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司法権の独立とは?2つの独立について簡単解説

投稿日2020.3.4
最終更新日2020.06.05

司法権の独立とは、司法権以外の権力である行政府や立法府などから干渉されずに、裁判所が独自に判断できるという意味です。

第三者からの恣意的な介入を防ぎ、裁判官の公正・中立な判断を保障するための重要な概念です。
しかしこれだけでは具体的にどういうことだろう、と疑問に持たれる方も多いと思います。

そこで今回は

  • そもそも司法権とは何か
  • 司法権の独立とは具体的にどんなものか

といった事柄を説明していきます。本記事がお役に立てば幸いです。

1、司法権の独立とは


まず前提として司法権についてみていきましょう。

(1)司法権とは

司法権とは、裁判を通じて判決を下す機能です。
より詳しく言うと、「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用」と定義づけられます。この争訟を「法律上の争訟」と呼びます。

(2)司法権を行使できる範囲

裁判所が扱える範囲は、「法律上の争訟」に限定されるため、法律上の争訟とはどのようなものか、それに当てはまるのかが重要になります。

「法律上の争訟」とは、「(Ⅰ)当事者間の具体的な法律関係ないし権利義務の存否に関する争いであり、かつ、(Ⅱ)それが法律を適用することにより終局的に解決できるもの」に限られます。

Ⅰ具体的なものであること、Ⅱ終局的に解決できることが重要です。
順番に具体例を挙げて説明していきます。

Ⅰに関しては、警察予備隊事件という判例を用いて説明させて頂きます。
1950年戦後の日本ではGHQの方針により警察予備隊が組織されました。

この警察予備隊が違憲であると指摘され、訴訟が提起されましたがこれはⅠの要件を満たしていなかったために棄却されました。

理由は具体的な事件ではなかったからです。
つまりⅠは簡単に言うと具体的な事件でなければいけないということを言っているのです。

また、Ⅱに関してですが、

  • 国家試験の合否や、
  • 宗教上の教義などが

法令を適用して(法律で解決すること)解決できるものではなく、具体的な争訟にあたりません。

(3)司法権の2つの独立

司法権の独立
前述したように、基本的には裁判所の判断に他の機関が介入できないような制度となっています。
これを、司法権の独立といいます。
具体的には、①裁判所の独立と、②裁判官の独立の2つに分かれています。

①裁判所の独立

裁判所の独立は、裁判所が内部規律を自主的に定めることができる、規則制定権(憲法80条1項)を有していることが挙げられます。

また、下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名名簿に基づいて、内閣が任命します(憲法77条)。

最高裁判所の長官は、内閣の指名によって天皇が任命するので、内閣の裁判所に対する人事権が強くなっています。
しかし下級裁判所では、裁判所自身が指名に関与できるようになっています。

②裁判官の独立

裁判官の独立は、裁判官の身分保障・裁判官の良心に従った職権行使の規定によって保障されています。
これらの規定に関しては、詳しく後述します。

このような他の機関からの介入を許さない制度は、三権分立の原理から導かれます。

日本国憲法では、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制・均衡し合い、バランスを保つことにより、権力の集中と濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めています。

つまり、権力が1つの機関に集中すると暴走する危険があるため、権力を分散し、互いに監視しあおうということが三権分立です。

例えば、内閣と国会の関係について見てみると、内閣は国会のうち、衆議院に対する解散権を有しています。
反対に国会は、内閣に対する不信任決議案を提出できます。

しかし、三権分立と言っても、議院内閣制の下での立法機関と行政機関は、厳格に権力が分立しているわけではありません。
わが国が採用している議院内閣制の下においては、両機関が相互に協力し合い、多数決原理で法律の制定、政策決定がなされます。

両者が協力し合うことで、効率的な政治運営を可能にしています。
議院内閣制に関しては以下の関連記事でより詳しく解説しています。

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このように、立法機関と行政機関が相互に協力することを想定していますが、裁判所との関係においては少し異なります。
政治機関と裁判所が協力関係にあると、恣意的な判断が行われてしまう可能性がある為、裁判所は特に、独立した機関である必要があるのです。

2、司法権が独立している理由

恣意的な判断が行われないように、司法権を独立させる必要があると説明しました。
ではなぜ行政・立法機関の関係よりも厳格に権力を独立させる必要があるのでしょうか。

これは、司法権が少数派の権利を保障する機能を有しているためです。
政治においては、多数派の意見が表出されることが多く、少数派の権利が害される恐れがあります。

その際に、裁判所が法律の適用を通じて個別事件を判断することで、少数者の基本的人権や自由を保障することができます。
少数派にとって、最後の砦となる機関が、司法機関なのです。

その最後の砦となる機関では、公正な判決が行われる必要がありますよね。
政治的なアクターが裁判所の判断に恣意的に介入できることになれば、好き勝手な法律の運用ができてしまい、少数派の権利が救済されることがなくなってしまいます。

それを防ぐために、憲法で、裁判所・裁判官の独立の保障規定を定めているのです。

3、裁判官の独立|大津事件


憲法では、裁判所の独立のみでなく、裁判官の独立も保障していると説明しました。

例えば、行政機関による裁判官の懲戒処分の禁止、報酬の減額禁止、罷免される場合を限定するなど、裁判官としての身分を保障する規定が定められています。

そして、裁判官の独立で特に重要とされているのが、裁判官の職権行使の独立です。

憲法76条3項「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」

ここでいう「良心」とは、裁判官の主観的な良心ではなく、客観的な裁判官としての良心を指します。

日本の司法権の独立が評価・確立されることになった歴史的な事件として、大津事件を例にとってみてみましょう。
歴史の授業で習った方も多いかと思います。

明治24年に生じた事件で、日本とロシア間の外交上、大きな問題となりました。
来日中のロシア皇太子ニコライ2世が、警備を行っていた巡査・津田三蔵にサーベルで頭を切りつけられ、負傷を負いました。

通常であれば無期懲役程度の罪ですが、ロシアからの圧力があり、日本政府は「大逆罪」を適用して死刑になるよう圧力をかけました。

国民の間でも、ロシアからの報復や、戦争が生じるのではないかという危機感が生じました。

しかし、大審院院長の児島は、政府からの圧力に屈することなく、「大逆罪」は外国の皇族に対する犯罪は想定していないという理由で死刑回避を主張し、通常の「謀殺未遂罪」により、津田は無期懲役となります。

結果的に、政治的干渉などから司法権の独立を守ったこの判決は、国際社会に評価されることになりました。
このように、裁判官は現代でも、政治や世論の圧力に配慮することなく、裁判官としての良心に従って判決を下すことが求められます。

4、司法権の限界

このように、司法機関は、市民の自由と権利が保障するのに特に重要な機関だと言えますが、無制限にあらゆる事柄に司法権が及ぶわけではありません。

上記で、法律上の争訟に該当するものに限り、司法権が及ぶものとしました。
しかし、法律上の争訟にあたるものであっても、審理の対象外とされることがあります。
「司法権の限界」と呼ばれるものです。

例えば、大学の単位認定に関する訴訟において、基本的には大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきであるとして、司法審査の対象外とされました。

他にも、以下のものが司法権の限界として挙げられます。

  • 議院の資格争訟の裁判
  • 裁判官の弾劾裁判
  • 外交使節の治外法権
  • 条約による裁判権の制限
  • 国会ないし各議院の自律権に属する行為
  • 行政機関ないし国会の自由裁量に属する行為
  • 統治行為
  • 団体の内部事項に関する行為

 

まとめ

今回は、司法権の独立について、三権分立といった基本的な統治概念や、具体的な事例から説明をしました。

どのような司法制度が適しているかは、それぞれの国の統治システムによって異なりますが、司法権の独立は、いざという時に私たち市民の権利を守ってくれる重要な概念です。

この記事を読んで、司法や裁判所の制度に少しでも興味を持っていただけたら幸いです。