<概要>
岸田内閣では「新しい資本主義」の経済政策において、国民の所得向上を目指しています。
2月16日、岸田総理大臣は「物流革新・賃上げに関する意見交換会」に出席しました。この会議では、「2030年度に向けた政府の中長期計画」が取りまとめられ、適正運賃のための法改正や物流効率化、高速道路の利便性向上などの施策が盛り込まれました。
特にトラックドライバーの賃上げについて、岸田総理は、トラック運送業の標準的運賃を8%引き上げるとともに、貨物の搬入・搬出や下請手数料などの各種経費を新たに加算できる措置を講じることで、10%前後の賃上げが期待できると述べました。
また、2024年2月に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が閣議決定されており、今国会での成立を目指しています。
<これまでの課題>
慢性的な人手不足やEC市場の急成長に伴う物流量の増加に伴い、トラックドライバーの長時間労働が深刻化していたことから、2018年、「働き方改革関連法」と呼ばれる一連の労働法改正が行われました。これにより、自動車運転業務を対象とした時間外労働の上限規制が行われるとともに、自動車運転者の労働時間等の改善基準告示が見直され、拘束時間の短縮、1日の休息時間の延長などが行われました。
これらが2024年4月に施行されることに伴い、物流の停滞が懸念される「2024年問題」が指摘されています。何も対策を行わなければ、2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力が不足すると予測されています。
2024年4月から適用するとした変更点は以下の通りです。(一部抜粋)
・1ヶ月の拘束時間:
2024年3月31日まで:原則293時間(労使協定により延長が可能)
2024年4月1日以降:原則284時間(労使協定により延長が可能)
・1日の休息時間
2024年3月31日まで:継続8時間
2024年4月1日以降:継続11時間を基本とし、9時間を下回らない
・月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率
2024年3月31日まで:割増賃金率は25%
2024年4月1日以降:割増賃金率は50%
<これまでの取り組み>
・2018年、働き方改革関連法案と呼ばれる一連の労働法改正が成立。
・2022年、国土交通省で「持続可能な物流の実現に向けた検討会」が設置。
・2023年、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を設置し、「物流革新に向けた政策パッケージ」を閣議決定。
<論点>
・2024年4月に施行の「2024年問題」に対して、一部の企業では準備が整っておらず、人手不足や賃上げの是正を迅速に進めていくことが必要です。
・賃上げを図るものの、取扱いの荷物量に一層の上限が生まれるため、民間企業の利益に大きな影響を与えます。結果として、ドライバーの給与に反映されると同時に残業代が減り、生活レベルが維持できず、人員流出が起こることが危惧されています。
・メーカーや小売などの在庫を持たない効率化を図った販売のモデルでは、欠品等が起こる可能性があり、物流以外の業界の理解が求められています。
(参考)
・首相官邸「物流革新・賃上げに関する意見交換会」
・内閣官房「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」
・国土交通省「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定」
・厚生労働省「トラック運転者の改正基準告示」
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