住民基本台帳とは、住民票をもとにつくられた電子化された住民情報です。公的な事務処理の基礎として使われています。
住民基本台帳と住民票、住民基本台帳カードとマイナンバーカードにはどのような違いがあるのでしょうか?
本記事では
- 住民基本台帳と住民票の違い
- 住民基本台帳ネットワーク
- 住民基本台帳カードとマイナンバーカードの違い
- マイナンバーカード促進に向けた取り組み
について解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、住民基本台帳とは
住民基本台帳とは、住民票の情報が電子化された情報です。
住民の基本となる情報がまとめられています。
- 住民基本台帳に記載されている情報
- 住民票と住民基本台帳の違い
について解説していきましょう。
(1)住民基本台帳に記載されている情報
住民基本台帳に記載されている情報は以下の通りです。
- 氏名
- 生年月日
- 男女の別
- 住所
- 世帯主の氏名及び世帯主との続柄
- 戸籍の表示
- 選挙人名簿への登録の有無
- 国民健康保険の被保険者の資格に関する事項(資格を取得した日等)
- 介護保険の被保険者の資格に関する事項(被保険者となった日等)
- 国民年金の被保険者の資格に関する事項(被保険者の種別等)
- 児童手当の受給資格に関する事項(児童手当の支給を開始した日等)
- 住民票コード
これらの情報は住民票をもとに作成されています。
(2)住民基本台帳と住民票の違い
住民票は、地域に住んでいることを証明するための書類です。
住民基本台帳は、地域に住んでいる住民の住民票をまとめた書類になります。
基本的に住民票は本人証明書として使われることの多い書類です。
例えば、自動車免許証の申請や賃貸の契約には身元を証明する住民票が必要で、なりすましなどの犯罪を防いでいます。
一方、住民基本台帳は公的な事務処理のために使われる書類です。
公的な事務処理には
- 選挙人名簿の登録
- 国民年金
- 国民健康保険
などの手続きが含まれています。
参考:住民基本台帳、住民票とは何ですか? 柏崎市
免許関係申請手続きについて 国土交通省 運転免許証の不正取得 警視庁
2、住民基本台帳ネットワークとは
住民基本台帳ネットワークとは、住民基本台帳がネットワーク化されたもので、住民基本台帳を市町村・都道府県・国(全国)で共有するためのシステムです。
住基ネットとも呼ばれます。
住民基本台帳に記載されている
- 氏名
- 住所
- 性別
- 生年月日
- 個人番号
- 住民票コード
- 上記の変更
の情報がネットワークで共有されます。
以下は、総務省の住民基本台帳ネットワークの図です。
ネットワークで本人確認情報を共有することで行政手続きの効率化を実現しています。
画像出典:住民基本台帳のネットワーク化 住民基本台帳等 総務省
(1)住民基本台帳ネットワークのメリット
住民基本台帳ネットワークのメリットは、スピーディーな手続きです。
パスポート申請で例を挙げてみましょう。
住民基本台帳ネットワーク導入前は、パスポート申請には住民票の写しが必要でした。
パスポートの申請先であるパスポートセンターが住民票の写しで本人確認をするためです。
住民基本台帳ネットワーク導入後は、パスポートセンターが住民基本台帳ネットワークを使って申請者の本人確認ができるようになったため、住民票の写しは不要になりました。
画像出典:住民票の写しの提出の省略(年間約500万件) 住基ネットでできるようになったことは? 総務省
(2)住民基本台帳ネットワークのデメリット
住民基本台帳ネットワークのデメリットは、個人情報の悪用や漏洩のリスクです。
インターネットを使って情報を共有するため
- ハッカー等の攻撃による情報漏洩と悪用
- 職員による情報漏洩と悪用
などの危険性があります。
また、個人情報をまとめて管理するため、プライバシーの保護を問題視する声もあります。
総務省では、セキュリティとプライバシーのデメリットを解消するために
- 操作者用ICカードとパスワードで操作者を限定する
- 行政機関の職員等に守秘義務と刑罰を設ける
- 通信の際にはデータを暗号化する
などの対策を実施しています。
2002年8月の稼働以来、住民基本台帳ネットワークへのハッキングや情報漏洩などは発生していません。
3、住民基本台帳カードからマイナンバーカードへ
住民基本台帳カードとは、住民基本台帳に記載されている情報等が保存されているICカードです。
インターネットを使った税金の手続き(e-Tax)や、身分証明書として利用できます。
しかし、2016年1月からのマイナンバーカードの運用開始に伴い、2015年12月で住民基本台帳カードの新規交付と更新は終了しました。
(1)住民基本台帳カードとマイナンバーカードの違い
住民基本台帳カードとマイナンバーカードの違いは、用途と搭載機能の違いです。
それぞれ解説していきましょう。
① 用途の違い
住民基本台帳カードは身分証明証としての利用が中心になります。
一方、マイナンバーカードには身分証明証+αの機能があり、
- 仕事
- 育児
- 病気
- 年金
- 災害
などの場面で利用が可能です。
NEC、NTTcomなどでは、マイナンバーカードを社員証として活用しています。
参考:住民基本台帳カードはマイナンバーカードに切り替わりました 横浜市
知っておきたいマイナンバーカードの基礎知識 総務省
民間事業者におけるマイナンバーカードの活用 総務省
② 搭載機能の違い
マイナンバーカードには、
- 署名用電子証明書
- 利用者用電子証明書
が標準搭載されています。
署名用電子証明書とは、インターネットで文書を送信する際に、改ざんなどないかを確認できるものです。
氏名、住所、生年月日、性別の4情報が記載されています。
利用者電子証明書とは、氏名や住所など4情報がなくても、利用者本人を証明できるものです。
住民基本台帳カードでも、希望者のみ「署名用電子証明書」の搭載が可能ですが、「利用者用電子証明書」は搭載できません。
画像引用元:公的個人認証サービスとは? 公的個人認証サービスによる電子証明書 総務省
4、マイナンバーカードの促進に向けた取り組み
マイナンバーカードの普及促進に向けて、政府は『マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針』を策定しました。
同方針では
- 自治体ポイントの実施
- 健康保険証としての利用
- 円滑な取得と更新の推進
などが掲げられています。
それぞれ解説していきましょう。
(1)自治体ポイントの実施
自治体ポイントとは、マイナンバーカードを活用したポイント制度です。
自治体ポイントを貯めるには以下2つの方法があります。
- クレジットカードのポイント、航空会社のマイレージを自治体ポイントに交換する
- ボランティアや地域活動に参加して自治体ポイントを貯める
自治体ポイントは地域店舗での買い物や商品券への交換、クラウドファンディングなどに使うことができます。
参考:自治体ポイントの概要 自治体ポイントナビ
自治体ポイントの概要 総務省
(2)マイナンバーカードの健康保険証利用
マイナンバーカードは、2021年3月から健康保険証として利用できるようになる予定です。
マイナンバーカードを健康保険証として利用することで、以下のメリットが生まれます。
- 就職、転職、引っ越しをしても保険証を書き換える必要がなくなる
- マイナポータルで特定健診情報や薬剤情報、医療費が確認できるようになる
- マイナポータルで確定申告の医療費控除ができるようになる
ただ、マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには申し込みが必要です。
参考:マイナンバーカードの健康保険証利用申込がはじまりました マイナポータル
(3)マイナンバーカードの円滑な取得・更新の推進等
政府は2022年までに、ほとんどの国民がマイナンバーカードを保有している環境をめざし、マイナンバーカードの円滑な取得と更新の推進を行っています。
主な取り組みは、マイナンバーカード申請のコストの削減です。
具体的には
- 企業等への出張申請サービスの展開
- ハローワーク、税務署、運転免許センター、病院、介護施設、学校、郵便局、出入国在留管理局等への市区町村の出張窓口の設置
- 新生児や外国人の住民票作成時のマイナンバーカード申請手続きの整備
などが実施されています。
まとめ
今回は住民基本台帳について、住民票やマイナンバーカードとの違いに触れながら解説しました。
マイナンバーカードをはじめとした行政のデジタル化は、私たちの生活をより便利にしてくれるでしょう。
しかし、個人情報の扱いには注意が必要です。
便利さと安心を両立した効率的な行政手続きの実現に期待したいですね。