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赤字国債とは?普通国債との違いについても簡単解説

投稿日2020.7.1
最終更新日2025.02.28

赤字国債とは、財政赤字時に資金調達を行うために発行される国債(国庫債券)のことです。

また国債とは、国が発行する債券のことで、借金証書(お金を借りた人と貸した人の間で交わされる返還の約束)のようなものです。

今の日本は、赤字国債の発行無しでは成り立たない状態が続いていて、世界有数の借金大国になっていると言われることもありますね。

ニュースで見聞きしたことがあり、不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は

  • 赤字国債の概要
  • 普通国債との違い
  • 国債を大量発行することのリスク

についてご紹介いたします。
本記事がお役に立てば幸いです。

 

1、赤字国債とは

まずは国債と赤字国債の概要をご紹介します。

(1)国債の基礎知識

国債とは、借金証書のようなものです。
イメージとしては、国がお金を借りる側となり、「この日までにこれだけの利子をつけて返済します」と約束するものです。

なお、国債にかかる全ての費用は国債費と言います。

詳しくはこちらの記事で解説しているので、ご覧ください。

国債費とは?国債(国の借金)について簡単に解説!

国債費とは、国が国債について負担するすべての「金銭的コスト」のことです。 対して国債とは、国が発行する債券のことで借金証書(お金を借りた人と貸した人の間で交わされる返還の約束)のようなものです。 国の借金が大きくなりすぎている、ということはニュースでも取り上げられているため、今後の日本の財政について心配してしまう方もいらっしゃると思われます。 そこで今回は 国債や国債費...

①国債を発行する理由

国が国債を発行する理由は、国の事業を行うための資金が少ないからです。

収入が少なく支出が多い際に、国債を発行して資金を調達します。

つまり、国は国債というツールで借金をして、国民生活の維持向上に利用していることになります。

②普通国債の種類

国債にはいくつか種類があり、特に利払い・償還財源が税財源で賄われている国債を普通国債と言います。

普通国債は、

  • 建設国債:公共事業のため発行
  • 赤字国債(特例国債):公共事業以外の用途で発行
  • 年金特例国債:基礎年金の国庫負担のため(2012年、2013年に発行)
  • 復興債:東日本大震災からの復興のための施策を実施するため(2011年から2015年まで発行)
  • 借換債:普通国債の償還額の一部を借り換える資金を調達するため発行

の5種類に分かれ、それぞれ目的が異なります。

参考:国債とは:財務省 

つまり赤字国債(特例国債)は普通国債の一部なのです。

赤字国債以外について、詳しくは「2、他の国債と赤字国債の違い」でご説明します。

なお、上記のうち、建設国債、赤字国債(特例国債)、年金特例国債は一般会計において含まれ、発行収入金は一般会計の歳入の一部となります。

(2)赤字国債(特例国債)とは

赤字国債は、日本の税収で足りない支出を補うために発行される国債です。
主に社会保障費や防衛費に使われます。

考え方としては、国が建設国債を発行してもお金が足りない場合に、支出にあてる財源の調達を目的として発行します。

ただし、実は赤字国債の発行は財政法により禁止されているため、国は特例法によって赤字国債を成立させています。

なお、国債発行残高は年々増えており、財務省の公表データによれば、2019年度末には897兆円となる見通しです。

また、国とは別で、地方自治体による地方債も増えており、国と地方の債務残高を合わせると、総額で1,000兆円を超えています。

参考:公債残高の累積

世界各国と比べてもGDPに対する債務残高の割合は日本が世界1位になっています。

順位 名称 単位: % 前年比 地域 推移
1位   日本 237.96 アジア
2位   ベネズエラ 232.79 +3 中南米
3位   スーダン 201.58 -1 アフリカ
4位   エリトリア 189.35 -1 アフリカ
5位   ギリシャ 180.92 -1 ヨーロッパ
6位   レバノン 174.48 中東
7位   イタリア 134.80 ヨーロッパ
8位   シンガポール 130.02 +4 アジア
9位   カーボヴェルデ 124.98 -1 アフリカ
10位   バルバドス 122.22 -1 中南米

引用:世界の政府総債務残高(対GDP比)ランキング

2、普通国債と赤字国債の違い

国債には様々な種類があることをご紹介しました。
続いて、それぞれの国債と赤字国債の違いを見ていきましょう。

(1)建設国債との違い

建設国債は、投資的経費として公共事業などに発行される国債です。
公共事業を行う際に、国の予算では足りない費用を国債として発行しています。

赤字国債とは費用の使用目的が異なります。
赤字国債は公共事業以外の目的で使用する費用を確保するためのものです。

社会保障費や防衛費に使われます。

参考:赤字国債と建設国債の違い

(2)復興債との違い

復興債は、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために発行された国債です。
施策に必要な財源の確保に関する特別措置法に基づき、発行されました。

あくまで必要な財源が入るまでの「つなぎ」の役割だったため、発行された期間は2011年から2015年までと限定的です。

なお、赤字国債は一般会計の歳入の一部となりますが、復興債は東日本大震災特別会計において発行され、特別会計の歳入の一部となります。

参考:復興応援国債「変動10年」の特徴

(3)借換債との違い

借換債は、普通国債の償還額(お金を貸してくれた人に払い戻す金額)の一部を借り換える資金を調達するために発行される国債です。

特別会計に関する法律に基づき、発行されます。
また、借換債は国債整理基金特別会計において発行され、復興債と同様に、特別会計の歳入の一部となります。

その点も、赤字国債とは異なります。

3、国債大量発行のリスク

国債が大量発行され、「日本は大丈夫なのか?」と不安に感じる方も多いかと思いますが、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。

以下で詳しくご説明します。

(1)金利上昇


画像出典:Japan Government Bond 10Y

金利は上図のように推移しています。
国債の金利は銀行の貸出金利に影響します。

具体的には、国債を大量に発行すると国債の利回りが上昇してしまい、銀行の貸出金利が上昇します。

なぜなら、銀行の金利は国債の利回りを基準に設定されているからです。
銀行の貸出金利が上昇したら、どのような悪影響があるのでしょうか。

結論としては、銀行からお金を借りたい企業や個人が、お金を借りにくくなってしまいます。
企業であれば新規事業の立ち上げや設備投資、個人であれば車や家などの大きな買い物が難しくなることがあるでしょう。

結果的に経済の流れが停滞してしまい、不景気につながる可能性があるのです。

参考:日本国債の大量増発で懸念強まる需給の緩み、金利が急上昇するリスクは?

(2)デフォルトリスク

国債は、国が発行している借金証書だから安全、と思う方も多いかもしれませんが、一概にそうは言えません。

例えば個人国債であれば、額面での買い取り保証や利払いの保証があるものの、それはあくまで国と私たちの「約束事」です。

個人から見てお金を貸す先は国なので、信用リスク(取引先が破綻するなどして、当初の約束事が果たされないリスク)はかなり低いと言えますが、国が破綻する可能性もあると言われています。

また、国が破綻する可能性は低いものの、その他インフレによって“実質的な元本割れ”もあるため、元本割れのリスクがあることは知っておかなければならないでしょう。

元本割れとなれば、誰も日本という国にお金を貸したがらず、必要な費用はますます枯渇してしまうのです。

参考:発行体の信用リスク(デフォルトリスク)

(3)インフレリスク

インフレリスクとは預金や国債といった、現金と似た性質を持つ金融商品が、物価の上昇に伴い価値が無くなってしまうリスクのことを言っている。

 物価の上昇率より運用している商品の利回りが小さいと、同じ10万円でも,同じ価値の物が買えなくなってしまう可能性があるのです。

参考:日本国債に“元本割れリスク”?

4、感染症による国債発行額の増加

日本の国債発行残高は2019年度末には897兆円にも上りますが、新型コロナウイルスの影響によってさらなる追加発行が決定しています。

108.2兆円の大型の経済対策による財源確保のため、2020年度補正予算(案)で16兆8,057億円の新規国債を追加発行されることになったのです。

この決定によって、2020年度の新規国債発行額は49兆3,619億円となり、リーマン・ショック後の経済対策を行った2009年度に迫る水準となりました(当時は51兆9,521億円)。

さらなる追加対策を打つ場合は、もっと増える可能性があります。

世界中で起こっている未曾有の危機ですから、スピーディーな対策や経済再生は最優先課題の一つです。

参考:コロナで国債発行額が過去最大に 現実味増す1946年以来の「預金封鎖」

まとめ

今回は「赤字国債(特例国債)」についてご紹介しました。

国債の種類、その他の国債と赤字国債の違い、国債を大量発行する際のリスクについておわかりいただけたのではないでしょうか。

赤字国債について知り、私たちが日本の未来を考えることで、よりよい未来が作られていくかもしれません。

本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

 

 

この記事の監修者
秋圭史(株式会社PoliPoli 渉外部門)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。その傍ら、株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当している。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)

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