公聴会とは常任委員会の委員である国会議員たちが、重要案件について専門家から意見を聴くための場です。
衆議院または参議院では、審議するテーマごとに委員会をつくり、委員である国会議員が与えられたテーマについて討論や審議をします。
今回は以下についてご紹介致します。
- 公聴会とは
- 予算策定の公聴会が重要な理由
- 国家予算の用途・予算が成立するまでの流れ
本記事がお役に立てば幸いです。
1、公聴会とは
委員会の委員である国会議員たちが、重要な案件について専門的な意見を聴きたいとき、公聴会を開いて専門家を呼び意見を聴きます。
衆議院と参議院で構成される国会は、国内唯一の立法機関ですが、国会議員(委員会の委員)や官僚(省庁の職員)たちの知見だけでは、法律をつくりきれないことがあります。
そこで各委員会が公聴会を開いて、その場に専門家を呼び、意見を述べてもらうわけです。
公聴会は「よりよい法律をつくるための仕組み」とも言えます。
(1)国会法第51条
公聴会については、「国会法第51条」で定められています。公聴会を理解するうえでとても重要な法律なので全文を紹介します。
国会法第51条
第1項
委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験者等から意見を聴くことができる。第2項
総予算及び重要な歳入法案については、前項の公聴会を開かなければならない。但し、すでに公聴会を開いた案件と同一の内容のものについては、この限りでない。
出典 国会法
この条文は次のようにまとめることができます。
- 公聴会は、委員会が「一般的関心」を持ったときに開くことができる
- 公聴会は、委員会が「重要な案件」が抱えたときに開くことができる
- 公聴会に呼ぶことができる専門家とは「利害関係者」と「学識経験者」である
- 公聴会とは、委員会における専門家に意見を聴く場である
- 「総予算案」を決めるときは、公聴会を「開かなければならない」
- 「重要な歳入法案」を決めるときも、公聴会を「開かなければならない」
(2)何が行われるのか
公聴会では、具体的にどのようなことが行われているのでしょうか。
専門家(利害関係者と学識経験者)から意見を聴く、とは、要するにどういうことなのでしょうか。
例えば、衆議院の憲法調査会は、2004年に公聴会を開きました。
憲法調査会は日本国憲法について検討する機関なので、重要事案に当たります。
そのため、国会議員や官僚だけでは、話し合いを進めることができません。
また、もし国会議員や官僚たちだけで話を進めてしまったら、「ちゃんと議論したのか」と不信感を感じる方もいらっしゃるでしょう。
国会議員や官僚たちが、日本国憲法に詳しい憲法学者の意見を聴きながら議論すれば、国民も「ちゃんと話し合ったようだ」と納得でき、憲法調査会のメンバーである国会議員は、こうした人たちから話を聴きながら、「これから日本国憲法をどうするか」を考えていくことができるわけです。
(3)公述人とは
公聴会に呼ばれる専門家(利害関係者と学識経験者)のことを「公述人」といいます。
公述人は公募され、意見を述べたい人は誰でも応募することができますが、各委員会が「選定」をするので、実際には誰でも公述人になれるわけではありません。
参議院の予算委員会は2019年に、公述人を次のように公募しました。
予算委員会公聴会の公述人公募のお知らせ
1.問題:2019年度総予算について
2.日時:2019年3月12日(火曜日)午前9時
3.場所:参議院
4.申出の方法
東京都千代田区永田町1丁目7番1号(郵便番号100-8961)参議院事務局委員部気付予算委員長宛てに、意見を述べようとする理由及び本問題に対する賛否を記して文書でお申し出ください。住所、氏名(ふりがな)、年齢、職業、電話番号を明記。
5.申出の期限:2019年3月8日(金曜日)午後3時
6.出席者の選定:委員会で選定の上通知いたします。
7.旅費日当:出席者には旅費及び日当をお支払いいたします。
出典 参議院ホームページ
上記より公述人には、旅費と日当が支払われることがわかります。
公述人には有名人も選ばれます。
ワイドショーやニュース番組のコメンテーターとして知られている、三浦瑠麗氏は、2019年2月の衆議院予算委員会公聴会で意見陳述をしました。
三浦氏は「国際政治学者」や「東京大学政策ビジョン研究センター講師」という肩書を持っています。
公聴会で三浦氏は、「米中間における日本が取るべき外交の方向」というテーマで話をしました。
一見すると、国の予算(つまりお金)とは関係のないテーマに思えます。
しかし、国の予算は国際情勢に対応した内容でなければなりません。
国会議員たち(予算委員会の委員たち)が三浦氏から米中関係の現状を聴けば、より国際情勢に適応した予算をつくることができるわけです。
三浦氏の意見陳述の様子は、衆議院の公式ホームページで見ることができます。
2、予算策定の公聴会が重要な理由
「法律づくりのベース」となる公聴会はどれも重要ですが、国の予算をつくるときの公聴会は、最も重要なもののひとつです。
なぜ「最も重要」といえるのかというと、先ほど紹介した国会法第51条第2項に、わざわざ「総予算案については公聴会を開かなければならない」と明記されているからです。
総予算とは、国の予算のことです。
法律において「ねばならない」という言葉はとても強い意味を持っています。
総予算案の審議以外の公聴会は、国会法第51条第1項に規定されていますが、こちらは「公聴会を開き、意見を聴くことができる」とあります。
3、国家予算の用途・予算が成立するまでの流れ
(1)国家予算の用途
国の予算をつくるときに公聴会を開かなければならないのは、国の予算づくりがこれまた重要な議題だからです。
国の予算(お金)は、
- 社会保障
- 地方自治体の財源
- 公共事業
- 学問や教育
- 科学振興
- 防衛
- 食料の安定供給
- 中小企業対策
- 借金の支払い
などに使われます。
そして国の予算の額は、年間101兆円(2010年度当初)にもなります。
このお金を、社会保障、地方自治体の財源、公共事業、学問や教育などに振り分けていかなければなりません。
公共事業の予算を増やすには、社会保障の予算を減らさなければならないかもしれません。
その調整はかなり困難な作業といえます。
(2)予算が成立するまでの流れ
国の予算は、次のように、複雑な工程を経て成立します。
- 省庁などが「概算要求」をつくって財務省に提出する
- 財務省が「財務省原案」をつくって内閣に提出する
- 内閣が閣議という会議で「政府原案」をつくり「予算案」として衆議院に提出する
- 衆議院の議長が、予算案を「予算委員会」に渡して、審議をさせる
- 衆議院の予算委員会で「公聴会」を開いて審議する
- 衆議院で予算案を可決して、参議院に送る
- 参議院の議長が、予算案を「予算委員会」に渡して、審議をさせる
- 参議院の予算委員会で「公聴会」を開いて審議する
- 参議院が予算案を可決すると、「予算が成立」する
公聴会は、衆議院と参議院で各1回ずつ、計2回開かれます。
(3)公述人は異なる
同じ年の同じ予算の公聴会であっても、衆議院と参議院では、異なる公述人を呼びます。
幅広いジャンルの様々な役職の人を呼び、意見を聞いた上で国家予算を策定することで、誤りの無いものをつくりあげます。
これだけの専門家に意見を聴いて成立した予算であれば、国民も納得できるはずです。
国家予算の策定に関しては以下の関連記事で更に詳しく解説しています。
国家予算とは?予算案から発行までの8つのプロセスを簡単解説!
まとめ
国会とは、法律をつくる国内唯一の機関であり、また国家予算を決める場でもあります。
そこで実際に国の方針を定めるのが国会議員ですが、公聴会という場があることで、様々な観点から国の仕組みづくりを行うことができるのです。