補正予算とは、本予算の成立後に新しく組まれる予算です。自然災害や社会情勢の変化で新しい予算が必要な場合に追加されます。
ここ最近で言うと、2020〜2021年に新型コロナウィルスの影響で3回の補正予算が組まれています。
本記事では、以下についてわかりやすく解説します。
- 補正予算とは
- 補正予算と暫定予算の違い
- 補正予算の成立事例
本記事がお役に立てば幸いです。
1、補正予算とは
補正予算とは、本予算成立後に必要に応じて追加される予算です。
- 自然災害
- 社会情勢の変化
- 政策の変更
などに対応するために新たに予算が組まれます。
それではここから
- 国家予算
- 補正予算の種類
- 補正予算の財源
について解説していきましょう。
(1)そもそも国家予算とは
国家予算とは、4月から翌年3月までの1会計年度の歳入と歳出の見積りです。
歳入(さいにゅう)とは収入、歳出(さいしゅつ)とは支出を指します。
簡単に説明すると、国家予算とは国を運用するために必要な1年間のお金の見積りです。
国家予算は一般会計と特別会計に分けられ、更に
- 本予算
- 補正予算
- 暫定予算
(2)補正予算の種類
補正予算は、以下2つの予算に分けられます。
- 修正予算
- 追加予算
修正予算とは、すでに決まっている本予算の修正です。
追加予算とは、本予算に追加される新しい予算です。
(3)補正予算の財源
財務省が発表している『令和元年度補正予算の概要』から、補正予算の財源を確認していきましょう。
『これらの財源面については、歳出において、既定経費を1兆2,908億円減額するとともに、歳入においては、建設公債2兆1,917億円、税外収入1,881億円及び前年度剰余金8,016億円を計上することとしている。
他方、税収は▲2兆3,150億円の減額を見込んでおり、また、国税の減収に伴う地方交付税交付金原資の減額の補塡のため、所要額を計上している。
これらについて、特例公債金2兆2,297億円を発行することで対応することとしている。』
引用:特集 令和元年度補正予算及び令和2年度予算について 財務省
上記から、補正予算の財源は
- 既定経費の減額
- 建設公債
- 税収
- 税外収入
- 前年度剰余金
- 特例公債金
などから補填されていることがわかります。
続いて税収と公債について解説します。
①税収
税収とは、税金の収入です。
租税とも呼ばれます。
また租税や公債発行以外の収入は、税外収入と呼ばれます。
税外収入には
- 国有財産売払収入
- 日本中央競馬会納付金
- 印紙収入(郵便局販売分)
などがあります。
②公債
公債とは、国債や地方債を発行して調達される収入です。
簡単に言い換えると、公債は国の借金のようなものになります。
国債や地方債を買った人は、国にお金を貸している形になります。
そして建設公債とは、公共事業のために発行される公債のことです。
参考:用語の解説 財務省
2、補正予算と暫定予算の違い
補正予算と暫定予算とでは、予算が組まれる目的が異なります。
補正予算は本予算を補うための予算ですが、暫定予算は本予算の成立が遅れる場合に一時的に組まれる予算になります。
つまり予算が決まらないまま行政機能が停止しないように、つなぎとして組まれる予算が暫定予算なのです。
暫定予算はあくまで臨時の予算であるため
- 行政運営に必要な最低限の経費に留める
- 議論されていない重要政策の経費計上は避ける
ことが必要であると考えられています。
3、補正予算の成立事例
補正予算はどのような場合に成立するのでしょうか。
近年の補正予算の歳出に焦点を当て、補正予算の成立事例をご紹介します。
(1)令和元年度(2019年)の補正予算
2019年度の補正予算には、自然災害からの復旧やオリンピック・パラリンピックの開催に備えた整備のための予算などが組まれました。
財務省の資料をもとに作成した「2019年度の補正予算歳出表」は以下の通りです。
歳出 | |
災害からの復旧・復興と安全・安心の確保 | 23,086億円 |
経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援 | 9,173億円 |
未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上 | 10,771億円 |
その他の経費 | 1,692億円 |
地方交付税交付金 | 7,481億円 |
既定経費の減額 | ー12,908億円 |
地方交付税交付金の減額 | ー7,349億円 |
合計 | 31,946億円 |
それぞれ解説していきましょう。
①災害からの復旧・復興と安全・安心の確保
2019年には台風の到来や首里城の火災などがありました。
そうした災害からの復旧・復興と安全・安心を確保するために
- 台風15号と台風19号の被害箇所の復旧
- 首里城復元に向けた取り組み
- 東日本大震災の被災地の復興加速化
などの予算が組まれました。
②経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援
経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援には
- 中小企業、小規模事業者への支援
- 就職氷河期世代への支援
- 地方創生の推進強化
などが含まれ、特に『中⼩企業⽣産性⾰命推進事業』に大きく予算が組まれています。
③未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上
東京オリンピック・パラリンピックの開催間近ということもあり、未来への投資を見据えた経済活力の維持・向上のために
- Society5.0の推進とSDGsの実現
- 外国⼈観光客を⾒据えた基盤整備
- キャッシュレス、ポイント還元事業による個⼈消費の下⽀え
などのための予算が組まれました。
④地方交付税交付金
地方交付税交付金とは、国から地方に交付される資金です。
財政力の差による公的サービスの地域格差を埋めるための予算組まれました。
(2)令和2〜3年(2020〜2021年)の補正予算
2020〜2021年は新型コロナウィルスの影響で、3回の補正予算が組まれました。
①第1号補正予算(2020年4月30日成立)
まずは、第1号の補正予算の歳出を見てみましょう。
歳出(第1号) | |
新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関係経費 | 255,655億円 |
国債整理基金特別会計へ繰入 | 1,259億円 |
合計 | 256,914 |
第1号の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関係経費では
- 感染拡大防止策の実施
- 医療提供体制の整備
- 治療薬とワクチンの開発
- 雇用の維持と事業の継続
などのための予算が組まれました。
また、第1号の補正予算には
- 特別定額給付金(全国全ての人々への新たな給付金):128,803億円
- Go Toキャンペーン事業:16,794億円
の予算も含まれています。
②第2号補正予算(2020年6月12日成立)
第2号補正予算では、第1号の補正予算を上回る予算が組まれました。
歳出(第2号) | |
新型コロナウイルス感染症対策関係経費 | 318,171億円 |
国債整理基金特別会計へ繰入(利払費等) | 963億円 |
既定経費の減額(議員歳費) | ー20億円 |
合計 | 319,114億円 |
第2号の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関係経費には
- 中小企業と小規模事業者の支援
- 医療提供体制の強化
- 地方創生臨時交付金の拡充
- 学校再開に伴う感染症対策
などの予算が含まれています。
①第3号補正予算(2021年1月28日成立)
最後に、第3号の補正予算の歳出を見てみましょう。
歳出(第3号) | |
新型コロナウイルス感染症の拡大防止策 | 43,581億円 |
ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現 | 116,766億円 |
防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保 | 31,414億円 |
その他の経費 | 252億円 |
地方交付税交付金 | 4221億円 |
既定経費の減額 | ー41,963億円 |
合計 | 154,271億円 |
第3号の補正予算では
- 新型コロナウイルスワクチンの接種体制の整備・接種の実施
- PCR検査・抗原検査の実施
- アフリカ、中東、アジア・⼤洋州地域への国際機関等を通じた⽀援
- 防災・減災、国⼟強靱化の推進
などの予算が組まれました。
まとめ
今回は補正予算について解説しました。
新型コロナウィルスの拡大により、2020年の補正予算額は膨らんでいました。
迅速に補正予算が組まれたことによって、多くの国民が助かっているかもしれません。
ただその予算の財源についても考える必要があります。
いま予算を割くべき政策は何なのか、しっかりと見極めていく必要がありそうです。