政治ドットコムその他ムーンショットとは?7つの目標や政府の取り組みについて簡単解説

ムーンショットとは?7つの目標や政府の取り組みについて簡単解説

投稿日2021.6.30
最終更新日2021.06.30
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

「ムーンショット」とは、未来社会を展望し、これまで無い「壮大な目標・挑戦」を指す言葉です。

今回は、内閣府が掲げる「人が身体・脳・空間・時間の制約から、解放された社会の実現」というムーンショット目標について、以下の通り解説します。

  • ムーンショットの概要
  • 政府が掲げる7つの目標
  • ムーンショットを進める政府の取り組み

本記事がお役に立てば幸いです。

1、ムーンショットとは

ムーンショット
「ムーンショット」とは、未来社会を展望し、実現すれば大きなインパクトをもたらす「壮大な目標・挑戦」を指す言葉として使われています。

語源は、ジョン・F・ケネディ大統領が発した、アポロ計画に関するスピーチです。

「1960年代が終わる前に、月面に人類を着陸させ、無事に地球に帰還させる」というスピーチが、由来であると言われています。

日本では、

  • 人口減少社会の到来
  • 地球環境の現状

を受けて、「国民の新しい生活様式」を実現するため、ムーンショット目標が掲げられました。

2、政府が掲げる7つのムーンショット目標

内閣府は、2020年1月に「48回総合科学技術・イノベーション会議」を開催しました。
この会議で、2050年を見据えた計画として、「ムーンショット型研究開発制度」を推進する7つの目標を発表したのです。

ムーンショット型研究開発制度の具体的な内容は、以下の通りです。

  • 「身体」「脳」「空間」「時間」の制限から解放された社会の実現
  • 超早期からの疾患の予測・予防ができる社会の実現
  • 自分で学習・行動し、人と共に過ごすロボットの実現
  • 資源を循環する持続可能な社会の実現
  • 地球規模でムダのない持続的な食料供給産業の創出
  • 経済・産業・安全保障を急激に発展させるコンピューターの実現
  • 100年人生を楽しんで過ごすための医療・介護システムの実現

それぞれの目標について、以下で確認していきましょう。 

参考:目標1-6(総合科学技術・イノベーション会議決定)|内閣府

参考:目標7(健康・医療戦略推進本部決定)|内閣府

(1)「身体」「脳」「空間」「時間」の制約から人が解放された社会の実現 

「解放」とは、ロボットや3Dホログラムなどを利用して、人間の

  • 身体能力
  • 認知能力
  • 知覚能力

を拡張することです。

解放された、未来的な新しい生活様式を「サイバネティックアバター生活」と呼びます。 

2050年までに、身体的な限界に縛られずに社会活動へ参画できる、未来の社会基盤を作ることを、政府は掲げているのです。

例えば、

  • コーディネーターロボットによる道案内
  • 自己アバターの遠隔操作による仕事への取り組み

などが考えられるでしょう。

参考:目標1-6(総合科学技術・イノベーション会議決定)|内閣府

(2)超早期からの疾患の予測・予防ができる社会の実現

 「超早期からの疾患の予測・予防」とは、

  • 認知症

などの深刻な病気が発症する前に、疾患予測し、予防を図るシステムを確立することです。

2030年までに、人間の臓器間ネットワークの包括的な解明を目指しています。
そして2050年には、「すべての病気を未然に防ぐこと」を実現する計画です。

(3)自分で学習・行動し、人と共に過ごすロボットの実現

人と価値観などを共有し、一緒に成長するパートナーロボットの開発を指しています。

ロボットの開発が進めば、

  • 新しい分野における自然科学の解明
  • 完全無人化による産業構造の変革

などが可能になるかもしれません。

2030年までには、特定の問題や状況に対して、自律的に動作するロボットの開発が目指されています。

(4)資源を循環する持続可能な社会の実現

2050年までに、今までのライフスタイルを継続しつつ、

  • 地球温暖化問題
  • 環境汚染問題

を解決し、地球環境を再生する、持続可能な社会を目指します。

具体的には

  • 大気中のCO2の直接回収・資源転換
  • プラスチックゴミの分解・無害化

などの技術開発がカギとなるようです。

2030年までに、

  • 温室効果ガスに対する循環技術
  • 環境汚染物質の有益な資源への変換、無害化

を実現する技術の開発を目標としています。

参考:目標1-6(総合科学技術・イノベーション会議決定)|内閣府 

(5)地球規模でムダのない持続的な食料供給産業の創出

世界的な人口増加により、食料需給はひっ迫状態にあります。
2050年には、穀物の需要量は、現在の1.7倍になると言われています。

そのため、自然と共存した、ムダの無い、食料需要の解決を目指す必要があるのです。

具体的には、

  • 土壌微生物環境の完全解明
  • 化学肥料を使わない食料作りの実施
  • 食品ロスの減少

などが挙げられています。

上記の技術開発を進めることで、

  • ムリ・ムダのない食料生産活動を構築
  • 世界的な人口増加への対応
  • 地球環境の回復への貢献

が期待されています。 

参考:目標1-6(総合科学技術・イノベーション会議決定)|内閣府 

(6)経済・産業・安全保障を急激に発展させるコンピューターの実現

Society5.0の実現に向けて、圧倒的な処理能力を持つ量子技術を応用し、様々な分野で革新を生み出すことを目指しています。

実現すれば、既存の社会システムへの、大きな変革につながる重要な目標の1つです。

(7)100年人生を楽しんで過ごすための医療・介護システムの実現

目標2で掲げた「疾病の予防」に加えて、心身ともに健康を維持しながら、人生を楽しめる社会基盤の構築を目指しています。

求められる技術開発は、

  • すべての生体トレンドを把握・管理できる技術
  • どこにいても必要な医療にアクセスできるメディカルネットワーク
  • 機能が衰えた臓器を再生・代替する技術

などが挙げられます。 

個々人の健康状態をシステムで管理しながら、介護に依存しない、自律的な社会の構築を目指しているのです。 

参考:目標7(健康・医療戦略推進本部決定)|内閣府

3、ムーンショット目標への政府の取り組み

ムーンショット
ムーンショット目標を実現するために、政府では、以下の取り組みを進めています。

  • 総合科学技術・イノベーション会議の開催
  • ムーンショット型研究開発制度の創設
  • ムーンショット国際シンポジウムの開催

それぞれの内容について、みていきましょう。

(1)総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の開催

内閣府では、ムーンショット目標を含めた、「イノベーション創造プログラム」に関する事業が展開されています。 

その1つが「総合科学技術・イノベーション会議」です。
「総合科学技術・イノベーション会議」とは、

  • 内閣総理大臣
  • 科学技術政策担当大臣

が企画立案した、科学技術・イノベーション政策について、調整することを目的とした会議です。

日常生活への新技術の活用を図るため、

  • ムーンショット型研究開発制度の進め方
  • ムーンショット型研究の必要性
  • 目標の設定
  • キックオフシンポジウムなどのイベントの開催

などについて、取り組んでいます。

参考:ムーンショット型研究開発制度|内閣府

(2)ムーンショット型研究開発制度 

ムーンショット型研究開発制度とは、日本におけるより大胆なイノベーションの創出を目指して発足した新しい制度です。

欧米や中国などの先進的な取り組みを参考に、2018年に内閣府より創設されました。

政府が掲げる「ムーンショット」は、「Human Well-being(人々の幸福)」を目指すというコンセプトのもと、基盤となる社会・環境・経済の領域における様々な課題の解決を目的としています。

社会から尊敬される技術をもつ、士気の高い国を目指して、2018年度の補正予算では約1000億円が計上されました。

また優れたテーマの研究開発に対しては、最長で10年間の支援を発表しました。 

参考:ムーンショット型研究開発制度|内閣府

(3)ムーンショット国際シンポジウムの開催

2019年12月に、

  • 内閣府
  • 科学技術振興機構(JST)
  • 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

が主催する、「ムーンショット国際シンポジウム」が開催されました。

「ムーンショット国際シンポジウム」とは、ムーンショット型研究開発制度の、運営方法や目標について、議論するための会議です。 

具体的には、

  • 人の能力に対する拡張技術の実現
  • AIとロボットの共進化によるフロンティアの開拓

などのプレゼンテーションが行われ、専門家による認識が共有されました。

参考:ムーンショット国際シンポジウム

まとめ

今回は、ムーンショットについて解説しました。

ムーンショット目標は、AI やロボットといった、先進技術の発展に基づいるため、現時点では予想がつかないものも多くあります。 

しかし、このように大きな計画を掲げて、様々な分野を後押しすることは、政府が担うべき重要な役割の1つと言えるかもしれません。