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備蓄米制度とは? 安定した食料供給を支える仕組みについてわかりやすく解説

投稿日2025.2.28
最終更新日2025.02.28

食料安全保障がますます重要視される中、日本の「備蓄米制度」が改めて注目されています。特に2024年には米の価格が高騰し、政府が備蓄米を活用した対策を進める中で、その役割が浮き彫りになりました。本記事では、備蓄米制度の仕組みや意義、そして今回政府から発表された制度の運用見直しなどについて解説します。

 安定供給を支える備蓄米制度とは?

備蓄米制度は、1995年に制定された「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」に基づき、政府が一定量の米を備蓄することで、凶作や不作時における安定供給を確保するための制度です。この制度は、1993年の記録的な冷夏による深刻な米不足、いわゆる「平成の米騒動」を契機に導入されました。当時、国内の米在庫が逼迫し、消費者がスーパーに殺到する事態が発生しました。現在、政府は約100万トンの米を備蓄しており、これは10年に一度の大凶作や、通常の不作が2年連続で発生した場合にも対応できる量とされています。

制度の目的

備蓄米制度は、大きく分けて以下の二つの目的を持っています。

  1. 災害や不作に備える
    台風や長雨、猛暑などによる不作時に備え、国内の米流通を安定させる役割を果たします。
  2. 市場の安定化
    供給が過剰になった場合、政府が買い入れることで価格の暴落を防ぎ、農家の経営を守ります。一方、供給不足時には放出することで価格高騰を抑えます。

備蓄の規模と更新方法

政府が備蓄する米の量は、約100万トンが目安とされており、これは日本の年間消費量の約1割に相当します。備蓄された米は、主に政府寄託倉庫で低温保管され、保管期間の5年を過ぎたものは飼料用や学校給食、子ども食堂、フードバンクなどに提供されます。

このように、備蓄米制度は、食料供給の安定と市場価格の調整に重要な役割を果たしています。

備蓄米制度が解決の鍵?米の価格高騰

2024年、日本国内では米の価格が急騰しました。特に、猛暑による収穫量の低下や輸入飼料の価格高騰を背景に、米の需要が急増。さらに、円安による輸入食品価格の上昇が影響し、国産米の需要が拡大しました。結果として、消費者が米を買い求める動きが強まり、市場では価格の高騰が続きました。

価格高騰の背景

  • 気候変動の影響:猛暑や豪雨により、主産地での収穫量が減少。
  • 国際的な食料価格の上昇:ロシア・ウクライナ情勢などの影響で、穀物価格が高騰。
  • 需要の急増:小麦製品の価格上昇により、消費者が米へシフト。

このような状況下で、備蓄米の活用が焦点となりました。

政府の対策:備蓄米制度の運用みなおし

政府は、2025年1月に、備蓄米制度に関する運用の見直しを行い、米の価格高騰に対応するため、備蓄米の放出を行うことを決定しました。通常、備蓄米は市場の需給状況を考慮しながら計画的に販売されますが、今回は急激な価格上昇を抑えるため、異例の対応が取られました。

具体的な対策

  1. 備蓄米の緊急放出
    価格上昇を抑えるため、政府は約20万トンの備蓄米を市場に供給。これは、通常の年間更新量よりも多く、異例の措置といえます。
  2. 補助金による価格調整
    小売価格の急騰を防ぐため、一定の補助金を交付し、消費者への負担軽減を図りました。
  3. 新たな生産支援策の導入
    長期的な視点で、国内の米生産を強化するための支援策が検討されています。

市場への影響

こうした対策により、短期的には米価格の急騰が抑えられることが期待されます。しかし、根本的な解決には持続可能な備蓄制度の見直しが必要との指摘もあります。

参考:農林水産省、(2025年1月31日江藤農林水産大臣記者会見)

備蓄米制度の今後課題

今回の米の価格高騰を受けて、備蓄米制度の運用に関する課題も浮き彫りになりました。

課題

  1. 備蓄量の適正化
    100万トンの備蓄量は、過去の需給状況をもとに決められたものですが、近年の気候変動リスクを考慮すると、より柔軟な備蓄が求められます。
  2. 備蓄米の質の向上
    一部では「古米」の品質が課題とされており、より良質な状態での備蓄が必要とされています。
  3. 放出タイミングの最適化
    需給の変化に応じて、より迅速に市場へ放出できる仕組みが必要といわれています。

今後の改善策

  • 備蓄量の増加と柔軟な管理
    平時の備蓄量を増やし、緊急時には迅速に供給できる体制を整える。
  • 品質管理の強化
    冷蔵技術の導入などにより、長期保存時の品質を向上させる。
  • データ活用による需給予測の高度化
    AIを活用し、より精度の高い需要予測を行うことで、適切な放出時期を見極める。

まとめ:備蓄米制度が支える安定流通

備蓄米制度は、日本の食料安全保障を支える重要な仕組みです。2024年の米の価格高騰では、備蓄米制度に関する運用が見直され、市場を安定させる役割が求められました。そして、今後も気候変動や国際情勢の影響を受ける可能性があり、より柔軟で持続可能な制度へと進化させることが求められるかもしれません。

政府と市場の適切な連携により、食料の安定供給を維持しながら、消費者や農家にとってより安心できる仕組みを構築することが重要です。今後の動向に注目が集まります。

この記事の監修者
株式会社PoliPoli 政府渉外部門マネージャー 秋圭史
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。その傍ら、株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当している。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)

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