
岡本 三成 おかもと みつなり 議員
1965年佐賀県鳥栖市出身。米ケロッグ経営大学院(経営学修士)修了。
ゴールドマン・サックス証券を経て、2012年衆議院議員選挙に初当選(5期)。
財務副大臣などを歴任。2024年9月より公明党政務調査会長。
7月20日に第27回参議院議員選挙が迫っています。
株式会社PoliPoliでは、参議院議員選挙の主要な政策上の争点を明らかにし、各党の政策を分かりやすく有権者に届けるための特集企画を実施します。今回は、公明党で政務調査会長を務める岡本三成議員に、公明党の選挙公約に込めた思いや公約のポイント、そして今回の参議院議員選挙の位置付けなどについてお伺いしました。
(※所属する国会議員が5人以上または直近の国政選挙での得票率が有効投票総数の2%以上という公職選挙法上の政党要件を満たす、すべての政党にインタビューの打診をしております)
(取材日:2025年7月3日)
(文責:株式会社PoliPoli 中保友里)
「減税か給付か」ではなく、できることは何でもやる
ー7月3日に参議院議員選挙が公示されましたが、意気込みを聞かせてください。
選挙戦で私たちの訴えを有権者の皆さんにしっかりとお伝えし、目標としている選挙区7議席、比例区7議席を必ず勝ち取れるようにがんばります。
ー今回の選挙では、やはり物価高対策が最大の争点になりそうですが、公明党としてはどのような方針を立てられているのでしょうか。
やはり一番の物価高対策は、物価上昇を乗り越えるだけの強い経済、そして安心できる社会保障を構築することだと思っています。よく「減税か給付か」という議論がありますが、有権者の方に話を聞くと「そんな議論はどうでもいいから、私たちが生きていけるように、できることは何でもやってほしい」という声が返ってきます。これが普通の感覚ですよね。だから、私たちは減税も給付も、さらにはそれ以外にも、とにかく結果が出せる施策には何でも取り組んでいきたいと考えています。
ー減税に関しては、いわゆる「103万円の壁」を160万円に引き上げる議論がありましたが、これは今後も引き上げていく方針なのでしょうか。
そうですね。もともと公明党と自民党、国民民主党の三党協議で、赤字国債で将来に負債を残すことなく減税できるようにと引き上げたのが160万円です。その形で法整備もしたのですが、物価が上がるたびにこのような議論をしていたら対応できないので、物価上昇に合わせて課税最低額を引き上げていけるような法律になっています。さらに、子育て世帯は可処分所得をより増やしていかなければならないため、扶養控除も見直さなくてはなりません。
ー給付に関しては2万円の「生活応援給付」を打ち出されています。
物価高を細かく見ていくと、いわゆる消費者物価指数の上昇は全体で3.7%くらいです。しかし、エネルギーと食料の上昇率が高く、食料は2025年5月までの半年間で約7%も上がっています。総務省の家計調査によると、酒類を除く1人あたりのスーパーマーケットでの食料購入が年間約27万円なので、その7%にあたる2万円を一旦お渡しする形です。
また、賃上げや所得税減税の恩恵が必ずしも及ばない方々は、1人あたり4万円とする方針です。具体的には18歳以下のお子さんや、働きたくても働けない方、住民税非課税世帯などです。これらの施策を決めていく過程の議論は党のYouTubeチャンネルでも公表していますので、ぜひご覧になってください。
ー国民の負担軽減という点では、社会保険料も争点になっていますが、どのようにお考えでしょうか。
社会保険料を下げたい、という思いは当然あります。ただ、これに関しては公明党、自民党、日本維新の会の3党でも協議してきましたが、1つの施策で解消できるものではありません。その中で1つ、私たちが重視しているのが医療改革です。DXによって医療機関のコスト効率を上げることも、そのひとつです。
さらに重要なのは、予防医療を推進して重症化する患者を減らすことです。例えば、がんはアーリーステージで発見すれば完治できる病気になりつつあります。早く治療して元気に過ごせる期間を増やせば医療費も全体として下がり、その結果として社会保険料も下がるのです。このような好循環を作っていきたいと考えています。
高い志をもって学ぶ人が奨学金の返済で苦しまないために
ー独自の施策として、奨学金の負担軽減に向けた取り組みもされていますね。
これは、公明党がWeb上でご意見やご要望を募集する「We connect」に寄せられたコメントがきっかけです。合計で12万件を超えるご要望が寄せられたのですが、その中に「奨学金の返済が大変だ」という声が数多く見られました。
奨学金を返済している方、つまり借りている方というのは、経済的に苦しい中でも「自分の将来を自分で切り開くために、お金を借りてでも学びたい」という方たちです。本当に志が高いと思います。だからこそ、そのような方々が自分の望んだ人生を無理なく歩んでいけるような支援は絶対に必要なのです。
具体的な施策として2つの支援を行ってきましたが、これらは公明党が作ったものです。ひとつは「減額返済」という制度で、社会人として働き始めた最初の一定期間は返済額を減額する、というものです。その分、返済期間が延びることになりますが、金利の増加分は国が負担します。
もうひとつは、勤務先の企業が従業員に代わって奨学金を返済する「代理返済」制度です。企業は、従業員の奨学金を肩代わりした場合、法人税の控除が受けられます。この制度を導入することで優秀な人材の獲得が期待できますが、現状では導入企業が全国で約3500社に留まっており、まだまだ周知が必要です。
これらの施策に加えて、奨学金を年末調整の控除の対象とし、返済した奨学金に応じて所得税が軽減されるような仕組みも取り入れていこうと考えています。
成長投資のための政府系ファンドを創設
ー国際情勢も国民の大きな関心事のひとつです。ロシアとウクライナの戦争や中東情勢など、さまざまな外交問題がある中で、与党としてどのような方針をお持ちでしょうか。
国際関係は日々、厳しさを増していると言わざるを得ません。私が議員になった2012年には考えられないようなことが起こっています。ただ、その中でも日本が果たせる役割は非常に大きいと思っています。例えば中東情勢。日本はイスラエルとイランの両国と友好な関係を築いている数少ない国です。この立場を生かして両国に平和と安定を呼びかけていけば、日本の国際的なプレゼンスも上がるはずです。
残念ながら、国連の安全保障理事会が期待通りに機能していないので、安全保障理事会の改革も行っていく必要があります。安全保障理事会には、2年ごとに交代する非常任理事国がありますが、これをもっとも多く務めているのが日本なのです。ですから、主要な国と一緒に国連改革を推し進め、常任理事国のひとつに入っていくべきです。また、国連が機能しないときでも、G7などの枠組みで日本が主導的な役割を果たせる部分は大きいと考えています。
ー今のように、物価高など国内に大きな問題があると、外交への関心が薄まってしまう側面もあるのではないでしょうか。
その通りです。ただ、外交については国民の皆さんに知っていただきたい重要なことが2つあります。ひとつはアメリカとの関税交渉ですが、これが長引くほど景気後退と物価上昇が同時に起こるスタグフレーションに陥る可能性が高まります。今、物価高の中で賃金が下がるような状況だけは避けなければならないので、アメリカとの関係は皆さんにとっても非常に重要な政治テーマです。
もうひとつは、アメリカとの関係性をより強固にしていくためには、他国とのネットワークを強化することも重要です。その一環として、今年の3月にイギリスを訪問し、中曽根政権時代に始まった「日英21世紀委員会」という政治対話フォーラムを通じて外交を活発化させていく議論をしました。そして、米国離脱後のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)において世界経済の拡大に向けた議論を進めています。
このように、外交は国内の経済、ひいては国民生活に大きな影響を及ぼすものなので、私たちもしっかりと前に進めるべく努力しています。
ー外交と国内経済との関係でいうと、エネルギー安全保障も重要なテーマになりますね。
そうですね。日本に輸入される原油の85%はホルムズ海峡を通って運ばれるので、イランが海峡を封鎖すると大変なことになります。海外で何が起こっても安心してエネルギーを使えるようなベストミックスを模索することは非常に重要なのです。その中で私が注目しているのが核融合エネルギーです。これは小さい太陽を作るようなもので、無限に近いエネルギー源となる夢のような技術です。この技術には世界各国も投資をしていて、日本のスタートアップも技術的に大きく貢献しています。このような次世代の技術は国としてもしっかり後押ししていく予定です。
ー先ほどの減税や給付金もそうですが、成長投資には財源も必要です。この点はどのようにお考えですか。
政府与党と官民合わせて今後5年間で60兆円の投資を計画しています。この中には設備投資もあれば人材投資、研究開発投資もあります。これらの財源として私たちが新たに作ろうとしているのが日本版のソブリン・ウェルス・ファンド(政府系ファンド)です。日本が持っている資産を運用して、そのリターンを財源にして国をさらに豊かにしていくものです。
海外の例で言うと、シンガポールでは昨年の予算の20%にあたるリターンを生んでいます。日本は資産の規模もノウハウも圧倒的に高いので、ぜひこれを実現したいと考えています。
生き方の選択肢を増やすのが政治の役割
ー最後に、このメディアの主な読者である20~40代の現役世代に向けてメッセージをお願いします。
私たちは物価高を乗り越える強い経済と、将来の不安を少なくするための社会保障の両方が大切だと思っています。そのために減税や給付、奨学金返済の負担軽減などに取り組みますが、加えて未来に対する投資にも相当な力を入れていくつもりです。
投資をすればするほど減税になり、キャッシュフローが回って労働環境の改善や賃金の上昇で未来が明るくなる。そんな循環を通して、一人ひとりの生き方の選択肢を増やすことが政治の役割だと考えています。
もちろん、私たちの価値観を押し付ける、ということではないので、国民の皆さんそれぞれの価値観で多様な選択肢の中からベストな選択をして人生をエンジョイしていただきたい。それができるような日本を作っていきたいと思います。