政治ドットコムトピックストランプ政権の4年間を振り返る(主な脱退・離脱・破棄)

トランプ政権の4年間を振り返る(主な脱退・離脱・破棄)

投稿日2020.11.13
最終更新日2020.11.13

熾烈な大統領争いが行われ、2020年11月現在、ジョー・バイデン氏の次期大統領就任が確実視されています。
第45代アメリカ合衆国大統領を務めたドナルド・トランプ氏の4年間を受けて政権交代、アメリカに新たな時代が訪れることになります。
2017年1月からの4年間でトランプ氏は、多くの組織、条約、協定から脱退、離脱を決定しています。
これらの決断から、トランプ氏の「アメリカ第一主義」とはどのようなものだったのかが見えてきます。

WHO脱退(世界保健機関)

2020年7月8日、トランプ政権がWHO(世界保健機関)を「2021年7月6日付で脱退する」との通知をグテーレス国連事務総長に送ったと一斉にメディアが報じました。
トランプ氏は2020年5月下旬、新型コロナウイルスの世界的なパンデミック(世界的感染拡大)が続いている中で、「WHOは中国の情報隠蔽に加担している」と強く非難。脱退をほのめかしていました。
アメリカはWHOの最大の資金拠出国でもありました。
2019年にはWHOの予算の約15%に相当する4億ドル(約430億円)を負担しています。
これだけの金額を出しても、WHOは中国に支配下にあるとの不満がトランプ氏にあったのではないかと見られています。

「パリ協定」から離脱

2019年11月4日、トランプ氏は支持者の前で「私は、多額のお金がかかる恐ろしい『パリ協定』からの離脱を発表する」と演説を行いました。
パリ協定は、2015年にパリで開かれた国連の会議「COP21」で採択されました。地球温暖化対策を目的とし、温室効果ガスの世界的な削減目標を設定したことに加え、途上国・新興国にも温暖化対策への自主的な取り組みも求めています。
トランプ氏は大統領就任前から「地球温暖化などでっちあげ」と主張。一貫して否定的な立場を取っていました。
大統領就任後は、前任のオバマ政権が打ち出した地球温暖化対策を全面的に見直す大統領令にサイン。
オバマ政権がストップを掛けていた原油パイプラインの建設計画を推進するなど、環境保護ではなく経済対策や雇用促進を重視しました。
トランプ氏は「パリ協定による規制でアメリカ国内の企業が危機に瀕している。にもかかわらず中国など、他の国の環境汚染は許している。他国を豊かにしてアメリカ国民を痛めつけるようなことはしない。それがアメリカ第一主義だ」と2019年10月に話しています。

「国連人権理事会」から脱退

2018年6月19日、アメリカは国連人権理事会を脱退したと発表しました。
会見を行ったニッキー・ヘイリー米国連大使(当時)は、「国連人権理事会は政治的偏見のはきだめだ」と批判。
脱退前にも「慢性的な反イスラエル的な偏見」があると国連人権理事会を非難していたヘンリー大使は、会見で続けて「偽善と自己満足」に満ちた組織が「人権を物笑いの種にしている」と離脱の理由について述べています。
2006年の設立以降、国連人権理事会の運営についての批判は根強くありました。
同理事会は全47ヵ国の理事国が3年の任期を務め、「普遍的・定期的レビュー(UPR)」を行うことで全国連加盟国の人権に対する取り組みを評価することを目的に作られました。
人権侵害があったとする報告に対しては、国連から専門家を派遣したり委員会を設置することができ、実際にシリアや北朝鮮、ブルンジ、ミャンマー、南スーダンに対してそのような措置が取られています。
アメリカはそもそも2006年の設立時の段階で、人権侵害を行っている国が理事会に参加しているとして、加盟を拒んでいました。
アメリカが理事国となったのは、バラク・オバマ氏が大統領だった2009年のとき。3年後の2012年には理事国に再選されています。
その後、2013年に理事国に中国、ロシア、サウジアラビア、アルジェリアなど、人権侵害の疑いのある国が選ばれ、理事会は世界の人権団体から非難を浴びています。

「環太平洋経済連携協定(TPP)」から離脱

2017年1月23日、トランプ氏は「環太平洋経済連携協定(TPP)から永久に離脱する」とした大統領令に署名しました。
TPPとは、参加国との間において、関税の撤廃、サービス貿易、投資、金融などについて、自由貿易の障害をすべて除去しようとする自由貿易協定を指します。日本も国論を2分する大激論の末、2013年3月15日に、政府は参加を表明しています。
トランプは大統領就任前から「大統領就任初日に離脱を表明する」と宣言。選挙公約として公表していました。その背景にはアメリカ国内の雇用拡大を狙う意図がありました。
1970年代のアメリカでは、上位1%の人が占める所得の割合は全体の7%台と言われていました。しかし、2016年当時には20%近くに達しました。中所得層の所得水準が上がっておらず、貧富の差が激しくなっていることがわかります。
トランプ氏は経済成長の恩恵を受けられなかった人たちの不満を集め、彼らの熱い支持を取り付けました。
アメリカのTPP交渉離脱後、アメリカを除いた11ヵ国で調整が進められ、2018年12月30日に発効されています。

「イラン核合意」から離脱

2018年5月8日、トランプ氏はオバマ政権が締結したイランとの核合意から離脱すると発表しました。
離脱発表時の会見でトランプ氏は「合意は衰えて腐っており、市民として恥ずかしいもの」と強い口調で非難しています。
包括的共同作業計画(JCPOA)と呼ばれるこの合意では、イランが核計画を制限することと引き換えに、それまで国連とアメリカ、欧州連合(EU)がイランに科していた経済制裁の解除を定めていました。
トランプ氏はこの合意の効果を疑問視。
合意による制限が期限付きでしかないこと、弾道ミサイル開発を制止していないことを批判していました。
合意からの離脱を受けて、トランプ氏はウラン濃縮の停止を含むすべての核開発を永久に放棄することを含めた全12項目の厳しい要求をイランに突きつけます。
さらに2019年11月には「史上最強の制裁を科す」と宣言。イラン経済の柱とも言うべき原油の輸出を断ち切ってしまいます。
日本を含めた一部の国にはイラン産原油の輸入を一時的に認めてきましたが、2020年5月にはその適用の除外措置も打ち切り。全面禁輸へと踏み切りました。
イラン側はトランプ政権を「信用できない」と対話拒否。混迷の度合いを深めました。

「中距離核戦力全廃条約(INF)」から離脱

2019年8月2日、1987年にアメリカとソビエト連邦(現ロシア)との間で結ばれた中距離核戦力全廃条約(INF)からアメリカは正式に離脱しました。
INFはアメリカとソ連との間に結ばれた軍縮条約のひとつ。中射程の弾道ミサイル、巡航ミサイルをすべて廃棄することを目的として結ばれました。
しかし、2018年10月20日、トランプ氏はネバダ州で開かれた選挙集会の後、「核に関する合意をロシアが違反するのを我々は容認しない」と話し、「合意を破棄する」と発言。世界を驚かせます。
前任のオバマ氏が大統領だった2014年の段階でアメリカは、ロシアが開発している新型巡航ミサイル「9M729」の射程が中距離に相当し、条約違反だと訴えていました。
アメリカが核兵器の削減を進めているにも関わらず、ロシアは条約を無視して核兵器の開発を進めているのはけしからんというのが、トランプ氏が離脱を決めた理由と考えられています。

「ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)」から脱退

2017年10月12日、トランプ氏はユネスコ(国際連合教育科学文化機関)から脱退すると発表しました。
ユネスコとは、諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関(ユネスコ憲章前文より)です。
トランプ氏が脱退を決めた理由には、多額の分担金とユネスコによる政治的な偏見があると言われています。
2014年段階で、ユネスコ加盟国の分担金の分担率の上位5ヵ国は以下になります。
1位:アメリカ(22.00%)
2位:日本(10.83%)
3位:ドイツ(7.14%)
4位:フランス(5.59%)
5位:イギリス(5.14%)
ただしアメリカは、2011年にパレスチナがユネスコ加盟国として正式に認められたことをきっかけに分担金の支払いを停止しています。
つまり、結果的に日本の分担金負担が世界一ということになります。
2018年10月、ユネスコは中国の申請を認め「南京大虐殺」を世界遺産に認定しました。歴史的な検証も、確たる証拠もないにもかかわらず、です。
さらに中国は「慰安婦問題」も世界遺産に認定させようと活動を続けています。
このように、「分担金を多く負担しても」その国には有利に働かない、これもアメリカが脱退を決めた理由のひとつではないかと言われています。

バイデン氏の方針

第46代アメリカ大統領となるジョー・バイデン氏は、トランプ政権によるこれらの決断に対してどのような手を考えているのでしょうか。

・WHO
2020年7月7日の「アメリカ、WHO脱退を正式通知」を受けた翌日8日、バイデン氏は早々に「大統領に当選したらWHOに復帰する」と明言。Twitterで「アメリカが国際公衆衛生の強化に関与することで、アメリカ国民はより安全になる」「大統領になった初日にWHOに再加盟し、世界の舞台におけるリーダーシップを回復させる」と訴えました。
2020年11月9日にはWHOのテドロス事務局長は、バイデン氏の大統領当選を祝福し「協力の新時代を築く時だ」とメッセージを贈っています。
大統領に就任する2021年1月にも脱退の撤回がなされそうです。

・TPP
バイデン氏はかねてから「TPPの再交渉」を訴えていました。
しかし、2020年11月の大統領選挙における公約にTPPについては触れられていません。
大統領選挙の激戦州であり、市場の開放に慎重な、中西部の「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」と呼ばれる地域の労働者たちに配慮したのではないかと言われています。

・イラン核合意
イラン核合意が締結された際の大統領はオバマ氏。バイデン氏は副大統領として任務を務めていました。
2020年9月、バイデン氏は「トランプ大統領の対イランアプローチは失敗だ」と批判。「イランが核合意を厳格に守るのであれば、アメリカは核合意に再び加わるだろう」と述べました。

・パリ協定
バイデン氏は、環境重視と規制強化を公約に掲げてきました。パリ協定についても「当選すれば21年1月20日の就任当日に協定に復帰する」と公約しており、大統領に当選した2020年11月現在、2021年1月にも復帰するのではないかと言われています。