訴訟(そしょう)とは、裁判によって個人と国家、または個人間の紛争を法的に解決する手続きです。
訴訟には4つの種類があり、調停という制度も存在します。
今回は
- 訴訟とは
- 訴訟の4つの種類
- 調停と訴訟
についてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
三権分立について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
1、訴訟とは?
訴訟(そしょう)には
- 訴えを起こす、裁判を申し立てる
- 争いのある当事者同士を公権力(裁判権)によって解決に導く
という意味があります。
(1)訴訟の概要
例えばAさんとBさんがある出来事で揉めていたとします。
紛争(揉めごと)を平和的に解決するためには、AさんとBさんのそれぞれの主張を聞き、両者の言い分を公正に判断する必要があります。
そうした判断を行うのは裁判官であるCさんです。
Cさんの判決により、どちらに問題があるかを決め、場合によっては罰の内容も決め、揉めごとに決着をつけます。
もし、Bさんが一方的に悪い場合でも、Aさんが直接危害を加えることは許されません。
このように両者の主張を公平に判断し、場合によっては法的に適切な罰を決め、問題を解決する手続きが「訴訟」になります。
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(2)裁判所がもつ権限
訴訟についての理解を深めるためには裁判所がもつ
- 司法権
- 裁判権
- 公権力
について知っておくとよいです。
それぞれについて解説していきましょう。
① 司法権
画像出典:裁判所の役割とは 政府広報オンライン
司法権とは、立法権、行政権と並ぶ国家作用の1つです。
三権分立という言葉に聞き覚えがある方も多いと思います。
司法権の目的は、さまざまな紛争を法律で解決に導くことです。
上記の3つの権力はそれぞれ独立し(三権分立)、裁判の判断はどの権力からも干渉されることはありません(司法権の独立)。
② 裁判権
裁判権は、裁判所が裁判を行う上で必要な権利です。
具体的には
- 当事者の裁判への拘束
- 証人の呼び出しと尋問
- 鑑定人の呼び出しと尋問
などができる権利です。
また、執行の権利も裁判権です。
裁判権には、「民事裁判権」と「刑事裁判権」があります。
民事裁判権とは、私人間の紛争や利害衝突を裁判によって強制的に解決できる権利です。
刑事裁判権とは、犯罪事実に基づき、刑罰または処分を定める権利を指します。
③ 公権力
公権力とは、国が国民に対して持つ強制力のある権限です。
公権力を持つ代表的な組織は裁判所のほかにも警察、検察、税務署、などがあります。
2、訴訟の4つの種類
訴訟には主に
- 民事訴訟(みんじそしょう)
- 刑事訴訟(けいじそしょう)
- 行政訴訟(ぎょうせいそしょう)
- 憲法訴訟(けんぽうそしょう)
の4つの種類があります。
裁判と聞くと、被告人に判決を下す刑事訴訟のイメージが強い人もいるかもしれません。
しかし、それぞれの訴訟によって扱う問題が異なります。
それぞれの訴訟について見ていきましょう。
(1)民事訴訟
民事訴訟とは、個人間の紛争を解決するために行われる裁判です。
主に財産権などに関する問題を扱います。
例えば
- 交通事故の損害賠償
- 貸金(かしきん)の返還
- 不動産の明け渡し
などが民事訴訟で扱われる紛争です。
- 婚姻関係
- 親子関係
- 養子関係
の紛争については人事訴訟と呼ばれますが、民事訴訟の中に含まれます。
参考:民事訴訟 裁判所
参考:人事訴訟手続 裁判所
(2)刑事訴訟
刑事訴訟とは、犯罪の疑いがかけられている被告人と疑いをかけている検察を当事者として、裁判所が犯罪の事実を審理する裁判です。
犯罪の事実があった場合は、刑罰権が行使されます。
刑罰権とは、国家が犯罪者に刑罰を下す権利のことです。
刑事訴訟の簡単な流れは以下のようになります。
- 事件発生後、第1次捜査機関である警察が捜査を実施
- 事件を第2次的捜査機関である検察に共有
- 被疑者を逮捕
- 裁判
よりくわしい刑事訴訟の流れが知りたい方は以下の法務省のページを参考にしてみてください。
裁判の流れが知りたい!裁判がどのように行われるか簡単解説
(3)行政訴訟
行政訴訟とは、国(行政官庁)を相手にした裁判です。
前述の通り、国の機関は公権力という強制力のある権限を持っています。
公権力の役割の1つは法秩序の維持です。
しかし、場合によっては適切に行使されないこともあります。
そこで、国(行政官庁)の権限行使に対して審議を行い、結果によってはその行使の取り消しまたは変更を求めることのできる裁判が行政訴訟です。
国が当事者となるため、裁判には「訟務検事」という代理人が参加します。
訟務検事は法務省または法務局に所属し、訟務検事を務めるのは検察官、裁判官、弁護士の経歴を持つ法律事務従事者です。
参考:訟務局 法務省
行政訴訟に関しては以下の関連記事でより詳しく解説しています。
(4)憲法訴訟
特定の法律または行動が憲法に違反していないかの審議を行う裁判が憲法訴訟です。
我が国の最高法規は憲法です。
そのため、法律や国のあらゆる行動(国務)は憲法に違反することはできません。
もし違反していた場合はすべて無効となります。
そして日本国憲法81条から、合憲か違憲かの最終的な判断は、最高裁判所によって行われることが定められています。
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
引用:日本国憲法
こうした役割から最高裁判所は「憲法の番人」と呼ばれています。
3、調停について
訴訟について解説してきましたが、紛争の解決には「調停」という手続きもあります。
調停とは、当事者同士の合意によって紛争の解決を図る裁判外紛争解決手続の1つです。
それでは調停についてより詳しく見ていきましょう。
(1)調停の種類
調停の種類には
- 民事調停
- 家事調停
- 特定調停
があります。
- 民事調停では、個人間の紛争
- 家事調停は、家族間の紛争
- 特定調停では、多重債務の問題
が対象です。
民事調停と特定調停は「簡易裁判所」で行われ、家事調停は「家庭裁判所」で行われます。
民事調停では
- 不動産の敷金が返済されない
- アルバイト代が払ってもらえない
などの日常的な問題も扱います。
画像出典:若い人にも知ってほしい!民事調停で円満解決 裁判所
(2)調停のメリット
調停には
- 訴訟と比べて手続きが簡単
- 訴訟と比べて申立手数料が安い
などのメリットがあります。
手続きが簡単で手頃な調停ですが、話し合いによる合意には訴訟と同じ効力が発生します。
話し合いがまとまらない場合、調停は不成立となり、そのまま訴訟を求めることも可能です。
これらのメリットから、長期化する裁判での被害者の精神的なケアを考慮し、刑事裁判での活用も始まっています。
(3)調停の流れ
画像出典:民事調停手続 裁判所
民事調停では、裁判官1名と調停委員2名以上の調停委員会がサポートします。
画像出典:第1回調停のはじまり 裁判所
調停手続きの申し立てを行い、調停期日に話し合いがスタートします。
話し合いとはいえ、それぞれが個別に部屋に呼ばれ、待合室も分かれていることが一般的です。
夫婦間の家事調停では子どもを交えた調停も実施されています。
よりくわしい調停の流れを知りたい方は、以下のページを参考にしてみてください。
訴訟に関するQ&A
Q1.訴訟は何種類ある?
訴訟には主に以下の4つがあります。
- 民事訴訟(みんじそしょう)
- 刑事訴訟(けいじそしょう)
- 行政訴訟(ぎょうせいそしょう)
- 憲法訴訟(けんぽうそしょう)
Q2.調停は何種類ある?
調停には以下の3つがあります。
- 民事調停
- 家事調停
- 特定調停
Q3.調停のメリットは?
調停のメリットとして以下が挙げられます。
- 訴訟と比べて手続きが簡単
- 訴訟と比べて申立手数料が安い
まとめ
今回は訴訟について解説しました。
難しい印象のある訴訟ですが、トラブルを公正に解決する有効な手続きです。
取り扱う問題によって、訴訟の種類が変わってきます。
穏便に解決したい場合には、調停という手続きを利用するのもよいでしょう。