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介護問題とは?介護問題に対する政府の対応策を簡単解説

投稿日2021.3.21
最終更新日2021.03.21

介護問題とは、超高齢社会の日本で今まさに発生している問題です。
具体的には、介護難民や社会保障費増加の問題などがあげられます。

これから両親の介護と向き合う世代の皆さんにとっては、最も関心の高い問題なのではないでしょうか。
今こそ、介護のどのような点が問題になっているのか、政府はどのように対応しているのか、正しく知っておきませんか?

今回は

  • 日本の介護における問題
  • 2025年問題
  • 老老介護について
  • 政府の取り組み

についてご紹介します。
あなたとご家族の未来にとって、本記事がお役に立てば幸いです。

1、介護問題とは


介護問題とは少子高齢化により、介護される側の人が急増し介護する側の人間が減少することで起こる一連の問題を指します。
この問題とは、例えば高齢者のための社会保障費の増加や老々介護などを指します。

また、これに大きく関わる課題として2025年問題が取り上げられています。

2025年問題とは、いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者(75歳)の年齢に達する2025年に、介護や医療などの社会保障費の急増が懸念される問題です。

日本は、海外諸国と比べても稀に見るスピードで高齢化が進行しています。
後期高齢者の人口は2025年に約2,200万人を迎え、国民の4人に1人が75歳以上という計算になります。

高齢化と共に少子化が進む日本では、介護問題において「若い世代の負担が大きくなる現実」がすぐ目の前に迫っているのです。

たった5年後にどのような現実を迎えるのか、以下で4点に分けてご紹介します。

(1)介護難民

第1に、介護難民の発生です。
介護難民とは、要介護状態(介護が必要)であるのに、介護を受けられない人のことです。

この介護難民の数が、2025年には東京圏で約13万人発生すると試算されました(2015年、シンクタンク「日本創成会議」より)。

介護の現場において早急な人材の確保、また技術の進歩が求められています。

(2)高齢者の一人暮らし

第2に、高齢者の一人暮らしの増加です。
65歳以上の高齢者で一人暮らしをする人は、年々増え続けています。

2015年時点で約625万世帯だったのが、2025年には約751万世帯にのぼる見通しです(厚生労働省「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018年推計」より)。

離別、子なしなど、理由は様々に考えられますが、要介護状態になり得る高齢者の一人暮らしの増加は、認知症を患った際のリスクや孤独死のリスクを高めます。

どちらも社会問題化しており、介護問題とあわせて解決していくべきでしょう。

(3)人手不足

第3に、介護職の人材不足です。
この問題は多くの専門家によって指摘されており、介護難民を生む大きな要因と考えられています。

介護を担う若い世代の人口と高齢者の人口を単純に比べてみても、高齢者数の増加によって、それを支える担い手が足りなくなることは明らかです。

しかし介護職の現実は、賃金が相対的に低く仕事はかなりの負担を強いる傾向にあるため、介護職に就きたいと考える若者が少なくなっているようです。

結果として、介護職の人手不足は年々深刻化しています。

介護職とあわせて医療職の人手不足も深刻化しており、健康に不安を抱えることが多い高齢者にとっては、最も大きな不安要素と言えるのではないでしょうか。

(4)社会保障費増加

第4に、社会保障費の増加です。
社会保障とは簡単に言えば、様々なリスク(病気など)による貧困などを防止し、国民の生活水準を維持することです。
高齢者の介護や年金の支給なども当然社会保障に含まれます。

社会保障費はそのための出費です。
介護を必要とする人の増加は必然的に社会保障費の増加という結果を招きます。
ちなみに社会保障費の出費の中でも、年金は最も多くを占めています。

現状、日本の年金システムは、働く世代が納めたお金を高齢者へ年金として渡すかたちで成り立っています。

しかし、このまま少子高齢化が進めば、納付する側の「働く世代」が少なくなり、「お金を受け取る世代(支給額)」が増えることは明らかです。

多くの専門家が、日本の年金システムは近いうちに破たんすると指摘しています。

2025年は、年金のあり方自体が問われるようになり、年金支給開始年齢の引き上げや支給額の減少は避けられないかもしれません。

このような流れは負のスパイラルに繋がっていくだけでなく、世代間の不満も生み出してしまいます。

2、老々介護|認認介護

続いて、老老介護と認認介護、またその課題について考えてみましょう。

2つの言葉の意味を簡単に説明すると、

  • 老老介護:介護する人と介護される人が、どちらも65歳以上
  • 認認介護:介護する人と介護される人が、どちらも認知症を発症している

ということになります。

つまり、本来ならば自分自身も要介護状態にあるような高齢者や認知症を患った人が、介護をしているという状況です。
なぜこのような状況に陥っているのでしょうか。

以下で要因をご説明します。

(1)医療の進歩

第1に、(喜ばしいことではありますが)医療の進歩によって日本人の平均寿命が延びたことがあげられます。

90代の夫婦の子供世代が60代というケースも多く、高齢者が高齢者を介護せざるを得ない老老介護の状況が自然に生まれているのです。

また、平均寿命が伸びたことによって、健康寿命との差も大きくなる傾向にあります。
健康寿命とは「人生の中で、健康で活動的に生活できる期間」です。

長く生きられることと「身体的・内面的に健康かどうか」は別の問題なので、寿命が伸びた分、認知症を発生するリスクは高くなってしまいます。

結果として、認認介護にもつながっているのです。

(2)核家族化

第2に、独立して別居する子供世帯の家庭が増えたことにより、核家族化が進んだことも要因と考えられています。
離れて暮らしていると、子供世代に助けを求めることが難しく、配偶者同士で支え合うしか方法がないのです。

高齢者はコミュニティが狭くなってしまいがちな人も多く、ご近所づきあいが希薄であれば、いよいよ頼るところがなくなってしまいます。

そうこうしているうちに、認知症を発症していまい、結果的に認認介護となってしまう可能性もあるのです。

3、高齢者への虐待

時折ニュースでも取り上げられますが、家庭や養介護施設における高齢者への虐待も、介護問題の内の大きな課題の1つです。

家庭内で虐待が生まれたケースでは、同居の養護者が虐待者となったケースが86.6%を占めます。

続柄で見ると、

  • 息子:40.3%
  • 夫:21.0%
  • 娘:16.5%

という順に多いです。
複数の虐待者が存在するケースもあります。

また、家庭外の場所で虐待が起きている場所は、全体の割合から見ると、

  • 特別養護老人ホーム:30.6%
  • 有料老人ホーム:20.9%
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):15.9%
  • 介護老人保健施設:9.1%
  • 訪問介護等:6.1%

という順に多いです。
虐待者となってしまった人を男女別に見ると、大きな差はなく、誰でも虐待者になり得る危険性があるのかもしれません。

(厚生労働省「平成27年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」より)

悲しい現実ではありますが、様々な場所で虐待は実際に起きています。
介護はする側・される側が共に長く付き合っていかなければならない事柄です。

虐待を防ぐためにも、介護する側の「介護うつ」を防ぎ、サポートを行っていく必要があります。

4、政府の取り組み

ここまで、介護の様々な問題とその要因について見てきました。
続いて、政府の代表的な取り組みをご紹介します。

(1)地域包括ケアシステム

高齢者の尊厳の保持と自立生活支援を実現するため、厚生労働省は2025年を目処に「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。

以下で詳細をご説明します。

①システムの概要

「地域包括ケアシステム」とは、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい生き方を全うできるように、地域で包括的な支援・サービスを提供する体制のことです。

包括的な支援のためには、切れ目なく一体的に、

  • 介護(専門職による提供・支援)
  • 医療(専門職による提供・支援)
  • 予防(専門職による提供・支援)
  • 住まい(住み方も含めて)
  • 生活支援・福祉サービス

などのサービスがスムーズに提供される連携体制が必要となります。

この体制の実現のためには、

  • 自助(健康管理などの自分自身で対策を行う)
  • 互助(家族や親戚、地域で自発的に支え合う)
  • 共助(介護保険・医療保険サービスなど社会保険制度の利用)
  • 公助(生活保護支給などの行政サービス)

という考えが根底にあります。

②地域ごとに実現すべき体制

地域によっても、高齢化の進行状況や環境は大きく異なります。
地域包括ケアシステムは、市町村や都道府県が地域の特性に応じて作り上げていく必要があるでしょう。

具体的には、

  • 介護事業者
  • 医療機関
  • 町内会
  • 自治体
  • ボランティア
  • 地域住民

などが一体となって、取り組む必要があります。
この連携体制を支える拠点として「地域包括支援センター」を各自治体が設置しています。

各センターには、

  • 保健師
  • 社会福祉士
  • 主任ケアマネジャー

の3つの専門職、またはそれに準じる者が必ず配置されています。

介護だけでなく医療、福祉、健康など様々な相談の受付や情報提供を行うことで、様々な側面から地域社会をサポートすることを主な役割としています。

(2)介護人材の確保

続いて、一手不足が深刻化している介護の現場において、政府がどのように人材確保に努めているか見ていきましょう。

①入門的研修

介護未経験者の人が介護職に就きやすい環境を作るため、各都道府県や市区町村では介護に関する入門的研修を行っています。
1日(3時間)で終了するものから、1週間(21時間)かかるものまで、複数のレベルがあります。

この研修を受講すると、通所・居住・施設系サービスにおいては、介護職員として働けるようになります。

訪問系サービスの職員として働いたり、介護専門職の資格を得たりする場合は、さらなる研修が必要ですが、その場合も科目の読み替えができ、ステップアップしやすくなっています。

②認証評価制度

「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度」は、一定の水準を満たした介護事業者について認証を与える制度です。

職員の人材育成や就労環境など、介護人材の確保につながる介護事業者の取り組みについて、都道府県が基準に基づいて評価を行います。

取り組みの「見える化」を図ることにより、

  • 働きやすい環境の整備を進め、業界全体のレベルアップとボトムアップを推進
  • 介護職を志す人の新規参入、介護職員の離職防止、定着を促進

という効果が生まれ、引いては介護業界のイメージアップに繋がることが期待されています。

この評価制度は、地域医療介護総合確保基金における介護従事者の確保に関する事業に位置づけられており、認証評価制度の運営に必要な経費の支援も行われています。

③介護職の魅力発信

介護問題を解決するためには、高齢者自身や家族、地域社会の連携が欠かせません。
様々な問題や人手不足の解消について、まずは介護を正しく知ること、魅力もあわせて知ることが必要です。

政府は「いい日、いい日、毎日あったか介護ありがとう」を念頭に、「11月11日」を介護の日として、高齢者や障がい者などに対する介護への啓発を重点的に行う日として設定しました。

取り組みの一つとして、「介護の日」の前後2週間(11月4日から11月17日)を「福祉人材確保重点期間」としています。

福祉介護サービスの意義の理解を一層深めるため、関係機関と連携しながら、普及啓発や福祉人材の確保・定着を促進するための取り組みを行っています。

まとめ

今回は、介護問題についてご紹介しました。
わずか5年後の2025年が一つのターニングポイントとなり、それに向けて様々な課題解決をしていく必要があります。

少子高齢化が急速に進む日本では、個人と行政だけの努力では間に合わず、地域社会における連携が重要だとおわかりいただけたのではないでしょうか。

誰もが平等に歳を重ねていく中で、人生の終わりまで豊かな暮らしができるよう、働く世代も介護問題に向き合っていかなければなりません。

そのためにも、まずは正しい知識を得ることが重要です。
あなたやあなたのご家族が迎える未来に、一番良い選択ができることを祈っています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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