェア:制度と条件の概要
道路運送法は、以下が定められています。
- 輸送の安全確保
- 利用者の利便性向上と保護
- 事業者間の不当な競争防止による健全な事業発達
- 地域の実情に応じた多様な運送サービスの提供を通じた地域交通ネットワークの形成
上記の目的を果たすため、旅客運送事業には一定のルールを設け、安全・安心で利便性の高い運送サービスの提供を求めています。
2024年4月からスタートする新制度の特徴は、第二種免許(公道を使い営利目的で旅客を運送するために必要となる運転免許)を持たない一般ドライバーにもライドシェア参入の道を開いた点にあります。
ただし、最初はタクシー会社の管理下での営業に限定しています。ドライバーの選定や教育、車両の安全管理などタクシー会社が責任を負う形となります。参入できる地域や時間帯も、需給のミスマッチが特に大きいエリアに限られる見通しです。
政府は2024年6月までに、アプリ事業者などのライドシェア参入可否や地域・時間帯の制限撤廃について結論を出すとしています。本格的な自由化に向けて、各方面からの意見を踏まえつつ、さらなる制度設計を進める方針とみられます。
引用:国土交通省「道路運送法等関係法令の基礎知識について ~ 地域に根ざした輸送サービスの提供のために ~ 」
(4)ライドシェア解禁の懸念点
全国自動車交通労働組合連合会(全自交労連)は、政府のライドシェア解禁方針に対し、利用者の安全と公共交通の持続性の観点から、強く反対の立場を示しています。
特に懸念されているのは、「タクシー事業者以外の者が行うライドシェア」です。第二種免許を持たないドライバーによる運転やドライバーの待遇悪化、既存の地域公共交通への影響などが危惧されています。全自交労連は、こうしたライドシェアの導入は容認できないとしています。
また、道路運送法78条3号に基づく自家用車の活用についても、あくまで緊急避難的な措置であるべきだと主張しています。タクシー不足が解消され次第、早期に制度を終了すべきだとの見解を示しています。
しかし供給不足対策の必要性は認識しており、タクシー業界として真剣に取り組むべき時が来ていると訴えています。
全自交労連は、本来あるべき持続可能で安全・安心な地域公共交通を取り戻すためには、様々な困難を乗り越えていかねばならないと結んでいます。規制緩和一辺倒ではない、バランスの取れた供給不足対策が求められていると言えるでしょう。
引用: 交通政策審議会陸上交通分科会「全自交労連 提出資料」
PoliPoliで公開されているスタートアップ関連の取り組み
誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス「PoliPoli」では、スタートアップを振興する政策について、以下のように公開されています。
あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。
PoliPoli|スタートアップ振興で失われた30年から経済再生
(1)スタートアップ振興で失われた30年から経済再生する政策の提案者
議員名 | 今枝 宗一郎 |
政党 | 自由民主党 |
プロフィール | https://polipoli-web.com/politicians/MDVuGC0613SxUEEnvvcJ/profile |
(2)スタートアップ振興で失われた30年から経済再生
政策目標は主に以下の通りです。
- スタートアップを10万社、ユニコーン(創業10年以内に時価総額100億ドル達成)を100社創出し、世界有数のスタートアップの集積地にすることを目指す
- 2027年度までに、現在8,200億円のスタートアップへの投資額を、10倍を超える規模(10兆円規模)まで拡大させる
(3)実現への取り組み
実現への取り組みは以下の通りです。
- スタートアップ経営者等が求める支援、更なる新施策・提案について意見交換を行うため、有識者会議を開催
- 「スタートアップ推進基本法(仮)」の立法化を実現し、国を挙げて長期的に振興する仕組みを整備する
- 上場だけに偏らないM&Aの推進(のれんの会計基準の国際標準化など)を目指す
この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。
まとめ
ライドシェアは、一般の個人が自家用車で他人を有償運送する配車サービスで、海外では広く普及しています。日本でも2024年4月から限定的に解禁されますが、利用者の安全確保や公共交通への影響など、様々な課題が指摘されています。
政府は本格的な自由化に向けた制度設計を進める方針ですが、規制緩和一辺倒ではない、バランスの取れた議論が求められます。
ライドシェアの健全な発展のためには、利用者、提供者、既存事業者、行政など、様々な声に耳を傾けながら、持続可能でより良い移動の姿を模索していく必要があるでしょう。