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ライドシェア法案とはなにか。需要と規制緩和を求める声などをわかりやすく解説

投稿日2025.4.24
最終更新日2025.04.24

日本のライドシェア制度は、現在タクシー会社の管理下で限定的に運用されていますが、全面解禁に向けた議論が進行中です。​2025年の通常国会への法案提出を目指す動きもありますが、政府内で意見が分かれています。​そのなかで日本維新の会は同年4月11日、ライドシェアの全面解禁を目指す法律案を提出しました。

日本におけるライドシェアの現状やライドシェア法案とはどのようなものなのか。需要と規制緩和を求める声などについて、詳しく解説します。

ライドシェアとは何か

ライドシェアとは、一般ドライバーが自家用車で人を運ぶサービスのことです。スマホのアプリなどを使って、乗りたい人と運転手をマッチングするもので、海外では「Uber(ウーバー)」や「Lyft(リフト)」などが有名です。

1.ライドシェアが注目されている背景

・タクシーの運転手不足

・高齢化や働き手の減少で、地方・都市部どちらもタクシーがつかまりにくい

・特に観光地や深夜帯で「移動難民」が増えている

2.観光需要の回復

・コロナ後に外国人観光客が急増したが、交通インフラが追いついていない

・東京・京都・大阪などで「タクシーが見つからない」問題が深刻

3.経済活性化と雇用創出の狙い

・働きたい人が副業・短時間でドライバーになれる

・地域経済を支える新しいサービスとして期待されている

​自家用車活用事業(通称:日本型ライドシェア)は​2024年4月に導入されました。対象地域は​東京都(23区、武蔵野市、三鷹市)、神奈川県(横浜市、川崎市、横須賀市など)、愛知県(名古屋市、瀬戸市、日進市など)などの一部地域で、​タクシー会社が主体となり、一般ドライバーが自家用車を使用して有償で乗客を送迎するものです。

運行時間帯を​タクシーが不足する特定の曜日や時間帯に限定​し、運賃設定は通常のタクシーと同等の料金体系を採用。タクシー会社がドライバーの教育、運行管理、車両整備を行い管理することで安全性を確保します。

今後、対象地域の拡大や運行時間帯の見直しが検討されており、​タクシー会社以外の事業者が参入できるよう、法制度の整備が進められています。

一方で、​一般ドライバーによる運行に対する安全性の懸念があり、引き続き対策が求められます。​

参考・引用:国土交通省 資料 日本経済新聞 産経新聞

求められる規制緩和と業界内の反発

日本版ライドシェアには賛否両論の意見がある中、さらなる規制緩和を求める声とそれに対するタクシー業界からの反発の声があります。

賛成意見としては、タクシー不足の解消や地域交通の利便性向上、副業での収入機会が増えることに肯定的な意見があります。

反対意見としては、既存のタクシー業界の経営が苦しくなることや、安全性・サービス品質の低下を心配する声、運賃の価格競争が起きる可能性を懸念する声があります。

ライドシェアをめぐる、政府や日本維新の会の動向

​2024年5月、政府の規制改革推進会議はライドシェアの全面解禁を認める法整備について意見を示し、2025年の通常国会への関連法案の提出を視野に入れるべきだと提起しました。​

河野太郎規制改革担当相は、2024年内のモニタリングと検証を継続し、必要があれば次のステップに移行すると述べた一方、斉藤鉄夫国土交通相は、現行制度の改善を優先し、全面解禁の判断は2025年以降になるとの見解を示していました。

当時の​岸田文雄前首相は、限定版ライドシェアの効果や改善策の検証と全面解禁につながる法整備の議論を並行で進めるよう指示しました。 ​

ライドシェアの全面解禁に向けた法整備は、政府内での意見の相違や慎重な検討が求められており、2025年以降に判断が下される見通しです。​限定的な運用の効果検証とともに、今後、法制度の議論が進められることになります。

参考・引用:毎日新聞

こうしたなか、日本維新の会は2025年4月、一般ドライバーが自家用車を使って有償で客を運ぶ「ライドシェア」を全面解禁する法案を衆院に提出しました。現在の「日本版ライドシェア」は運行管理をタクシー会社に限定していますが、他の事業者の参入も可能とする内容です。需給に応じて運賃を変動させる「ダイナミックプライシング(変動価格制)」の導入も盛り込んでいます。

青柳仁士政調会長は提出後、記者団に「日本に本物のライドシェアが導入できるよう、法案の可決を目指したい」と述べています。

参考・引用:時事通信社 

まとめ

日本版ライドシェア制度の導入は、地方部や都市部におけるタクシー運転手不足や高齢化、交通空白地帯の拡大といった課題に対応するためのものです。​特に、東京、横浜、名古屋、京都などの都市部でタクシー不足が深刻化しており、これを補う手段としてライドシェアの導入が進められました。 ​

ライドシェア法案は「交通インフラの新しい形」として国が進めている取り組みですが、タクシー業界とのバランス、安全性、地域ごとの対応など、さまざまな課題も抱えています。

タクシーの業界団体は全面解禁には反対の姿勢を示しています。一方で、スタートアップなどからは新規参入を望む声があり、個人事業主にも運転を認めるかどうかといった議論もあります。人手不足は深刻さを増しており、今後の制度設計や社会の受け入れ方が重要なカギとなりそうです。

この記事の監修者
秋圭史(株式会社PoliPoli 渉外部門)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。その傍ら、株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当している。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)

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