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ヒートアイランド現象とは?原因や対策について簡単解説

投稿日2021.1.12
最終更新日2021.06.24
この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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ヒートアイランド現象とは、郊外と比較した時に都市部の気温が高くなる現象を指します。
また、このヒートアイランド現象は、人や動植物に影響を与える可能性があることから、社会問題としてとらえられています。

そこで今回はヒートアイランド現象について詳しくご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、ヒートアイランド現象とは

ヒートアイランド現象とは、都市の気温が周辺地域よりも高くなる現象のことです。
以下の図は、気象庁が公式ホームページで公開している関東地方の2013年8月11日午前5時の気温分布図です。

ヒートアイランド現象画像出典:気象庁

右図の赤くなっている部分から、東京23区周辺が郊外と比較して高温になるヒートアイランド現象になっていることがわかります。

また、環境省はヒートアイランド現象が、人と動植物に影響を与えていると指摘しています。
以下でその内容を確認していきましょう。

(1)人への影響

ヒートアイランド現象による人への影響については、夏場の熱中症や睡眠障害などの恐れがあると環境省は警鐘を鳴らしています。

さらに、大気汚染による人体への悪影響も懸念されています。

都市部だけ気温が高くなると、「熱対流」という現象が起き、大気が拡散されにくくなり、大気汚染に繋がると言われているのです。

(2)動植物への影響

環境省によると、国立科学博物館が保有している附属自然教育園の園内の生物相が1950年から2002年にかけて大きく変化していると言われています。

園内の温暖な気候に育つ植物であるシュロは、1950年の3本から1802本に増え、環境の変化に弱い杉は同じ期間に121本から10本に減っています。

参考:ヒートアイランド現象とは

2、ヒートアイランド現象の原因

ヒートアイランド現象の原因としては以下の3つが挙げられます。

  1. 地表面被覆の人工化
  2. 人工排熱
  3. 高密度化

1つずつ確認していきましょう。 

(1)地表面被覆の人工化

地表面被覆の人工化とは、地球の表面がアスファルトやコンクリート、プラスチックなどによって包まれることを指します。

アスファルトやコンクリートなどの人工的な被覆は、太陽光を受けると温度が上昇し続けます。
夏の炎天下には、およそ50~60度になる場合もあります。

これにより大気があたためられ、気温が上昇します。 

(2)人工排熱

人工排熱とは、人工物から排出される熱のことです。

  • 自動車
  • クーラー
  • 工場
  • 発電所
  • ゴミ焼却場

などの人工物から出る排熱により大気があたためられます。
人工排熱はヒートアイランド現象だけでなく、地球温暖化の原因にもなっています。

(3)都市の高密度化

高密度化とは、都市に多くのビルが密集している状態です。
高密度化により、空気の流れがよどみ、熱が滞留し、換気機能が失われます。

 また、地表面から見上げたときの空が見える割合のことを「天空率」といいますが、都市部ではビルが多いためにこの天空率の数値が郊外と比較して低いです。

天空率が低いと、昼間に地表面に貯まった熱が夜間に放湿される放射冷却がうまくいきません。
気温が冷めないまま朝を迎えるので、ますます気温が上がるのです。

参考:ヒートアイランド現象とは

3、ヒートアイランド現象と地球温暖化の違い

ヒートアイランド現象
ヒートアイランド現象も地球温暖化も、気温の上昇により生活に悪影響をもたらすという点では同じですが、その仕組みや現象の規模は全く異なります。

 ヒートアイランド現象は、これまで確認してきたように人工的な構造物や排熱を主な原因としていますが、その影響範囲は都市部を中心とした限定的なものです。

しかし地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスが増えることによって気温が上昇する現象であり、その影響範囲は地球全体に及びます。

参考:気象庁

地球温暖化については以下の関連記事でご紹介しています。

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4、ヒートアイランド現象に対する政府の取り組み

ヒートアイランド現象を解決するために、国はさまざまな対策を講じています。
主な取り組みである

  • 緑化推進
  • 低炭素まちづくりの推進
  • 建築物の省エネ性能向上
  • 雨水や下水再生水の利用

について見ていきましょう。 

(1)緑化推進

国土交通省は、同省が入居するビルの屋上に緑化施設「屋上庭園」をつくり、ヒートアイランド現象に対する緑化の効果を測定しています。

 屋上庭園は

  • 広さ500平方メートル
  • 中高木40本
  • 低木域70平方メートル
  • 地被類50平方メートル
  • 芝生180平方メートル
  • 池や水の流れ40平方メートル

となっています。

 屋上庭園には、チョウ、トンボ、バッタ、カマキリ、ハチ、ヒヨドリ、セキレイ、鳩などが確認されたようです。
国土交通省はビルの屋上を緑化することで、次のような効果が得られるとしています。 

  • 夏場の室温の上昇抑制
  • 騒音の低減
  • 生理的心理的効果
  • 火災からの建物保護
  • 都市気象の改善
  • ヒートアイランド現象の緩和
  • 過剰乾燥の防止
  • 省エネルギーの推進
  • 空気の浄化

(2)低炭素まちづくりの推進

国土交通省、環境省、経済産業省は、まちづくりの一環として低炭素化を進めることで、ヒートアイランド現象の改善につながるとしています。

低炭素化とは、二酸化炭素の排出量を減らす取り組みを指します。

低炭素化では、人々がこれまでの生活水準を落とすことなく、地球温暖化を抑制できるとしているので、日本だけでなく世界的に見ても注目度が高いと言われているのです。

政府が考える低炭素まちづくりにおいては、樹木保全がその中の施策に含まれています。低炭素化については以下の関連記事にてご紹介しています。

(3)建築物の省エネ性能向上

「建築物、省エネ、低炭素」の3つのキーワードについて、国土交通省は「住宅や建築物の省エネ性能を向上させよう」と訴えています。

特に都心の建築物は年々規模が大きくなり、多くの人々が利用します。
そのため、大規模建築物を省力化することで、ヒートアイランド現象の対策に効果があると言われているのです。

そこで政府は、省エネルギー法を改正して、住宅・建築物の省エネ性能向上を達成しようとしています。

具体的な施策として

  • 断熱、空調、照明を、省エネ技術を搭載した最新のものに切り替える
  • 施工を工夫する
  • 新築やリフォームで省エネ技術を取り入れたときに助成金やポイントを付与する

といった内容を挙げています。

(4)雨水や下水再生水の利用 

国土交通省は、雨水や下水再生水を使ったヒートアイランド現象対策にも乗り出しています。
例えば、地中に埋められた「浸透ます」に溜まった雨水を、地上につくった水路に流すなどの試みが検討されています。 

ただ、年143億立方メートルの下水処理水のうち、再利用されているのは約1.4%です。
下水再生水を増やして地上の水を増やせば、冷却効果が期待できるかもしれません。

参考:国土交通省

参考:ヒートアイランド現象とは

 まとめ

今回はヒートアイランド現象の原因や対策についてご紹介しました。
世界規模で問題となっている地球温暖化と合わせて、これからも政府の取り組みに注目していきたいですね。