国民民主党は「対決より解決」の姿勢を掲げ、政策本意で与野党を問わず連携し、政策実現へと繋げてきました。2023年の通常国会では、玉木代表による「賃上げ実現国会」の働きかけや、2021年に他党に先駆けて提出した「孤独・孤立対策推進法案」が成立するなど、さまざまな実績を残しています。
今回のインタビューでは、国民民主党の代表を務める玉木雄一郎議員に、結党からの3年間を振り返った総括や、国民民主党の今後の展望などについてお伺いしました。
(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 中井澤卓哉)
玉木 雄一郎(たまき ゆういちろう)氏
1969年生まれ、国民民主党代表。
2005年財務省を退官し初出馬するも落選。
地元香川での浪人を経て、2009年衆議院議員選挙に初当選。
2020年、新国民民主党を設立し、代表就任(現在3期)。
趣味はギター、ピアノ、カラオケ。
(1)迷わず一歩踏み出すー財務官僚から政治家へ
ーまずはじめに、政治家を志したきっかけについて教えてください。
私のキャリアのスタートは、当時の大蔵省、つまりは現在の財務省に入省したことからでした。入省した私は主計局総務課という財政に関する政策などを担当しました。その後、外務省の出向で中近東担当を経て、大阪国税局や内閣府で秘書専門官を務め、最終的には財務省に戻るなど、様々な省庁で日本の政策作りに携わってきました。
そんな官僚としてのキャリアを歩んでいた私が政治家を志した理由は大きく3つあります。
政治を志した理由の一つ目は、この官僚時代に政治の力で変えられることがあると感じたことです。私は小泉政権下で国家戦略特区の創設に関わりました。その際、政治が決断すれば物事は大きく変わるのだと強く感じました。
二つ目の理由は、ハーバード大学に留学中、学友たちの刺激を受けて自分でも何かしたいと思ったことです。政治家や官僚を目指す世界各国の学生と自分を比べてみたとき、自分も負けていられないと感じました。特に、先進国だけでなく、東南アジアやアフリカなど新興国出身の学生も多い中で、日本は20年後、30年後、これらの国々に負けてしまうのではないかと危機感を感じました。
三つ目の理由は、私が香川県出身、さらにいえば香川県の中でも田舎の方の出身のため、都市と地方の格差、地方の中での格差に問題意識があったことです。都市と地方の格差は分かりやすいと思いますが、実は地方の中でも、県庁所在地とそれ以外では明確に差があります。例えば教育では、教育委員会が人事を決める中で、やはりいい先生は生徒の多い学校に行ってもらおうという配慮が働きます。私と私の息子の通った小学校はもう廃校になってしまいましたが、香川県の中でも、県庁所在地と本当の田舎では受けられる教育に差があるように感じました。そういった都市と地方の格差、地方の中での格差について、教育については国がしっかり差を無くしていく必要があると考えています。
ー政治家になろうと思ってから出馬まではどのような経緯があったのでしょうか。
2005年、小泉元総理が郵政解散を決めた際に財務省を退職し、出馬しました。周りからは辞めるなとか色々言われましたが、今決めなければずっと挑戦できないと思い出馬し、見事落選しました。
私は、政治家、さらにいえばリーダーは、決断して責任を取るのが仕事だと思っています。政治家になる、決断の連続の人生を歩むと決めたからには、次の衆議院選挙まで待つという選択肢はありませんでした。落選後は4年間浪人しましたが、あの時の経験があるからこそ今の自分があると思っています。最初の選挙では負けましたが、その後の選挙では勝ち続け、何があっても諦めない強さを身に着けました。
(2)新国民民主党、結党から3年を振り返って
ー新国民民主党の結党から3年が経ちました。玉木議員はこの3年間についてどのように感じていますか。
今日もなんとか1日生き残った、という思いで一日一日を過ごしていたら、3年経っていた、というのが正直な感想です。
小さな政党ゆえに、毎日の決断に緊張感があります。間違ったことをしてはいけないし、ただ漫然と過ごしていても、すぐにダメになってしまう。変化に対して日々敏感でなければならないと感じています。
また、小さい政党であるからこそ、逆に自分達の存在意義やバリューをものすごく意識しています。私たちは、誰のために存在しているのか。様々なステークホルダーがいますが、突き詰めれば、国民のために存在しているんです。国民民主党は本当に国民の役に立っているのか、国民のためになることをできているか、常に問い続けてきた3年でした。
ー国民民主党の政策に対する向き合い方は、非常に若者の支持を得ているように感じます。
国民民主党の方針は「政策本位で協力できる政党とは与野党を問わず連携する」で、常にこの姿勢は発信し続けています。国民、特に若者のみなさんは、もはや選挙のための政治が本質でないことに気づいているのではないかと思います。そもそも「選挙のために魂を売るのはやめよう」というのが、2020年9月に結党した理由でもありました。
そのため、外交安全保障やエネルギー、憲法など国家の基本に関する政策で一致しない政党とは協力しません。逆に言えば、国民民主党は、国民の生活がよりよくなる政策に関しては与党の政策であろうと一緒に前に進めており、この本質的な政治姿勢に気づいてもらえる人々から支持をいただいているのかなと感じています。
多くの国民民主党の議員も、自分が信じていることと政党が言っていることが一致しているので、自分の心に嘘偽りなく日本のためになる政策の声をあげていることで、確かに小さな政党で苦しさはあるかもしれないが、ものすごく活力を持って日々活動をしてくれています。
ー国民民主党の今後の目標について教えてください。
まず選挙で議席数を増やすことを目指しています。
自分たちの掲げる政策を実現するためには、できるだけ早く、国民民主党が一定の存在感がある政党にならなくてはいけません。
比例票数でいえば、2021年衆院選で259万票、2022年参院選で316万票を獲得したので、次の衆院選で460万票、次の次の衆院総選挙で500万票といったところでしょうか。単独与党はまだ難しいですが、まずは現在の公明党と同等の規模の政党となることで、政党としての発言力を高めたいと考えています。
(3)政策本位の国民民主党が掲げる政策は
ー国民民主党が目指す社会や力を入れている政策について教えてください。
国民民主党には明確な目標があります。それは、日本人の給料が上がる経済を実現することです。そのためにプラスの政策は全部やるし、マイナスになる政策は全部やめます。この「給料が上がる」社会づくりのために、人への投資、未来への投資を第一に考えています。
人への投資への観点で言うと、日本は教育への公的支出が他の先進国と比べても低く、また科学技術における国際競争力も年々低下しています。国民民主党は、教育国債を発行してでも財源を確保し、教育や子育て、科学技術への投資に力を入れるべきだと考えています。
教育国債については、賛否両論あるとは思いますが、必ず価値として戻ってくることを意識すること。これは実際に法案も出して、提案しています。
このように教育などの人への投資と、子育てや出産など未来を担うこどもたちへの投資を行い、給料が上がる経済を実現したいですね。
ー国民民主党が国民の可処分所得を増やそうとしている政策として「トリガー条項の凍結解除」を訴えています。
まず「トリガー条項」とは、ガソリン価格が3カ月連続で160円/Lを超えた際に、上乗せされている23.1円/L(軽油は17.1円)の特例税率を停止し、ガソリン・軽油価格を引下げる措置のことです。このトリガー条項は、東日本大震災の復興財源の確保を目的に、2011年以降は凍結されていました。
現在、新型コロナウイルスや円安、ロシアのウクライナ侵攻などを背景としてガソリン価格が最高値を記録して、地方経済に大きな負担を与えているので、トリガー条項を再開することでガソリン減税を行い、国民の家計や企業の負担を軽減する必要があります。
これまでの取って配って無駄が生じている補助金で対応するのではなく、最初から取らない減税を行うことで、物価高で打撃を受けている国民生活を支援することは絶対に必要なことです。
(4)人への投資、未来への投資ー玉木議員の目指す社会とは
ー玉木議員の政治家としての目標について教えてください。
私自身が成し遂げたいことは、第一に次世代育成、第二に現役世代の負担減です。
次世代育成については先ほども申し上げた通り、教育国債を発行してでも財源を確保し、教育、子育て、科学技術支援に取り組むべきだと考えています。現在は、建設国債を中心として物的資産を作り出す政策が進められていますが、この少子社会、デジタル社会において、生産性向上により繋がりやすい人づくりに投資をするべきですし、子どもを産むことに対して、教育費などの支出の高さが障害になっている世帯に対しての支援にも繋がります。
第二に、現役世代の負担減については、今、若い方の社会保険料負担が重すぎて、賃上げをしても手取りがほとんど増えない、という問題が起こっています。この問題を解決するため、20代の所得税、住民税をゼロにする「若者減税」などで、政治がもっと支える必要があると感じています。
このように、若い人が希望を持って働くことができる環境を作りたいと考えています。
ー若い世代に向けたメッセージをお願いします。
挑戦してほしい。失敗も財産になるので、どんどんチャレンジしてください。
今、日本には他人の挑戦や失敗を安全地帯から冷笑するような文化があり、チャレンジを妨げていると感じます。私の世代の責任として、この文化を変えていきたいです。自分では何もせず文句ばっかり言うのではなく、挑戦を応援して、成功者に心から拍手を送ることができる社会を作っていきます。
安心して挑戦できる社会を作っていくので、若い世代のみなさんには思い切りチャレンジしてほしいですね。