<概要>
2月14日、文部科学省中央教育審議会に設置された「質の高い教師の確保特別部会」において、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下、「給特法」)の見直しなどの、教師の処遇改善についての議論が始まりました。
現行の給特法では、基本給の4%を「教職調整額」として一律に上乗せ支給する代わりに残業代が支払われない仕組みとなっています。そのため、長時間の時間外労働に対し正当な対価が受け取れない、長時間の時間外労働を助長しているとの指摘がありました。
処遇改善にあたり、給特法を廃止し残業代を支払う新たな制度を構築すべきという意見や、給特法を維持し「教職調整額」を現行の4%から10%以上へ引き上げるべきといった意見が挙げられています。
政府が2023年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)」では、「喫緊の課題である教師不足解消の必要性等を踏まえ、真に頑張っている教師が報われるよう、教職調整額の水準や新たな手当の創設を含めた各種手当の見直しなど、職務の負荷に応じたメリハリある給与体系の改善を行う」、「2024年度中の給特法改正案の国会提出を検討する」とされており、2024年度中に教師の処遇改善について一定の結論が出されるものと見られます。
<これまでの課題>
教育委員会が定める学校に配置する教師の数を満たしていない「教師不足」の問題が深刻化しています。
文部科学省の「教師不足」に関する実態調査では、2021年度始業日時点の「教師不足」の人数は小・中学校で2,086人、高等学校で217人となりました。
この要因として、
・産休・育休、病休者の増加
・特別支援学級の増加
・臨時的任用教員の不足
が挙げられます。
臨時的任用教員とは、正規教員に欠員が生じた際に代替として任用される教員のことで、これまで慣例として教員採用試験で不採用となった人が任用されてきました。しかし、教員採用試験の受験者数の減少、団塊の世代の離職に伴う新規採用の増加などで正規採用率が高くなり、臨時的任用教員のなり手が不足するようになりました。
また、教員採用試験の受験者数の減少に関しては、長時間労働や待遇への不満が背景にあると見られ、岐阜県教育委員会が学生を対象に行った調査では、教師にならなかった理由として79%が「休日出勤や長時間労働のイメージがある」、64%が「職務に対して待遇(給与等)が十分でない」と回答しました。
<これまでの取り組み>
・2019年、文部科学省に「学校における働き方改革推進本部」を設置
・2019年、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」を改正し、勤務時間の上限に関するガイドラインを「指針」に格上げ
・2021年、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律を改正し、小学校の学級上限を40人から35人へ変更
・2023年、文部科学省「質の高い教師の確保特別部会」が「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」を取りまとめ
・2023年、文部科学省が「全国の学校における働き方改革事例集」を公表
<論点>
・多くの職種において賃上げが進む中、教師の待遇改善については議論が始まったばかりで、改善までに時間がかかる見通しです。
・文部科学省が行った「教員勤務実態調査(令和4年度)」では、国が残業の上限として示している月45時間を超えるとみられる教員が、中学校では77.1%、小学校では64.5%に上り、長時間労働が解消されていないことが指摘されています。
(参考)
・文部科学省「令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント」
・文部科学省「小学校における35人学級の実現/約40年ぶりの学級編制の標準の一律引下げ」
・文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】について」
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