
青柳 仁士 あおやぎ ひとし 議員
1978年11月7日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、
米・デューク大学公共政策大学院修了。
国際協力機構(JICA)職員、国際連合の広報官をへて、
大阪維新の会・維新政治塾1期生。
日本維新の会結党に参画。2021年衆議院議員初当選(大阪府第14区、2期目)。
7月20日に第27回参議院議員選挙が迫っています。
株式会社PoliPoliでは、参議院議員選挙の主要な政策上の争点を明らかにし、各党の政策を分かりやすく有権者に届けるための特集企画を実施します。今回は、日本維新の会で政務調査会長を務める青柳仁士議員に、日本維新の会が参議院議員選挙で訴えている社会保険改革を中心に、選挙公約のポイントについてお伺いしました。
(※所属する国会議員が5人以上または直近の国政選挙での得票率が有効投票総数の2%以上という公職選挙法上の政党要件を満たす、すべての政党にインタビューの打診をしております)
(取材日:2025年7月3日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)
参議院議員選挙で訴えたいのは社会保険料の引き下げ
ー今回の選挙では「社会保険料を下げる改革」を全面的に打ち出しています。日本維新の会は、昨年の臨時国会以来、積極的に社会保険料の引き下げを打ち出し、与党とも協議を進めていますが、これまでの進捗について教えてください。
まず、社会保険料こそが、国民の皆さんの収入を減らしている最大の要因です。
現在、国民負担率が50%近くに達しており、これは給料の約半分が税金と社会保険料の支払いに消えていることを意味します。
例えば、年収350万円の方の場合、所得税は約7万円ですが、社会保険料はご自身で約50万円を負担。更に事業主も同額の50万円支払っており、合計で100万円が社会保険料として支払われています。これではいくら賃上げをしても手取りが増えません。可処分所得を増やすためには社会保険料を引き下げる改革が必要です。
私たち日本維新の会は自民党に継続的に提案を行い、最終的に「余剰病床11万床の削減」に合意しました。これにより今後2年間で1兆円、それ以降も毎年5000億円の財源を生み出すことができます。医療が崩壊する、という批判もありますが、OECD先進国の平均に比べ、日本の国民1人当たりの病床数は3倍もあり、過剰な状態です。病床の維持だけでコストがかかり、現役世代の社会保険料が投じられています。医療の質を落とすことなく、変えられる部分は数多くあります。
目を向けるべきは、国の財政全体における医療費の現状です。現在の国民医療費は年間47兆円にのぼり、国の当初予算(約115兆円)の約4割を占めています。さらに、2040年までには80兆円へ膨れ上がると予測されており、今でも毎年1兆円ずつ増え続けています。
このような制度は持続可能ではありません。これを分かっているのに、与党は変えられないのです。自民党は年間7億円も医師会から政治献金を受けています。お互い持ちつ持たれつの関係があるからです。維新は結党以来、企業・団体献金の受け取りを禁止してきました。だから改革ができます。それを今までもやってきましたし、これからも訴えていきたいです。
ー社会保険改革について、年間4兆円の医療費削減、現役世代1人当たり年間6万円の負担減を主張されていますが、その意図を教えてください。
毎年1兆円ずつ増え続ける国民医療費を、まずは「増加」から「減少」へと転換させるためです。数千億円規模の削減では焼け石に水であり、思い切った改革の第一歩として、我々は4兆円の削減を掲げています。
掲げている4兆円という数字は、現時点で与党との協議を進めてきた中で現実的に早期に削減できる項目を積み上げてきた金額です。医療保険制度別の収支を見てみると、後期高齢者の方の医療費の4割の6.5兆円が後期高齢者支援金、5割の7.9兆円が公費です。後期高齢者支援金は誰が出しているかといえば、物価高の中で手取りが上がらず、これ以上は無理だと言っている現役世代です。公費の原資になる部分についても現役世代も負担しています。自分達の稼いだお金を自分達の懐に残してもらうために、まずは4兆円の医療費を削減し、現役世代一人あたり年間「6万円」の負担を確実にお返しすることを訴えています。
ー4兆円という数字はかなり大きな金額ですが、現実的な数字なのでしょうか?また、増え続ける医療費に対応するために、更に5兆円、6兆円と削減は可能なのでしょうか?
日本維新の会としては、社会保険料を下げる改革の具体案について現時点で全26項目を提示しており、全てを実行すれば更に上積みすることができ、現状お示しした年間約4兆円を優に超える額の削減につながると考えています。現在は5項目について与党と議論しており、この5項目でも最大4兆円程度の削減にはなります。自民党と公明党とで行っている協議の中で、我々の提案書は既に合意に至っており、5項目は政府の「骨太の方針」に盛り込まれています。
はじめから10数兆円という挑戦的な数字で攻めずに、現実的な第一歩の数字として4兆円に留めています。
その4兆円の具体策として、先にお話しした11万床の病床削減で1兆円、湿布などの市販薬と成分や効果がほぼ同じOTC類似薬への保険適用見直しの実行で最大1兆円の削減になると民間で試算されています。また、現在の「骨太の方針」の中にある、地域フォーミュラリ(地域の疾病率や医薬品の使用状況などを加味し各地域に最適化した処方をガイドラインとして運用する制度)も全国に普及すれば最大で1兆円程度の削減効果が出るとする試算もあります。
そして、電子カルテの普及には大きな効果が期待できます。日本の普及率は約50%ですが、欧米諸国では100%に近い国もあり、普及率が低い国でも70~80%と考えると、日本は著しく遅れています。
医療を受ける国民の中には、6種類以上の薬を飲む、ポリファーマシー(多剤投薬)の状態にある方が少なくありません。日本で保険適用されている薬の中には、欧米では保険適用されていない、効果が疑問視される薬も複数あります。そのような効果の薄い薬も、保険適用で大量に処方されています。その財源には現役世代が支払った社会保険料が使われています。
電子カルテで投薬状況をデータ化・分析すれば、こうした無駄をなくすことができ、その削減効果は数兆円規模に達するポテンシャルを秘めています。
社会保険料を下げることが成長戦略であり、物価高対策
ー今回の参議院選挙では、減税と給付のどちらか、という論調が多いと感じます。日本維新の会は食料品に限定して消費税を2年間ゼロとすることを公約にしていますが、これは物価高対策という理解でよいでしょうか?
我々日本維新の会が最も重要だと主張しているのは、「社会保険料を下げる改革」です。社会保険料こそが問題解決の「センターピン」だと考えているからです。ボウリングの中央のピンを倒せば、残りのピンが次々と倒れるように、この社会保険料というセンターピンを倒すことで、様々な問題が解決へと向かいます。日本の経済成長が長年停滞している原因も、社会保障制度にあるのです。このため、社会保険料を下げる改革が日本の成長戦略であり、物価高対策でもあり、既得権の打破にもつながります。
その上で、物価高対策については目先の対策として、給付か減税かと問われれば、減税です。今回の参議院選挙前に与党から突如、2万円の給付案が出てきました。しかし、そもそも配るくらいなら、最初から集めなければいい。選挙対策というのなら、選挙という行為を軽視しています。選挙とは、少子高齢化に対する社会保障制度をどうするかなどの、大事な政策について国民の声を聞き、民意を得て国会でそれを実現する機会ではないでしょうか。少なくとも日本維新の会は大阪でその姿勢を貫き、皆さんからの支持を得てきました。
減税については、食料品や生活必需品、そしてガソリン減税などを選択的に行うことを主張しています。また、低所得で働く方々の税負担を軽減する「勤労税額控除」の拡充も提案しています。
ただし、繰り返しになりますが物価高対策に本気で取り組むなら社会保険改革です。先ほども申しましたが、年収350万円の人にとって所得税は7万円ですが、社会保険料は50万円です。税金よりも社会保険料を減らした方が、手取りは増えることは明らかです。
外交では積極防衛能力の整備を進めたい
ー外交と安全保障について伺わせてください。有権者からは、野党がどのように外交や安全保障問題に取り組んでいるのか見えにくい部分があります。その点について、日本維新の会はどのような外交・安全保障活動をされていくのでしょうか?
現在、私は政務調査会長を務めていますが、その前は党の国際局長でした。日本維新の会では毎年、世界各国へ議員団を派遣しています。一昨年はアメリカ、昨年はインドを訪問しました。アメリカではホワイトハウスの防衛関係者や、民主党・共和党双方の議員と直接対話を行いました。また、彼らが来日した際には勉強会や食事会を共にするなど、継続的な関係構築に党として力を入れています。
私自身、JICAや国際機関の職員として海外で活動した経験から、外交政策は、政権が変わったからといって安易に大きく動かすべきではないと考えています。海外との約束や関係性を政権交代のたびにリセットしていては、日本という国そのものへの信頼が失われてしまいます。これは、いかなる政党が政権を担っても守るべき原則であり、よく言われる「外交は与党にしかできない」という言葉は、本質を捉えていないのではないでしょうか。
ー外交は大きくは変えられない、とのことですが、今の日本の外交・安全保障において、変革すべき課題は何でしょうか?
外交は歴史的な関係性に基づく相手のある話ですので、政策全体を10とすれば、そのうちの8か9までは、実際のところどの政党が政権を担ってもすぐに大きく変わることはありません。多くの部分は、外務省や防衛省といったプロフェッショナルな行政組織が継続性を保ちながら進めていくことになります。重要なのは、残りの変え得る部分をどう考えるかです。
私たち日本維新の会は、「積極防衛能力」の整備を一貫して主張しています。今の自民党は、規制すべきところを規制していません。例えば、日本ほど外国人が簡単に土地を買える国は先進国にありません。また、帰化の要件が緩やかすぎることや、先進国として当然あるべきスパイ防止法が存在しないことも大きな問題です。
「自分の国は自分で守る」という当たり前のことができる体制を外交・防衛の両面から整備していきます。
アピールするだけでなく、しっかりと政策を実行したい
ー最後に現役世代に対するメッセージをお願いいたします。
今、働く人の4割が非正規雇用という統計があります。私も氷河期世代ですが、政治は今まで氷河期世代や非正規雇用で働く方々の声をしっかり聞いてこなかったのではないでしょうか。
物価高で生活の節約を余儀なくされている方たち、子どもをもう1人欲しいけれど経済的に難しいと感じている方たちが多くいることに、政治はしっかりと向き合ってこなかったのではないか、と私は感じています。
日本維新の会は大阪ではそうした声にしっかりと向き合い、様々な改革を進めてきたからこそご支持をいただいています。日本全体としても、現役世代の働く皆さんの声をしっかりと受け止めて、その声を聞いてそれに応えていく、正直な政治が必要です。
アピールするだけではなく、しっかりと政策を有言実行していく、そこにこだわってやっていくことが政治には必要です。私たちはその姿勢で、政府与党と議論し、教育の無償化や社会保険料を引き下げる改革も一定程度行ってきました。現役世代の声を受け止めて、それに対してちゃんと答えを出して実現する。これが我々の日本維新の会の特徴であり、信念でもあります。今後も行動で示して、結果で皆さんにお答えしていきたいと考えています。