コーポレートガバナンスとは、企業を健全に運営するための監視体制です。
企業統治ともいいます。
今回の記事では
- コーポレートガバナンスとは
- コーポレートガバナンスの監視対象
- コーポレートガバナンスの具体的事例
- コーポレートガバナンスの課題
についてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、コーポレートガバナンスとは
コーポレートガバナンスとは企業の経営を監視する体制を指します。
英語では“corporate governance”と表記され、corporateは『企業』、governanceは『統治、管理』を意味します。
コーポレートガバナンスは企業のためだけではなく
- 株主
- 取引先
- 従業員
- 顧客
- 地域社会
などの各ステークホルダーと良好な関係を築くために必要な取り組みです。
(1)コーポレートガバナンスの目的
コーポレートガバナンスの目的は『不祥事の防止』と『企業価値の向上』です。
- 透明性のある公正な経営を実現すること
- 不祥事を未然に防ぐこと
が企業の価値を上げ、株主への利益還元に繋がると考えられています。
また、株主だけではない社会を含めた各ステークホルダーの利益を守ることにも繋がります。
2、コーポレートガバナンスにおける監視対象
コーポレートガバナンスの監視対象は以下の通りです。
- 取締役会、監査役会の組織構成
- 取締役会、監査役会の構成員の選出方法
- 取締役、監査役の報酬決定方法
- 株主に対する情報開示方法
上記の項目を監視することで
- 汚職や腐敗
- 違法行為
- 権力の暴走
などを防止します。
- 取締役会
- 監査役会
- 株主
について確認していきましょう。
(1)取締役会とは
取締役会とは、会社にとっての重要な意思決定などを行う組織です。
会社法では、取締役会設置会社(取締役会の設置が義務付けられている会社)は、取締役を3名以上置かなければならないと定められています。
会社法331条
5 取締役会設置会社においては、取締役は、三人以上でなければならない。
条文引用:会社法 e-GOV
(2)監査役会とは
監査役会とは、取締役を監査する組織です。
監査役会を構成する『監査役』は、株主総会で選ばれます。
監査役会の監査には『業務監査』と『会計監査』の2種類があります。
(3)株主とは
株主とは、株式会社が発行する株式を保有する人のことです。
株主総会は、株主で構成された最高意思決定機関になります。
株主は以下3つの権利を持っています。
- 利益配当請求権:利益分配(配当金)を受け取る権利
- 議決権:株主総会で投票する権利
- 残余財産分配請求権:会社の解散後に財産分配を受け取る権利
参考:日本の監査役制度(図解) 公益社団法人 日本監査役協会
3、コーポレートガバナンスの具体的事例
企業ではどのようにコーポレートガバナンスが運用されているのでしょうか?
- 任天堂
- 株式会社ファーストリテイリング
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
のコーポレートガバナンスの考え方と体制についてご紹介します。
(1)任天堂
画像引用元:コーポレートガバナンス 任天堂
任天堂は、家庭用レジャー機器の製造販売を行う会社です。
任天堂のコーポレートガバナンスに対する基本的な考え方は、「任天堂に関わるすべての人の利益と長期的な企業価値を最大化すること」です。
取締役会は
- 取締役(監査等委員である取締役を除く)5名
- 監査等委員である取締役(そのうち社外取締役3名)4名
の計9名で構成されています。
また任天堂では『監査等委員会設置会社制度』を取り入れています。
監査等委員会設置会社制度とは、2014年の会社法改正で導入された制度です。
監査等委員会設置会社制度では、取締役が3名以上で構成される監査等委員会(過半数の社外取締役を含む)が監査役会の代わりに監査を行います。
一般的には、取締役会と監査役会は別々に設置されますが、監査等委員会設置会社制度によって、取締役会の中に監査等委員会を置くことで、
- 柔軟な人選
- 迅速な意思決定
などのメリットが期待できます。
(2)株式会社ファーストリテイリング
画像引用元:コーポレートガバナンス体制 2020年11月27日現在 ファーストリテイリング
株式会社ファーストリテイリングは、衣料品の製造小売を行う会社です。
ファーストリテイリングのコーポレートガバナンスに対する基本的な考え方は、「世界No.1のアパレル情報製造小売業になると同時に社会的課題と環境問題の解決を図ること」です。
コーポレートガバナンスの組織形態は、一般的な『監査役会設置会社』です。
任天堂の『監査等委員会設置会社制度』とは異なり、取締役会を監査役会が監査します。
- 取締役会は取締役9名(そのうち5名が社外取締役)
- 監査役会は監査役人数6名(そのうち3名が社外監査役)
両役会15名で構成されています(2020年11月時点の情報に基づく)。
参考:コーポレートガバナンス体制 2020年11月27日現在 ファーストリテイリング¥
(3)株式会社セブン&アイ・ホールディングス
画像引用元:コーポレートガバナンス体制(2020年5月28日現在) 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストアやスーパー、金融サービスなどを手がける会社です。
株式会社セブン&アイ・ホールディングスのコーポレートガバナンスに対する基本的な考え方は、「各ステークホルダーの信頼を確保するために誠実な経営体制を構築し、企業価値を継続的に高めること」です。
組織形態は、ファーストリテイリングと同じく『監査役会設置会社』になります。
- 取締役会は13名(そのうち、独立社外取締役は5名)
- 監査役会は5名(そのうち、独立社外取締役は3名)
両役会18名で構成されています(2020年5月時点の情報に基づく)。
参考: コーポレートガバナンス体制(2020年5月28日現在) 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
4、コーポレートガバナンスの課題
コーポレートガバナンスの主な課題は、「監査のバランス」にあります。
例えば、スピーディーに物事を進めたいのに、慎重な監査によって、なかなかプロジェクトが進まないといった場合が挙げられます。
また、コーポレートガバナンスは各ステークホルダーとの関係が重要視されています。
ステークホルダーの意見を尊重するあまり、会社の事業方針が揺らぐ可能性もあります。
- 事業のスピード
- 社外役員の人件費
- ステークホルダーとの関係
などを最適なバランスで行うという点は、コーポレートガバナンスの課題といえるでしょう。
まとめ
今回はコーポレートガバナンスについて解説しました。
会社を長期的に支えるのは株主・取引先・顧客・従業員・地域社会との良好な関係です。
コーポレートガバナンスの正しい理解と適切な実施により、会社の健全な成長と発展につながります。