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政治ドットコム速報【国会質疑速報】3月12日 衆議院本会議 立憲民主党・重徳和彦議員による水素社会推進法・CCS事業法に関する質疑

【国会質疑速報】3月12日 衆議院本会議 立憲民主党・重徳和彦議員による水素社会推進法・CCS事業法に関する質疑

投稿日2024.3.14
最終更新日2024.04.01

1. 概要

2024年3月12日、衆議院本会議において、水素社会推進法・CCS事業法について話し合われ、立憲民主党の重徳和彦議員が質疑を行いました。重徳議員は、日本はこれまで世界トップクラスの省エネ技術や環境技術を磨いてきた反面、水素や再生可能技術など次世代エネルギーへの取り組みが世界と比べても遅れをとっていると認識を持っており、世界が脱炭素の取り組みを進めている中、日本も既存のルールや市場の根本的な変革に挑むべきと主張しました。

2. 質疑のポイント

  1. エネルギーのゲームチェンジに関する提案:
    1. カーボンニュートラルを目指す国際的な動きにおいて、日本がどのように主体的に取り組むべきか。
    2. 日本のエネルギー政策における遅れや課題、国際社会との調整などについて。
  2. 水素エネルギーと再生可能エネルギーの位置づけ:
    1. 日本のエネルギーミックスにおける水素エネルギーと再生可能エネルギーの役割。
    2. エネルギー自給力の強化に向けた具体的な戦略とビジョン。
  3. 自動車産業と脱炭素化の課題:
    1. 自動車産業における脱炭素化の現状と課題。
    2. EV、FCV、合成燃料などの多様な選択肢についての評価と国際的な動向。
  4. 水素社会とCCS事業の推進:
    1. 水素社会とCCS事業の推進における国内外の動向と課題。
    2. 低炭素水素のCO2基準や支援策、CCSの経済性や国際的な展望について。

3. 関連する法律

水素社会推進法

主に以下の3点を定める法律案です。

  • 適用範囲を定めるための定義や基本方針の策定、それぞれの役割
  • 計画認定制度の創設
  • 水素等供給事業者の判断基準の策定

この法律案により2050年の脱炭素社会に向けて、安全性を確保しながら低炭素水素等の活用を促進し、エネルギー安定供給・脱炭素・経済成長を同時に実現することとしています。

経済産業省「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための 低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案【水素社会推進法】の概要」

CCS事業法

CCSとは「CO2を回収して地下に貯留する」ことで、脱炭素化が難しい分野におけるGXを実現するために研究が進んでいます。このCCS事業法の内容は以下のとおりです。

  • 試掘・貯留事業の許可制度の創設、貯留事業に係る事業規制・保安規制の整備
  • CO2の導管輸送事業に係る事業規制・保安規制の整備

この法律案により

公共の安全を維持し、海洋環境の保全を図りつつ、2030年までに民間事業者がCCS事業を開始するための事業環境を整備することが可能になるとしています。

経済産業省「二酸化炭素の貯留事業に関する法律案【CCS事業法】の概要」

4. 質疑書き起こし

文字起こしは生成AIを利用しています。詳細な内容については実際の動画をご覧ください。

衆議院インターネット審議中継 ビデオライブラリ:https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55074&media_type=

重徳和彦・衆議院議員:

はじめに、カーボンニュートラルを機に、我が国が国益をかけて主体的に取り組むべきエネルギーのゲームチェンジの進め方についてであります。2050年、カーボンニュートラルは、持続可能な地球環境と人類共通の利益を目指すものでありますが、各国においてはそれぞれの産業構造、資源保有状況、国民生活への影響といった個別事情に応じ、それぞれの国益を守るため、したたかに取り組んでいます。日本は資源の乏しい国なので、化石燃料を外国から大量に輸入してエネルギーを賄っている。これが小中学校でも習う、我が国の従来からの姿です。

我が国はこれまで限られた化石燃料資源を有効に使うため、世界トップクラスの省エネ技術や環境技術を磨いてきたと自負していますが、水素エネルギーや再生可能エネルギーへの取り組みはむしろ遅れをとっている面があると認識しています。世界の中で日本の置かれた現状、日本固有の個別事情をどう認識しているか、斉藤経済産業大臣の認識をお尋ねいたします。

世界がカーボンニュートラルという目標に向かって走り始めた今、日本はこれまでの常識を覆し、エネルギーの世界のゲームチェンジ、すなわち既存のルールや市場の根本的な変革に挑むべきです。経済環境、そして安全保障の観点から国益を懸けて国際社会において有意な立ち位置を取らねばなりません。そのための鍵を握るのが水素エネルギーと再生可能エネルギーです。

一方、エネルギーのゲームチェンジの過程では、各国の壮絶な国益のぶつかり合いを想定すればなりません。我が国の産業がエネルギーシフトが引き起こす、過烈な国際競争の中で淘汰されないよう、国力を維持発展させなければならぬことは当然です。我が国にとって守るべき具体的な国益は何か、国益を守るための戦略をどう考えているのかお尋ねいたします。

我が国の国益に資するゲームチェンジのためには、我が国に有利な国際ルールが必要です。欧州では、すでに域内で排出権取引制度、キャップ&トレードや国境炭素調整メカニズムが進められており、今後は世界のルールづくりに乗り出すとみられますが、我が国がその動きに遅れをとるわけにはいきません。現時点の欧州内での取り組み状況、米国、途上国を含め、国際社会における政府間のルールづくりに向けた進捗状況をご答弁願います。

経済安全保障の観点からは、サプライチェーン上の重要産業が日本国内に立地し集積することこそが、我が国の国益です。エネルギーの脱炭素化が、我が国の産業立地の優位性確保にどう影響すると考えているか、大臣の見通しをお尋ねいたします。

次に水素エネルギー社会に向けたビジョンについてです。化石燃料から水素エネルギーに移行する中で、我が国が何より目指すべきはエネルギーの自給です。我が国はエネルギーを外国に依存しているため、知性学的な安全保障リスクを抱えるとともに、毎年巨額の国付が国外に流出しています。令和4年の化石燃料の輸入額は33兆円を超えているんですよ。国内で賄えるクリーンで持続可能なエネルギーへのシフトに注力し、エネルギーの自給力を高めることこそ、自立した国家としての我が国の存立基盤の強化につながります。ここがエネルギーのゲームチェンジのポイントであります。

水素社会への移行は、エネルギー自給力の強化にどのような筋道で貢献するのか、具体的なビジョンはあるのでしょうか。外国で製造された水素に依存するのでは、コスト、環境、安全保障のいずれの面でも不十分だと考えますが、いかがでしょうか。水素社会が持続的に環境に貢献するには、再生可能エネルギーで生成するいわゆるグリーン水素の比重を高めることが急務であり、政府がそのビジョンを明確に示すべきです。政府の再生可能エネルギー推進に向けた本気度を示されたい。特に知性的な強みを生かせるはずの不耐湿気風力発電、地熱発電の推進について明確なビジョンを示すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

先日示唆したJERAの碧南火力発電所では、世界最高水準の技術といわれるアンモニア発電が導入されており、現在20%のアンモニア根性の比率を高め、2030年には50%、将来的には100%線床への移行を目指すスマートトランジッション、すなわちできることから着実にやっていく方針を打ち出しておられます。石炭火力発電をアンモニア発電に切り替えるゲームチェンジは海外にも波及するのか、アジアなど都城国を含むカーボンニュートラルへの貢献と日本の経済的メリットを両立できるのか、具体的な戦略を問います。そのために必要なコスト低減の見通しはいかがでしょうか。

カーボンニュートラルに向かう世界で、戦う上で水素エネルギーやCCSの推進は不可欠と多くの産業界が捉える中で、最も裾野が広い機関産業である自動車産業を取り上げて質問します。自動車の脱炭素化は車の電動化のみならず、電力、製鉄、部品製造などの関連産業、さらにはユーザーの走行時のライフサイクルアセスメントの視点が必要です。自動車のライフサイクルアセスメントの各段階の脱炭素化の現状はどうか、答弁をお願いいたします。

次にEV、電気自動車についてです。ここ数年、世界で新車の製造販売を全面的にEVに切り替えようとする動きが目立ちましたが、ここへ来て各国の状況も変化しつつあるようです。私はかねてより、EVの全面的な普及には課題が多いため、自動車産業のカーボンニュートラルにはEVのほかハイブリッド技術や燃料電池、合成燃料等を活用した多様な選択肢をもって現実的に対応すべきと主張してまいりました。我が国として、EU、米国、中国など国際的な自動車産業政策の動向をどう評価しているか、ご答弁願います。また、国際社会全体が多様な選択肢を視野に入れた現実的な路線を進むよう、日本国政府が国際交渉において刻意気をかけてイニシアチブを取るべきと考えますが、現状と具体的な課題をどう認識しているのか、ご答弁願います。

欧州では、既に昨年3月CO2を排出しない合成燃料、EFUELの利用を前提に、来年期間の存続が合意されました。EFUELの開発状況やその特性、実用に向けた見通しをお示しください。

FCV、燃料自動車も、水素社会における有力な選択肢の一つですが、現時点では十分普及しておらず、今後はバストラックのFCV化を推進すべきです。今後のFCV普及について、国内と海外市場への展開も併せ、ご答弁願います。

水素ステーションの設置にも課題があります。政府は現場を確認し、水素ステーションが普及しない原因と、どうすれば実効性ある事業となるかを検証するとともに、水素利用が社会全体で拡大していくよう、企業や自治体へ支援を強化すべきではないでしょうか。海外市場への展開戦略と併せ、ご答弁願います。

ここまで申し上げた観点から、今回の2法案の内容に沿って質問いたします。まず水素社会推進法案において、低炭素水素等のCO2基準をどう想定しているのか、明らかにしていただきたい。輸送時の排出CO2も加味するなど、ライフサイクル全体のCO2基準とすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。水素サプライチェーンの構築における低炭素水素等への価格差に着目した支援の仕組みや、支援対象機関は事業者の参画に当たっての重要事項であり、政府の考え方を明確にお示しください。また、愛知水素関連プロジェクトのような地域の取り組みも進められていますが、価格差支援や拠点整備支援によってどのぐらいの需要の掘り起こしを目指していて、利用者となる産業、企業や自治体に対し、どのような支援をしていこうとしているのか、具体的にお示しください。

次にCCS事業法案に関して、我が国ではCCSのメカニズムが十分周知されておらず、自己リスクや事業所からのCO2の回収率などについて、国民の理解を得る必要があると考えますが、いかがでしょうか。これまで、新潟県長岡市や北海道智子市でCCSの事業化に向けた実証試験が行われてきましたが、我が国におけるCCSの適地はどの程度あると想定していますか。また、実際の候補地の指定にあたっては、事業者選定、事業内容などについて、智子市の事例などを参考に、住民参加による地元への説明や協議の場を確保し、事業や工事による環境負荷を検証する環境評価の仕組みを、工業法の制度に倣って、制度的に担保すべきと考えます。大臣のお考えをお尋ねいたします。CCSも大きなゲームチェンジです。CCSの技術や事業が海外で評価され、受け入れられるだけの経済性や、その際の我が国にとっての経済的メリットがあるのでしょうか。アジアCCUSネットワークの展望も含め、ご答弁願います。

以上で質問を終わります。ありがとうございました。

 

斉藤健経済産業大臣:

議員のご質問にお答えします。日本のエネルギーの現状や固有事情、国益を守るための戦略についてお尋ねがありました。我が国はすぐに使える資源に乏しく、山と深い海に囲まれ、再エネ的地が限られるという地理的要因もあり、エネルギー自給率が約13%と世界的にも低い水準にあります。したがってエネルギーの安定供給は、我が国のすべての社会経済活動を支える不可欠なものであります。

国際競争力の維持強化と国民生活の向上の観点から、S++3Eの原則のもと、安定的で安価なエネルギー供給を確保することが、まさに国益そのものであると理解しております。とりわけ将来が期待される水素や再エネは、産業競争力強化にも資する分野であり、我が国が劣ることは許されません。水素製造や輸送技術、ペロブス回避と太陽電池や風力などについて、技術開発から社会実装、サプライチェーン構築まで切れ目なく支援を行います。このような取り組みを通じて、安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に全力で取り組んでまいります。

脱炭素に向けたルールづくりについて、EUの取り組み状況や国際的な政府間のルールづくりについてお尋ねがありました。EUは、EU域外からの鉄やアルミなど6つの分野の対象製品を輸入する際に、製造過程における炭素排出量に応じて課金する「EUシーバム」という仕組みを導入することとしており、昨年10月より移行期間が始まっています。ネットゼロの実現に向けては、各国がそれぞれの戦略に基づき、独自の取り組みを模索している状況であると承知しています。今後、国・地域を超えた国際的なルールづくりを進めていかなければならない状況であると認識しています。

このような中で、我が国としても、GXの推進を日本企業の競争力強化につなげていく観点から、国際的なルール形成及び環境づくりに積極的に取り組んでいかねばなりません。こうした観点から、アジアゼロエミッション共同体における二国間クレジット制度の利活用を含む協力の促進や、IAやOECD等の国際機関と連携し、グリーンスチールなどの国際評価手法の確立に向けた議論を進めてまいります。

エネルギーの脱炭素化による我が国の産業立地の優位性確保への影響についてお尋ねがありました。世界各国でGX実現に向けた投資競争が熾烈化し、国内外でサプライチェーン全体で排出削減を目指す企業が増加する中、エネルギーの脱炭素化の推進は、我が国に立地する企業の競争力に大きく影響すると考えており、産業立地の優位性を確保するためにも重要な課題であります。

一方で、我が国は周囲を海で囲まれ、安価にかつ安定的に使えるエネルギー資源が乏しい現状を踏まえますと、エネルギー需給構造両面での改革が必要です。まずはこれまで取り組んできた徹底した省エネに加え、再エネ、原子力など脱炭素効果の高い電源の最大限拡充など、エネルギーの脱炭素化に向け、あらゆる手段を講じていきます。こうした取り組みに加え、GX経済交際を活用した投資促進策や、カーボンプライシング、本法律案などの規制・制度的措置を組み合わせ、我が国のGX投資を加速させ、サプライチェーン全体をGX型に構造転換することで、産業立地の優位性を高めてまいります。

水素社会への移行によるエネルギー持続率の向上についてお尋ねがありました。国内の再エネ等から製造された水素を活用する場合、体操を輸入に依存する化石燃料の使用を減少させることができます。このため、エネルギー持続率向上の観点からは、国内における再エネの利用促進と、水素等の製造供給体制の構築に取り組むことが重要であります。

こうした観点から、水素社会推進法案における支援措置においては、十分な価格低減が見込まれ、将来的に競争力を有する見込みのある国内事業を、まずは最大限支援しています。しかしながら、少なくとも当面の間は、国内製造だけでは、産業で必要とする水素需要をまかないない見込みが高い状況です。

また、世界では、すでに安価で低炭素水素等の製造が可能な適地の確保など、権益獲得競争が始まっている状況にあります。このため、国内よりも相対的に安価かつ大量に製造が可能な輸入についても、S+3Eを前提にGXの実現に資するものに限定して支援していくことが必要と考えています。

再エネ推進についてお尋ねがありました。再エネについては、地域との共生を前提に目標である、2030年度電源構成費の36から38%の実現に向けて、最大限導入していくことが政府の基本方針であります。特に、洋上風力発電は、2030年に10GW、2040年に30から45GWの案件形成目標に向け、再エネ回帰利用法に基づく着実な案件形成に向け取り組んでまいります。加えて、排他的経済水域においても、必要な手続き等の整備に取り組んでまいります。

排他的経済水域において主流となる、不対式洋上風力発電については、コスト低減と大量生産に係る技術確立が課題です。グリーンノベーション基金を活用し、社会実装に向けた要素技術開発に取り組むとともに、今年度からは、具体的な海域を利用した大規模実証実験事業を進めています。また、自熱発電については、現在の自熱発電の電源構成比率を、2030年度には約3倍に引き上げるとの目標を掲げており、開発リスクやコストの低減、地元理解の獲得といった課題に対応するため、国立公園等の有望地点の資源量調査、事業者が実施する初期調査等への支援や、地元に対する理解促進活動への支援を実施しています。引き続き、関係省庁とも連携し、国民負担の適正化と地域との共生を図りつつ、災害の最大限の導入に全力で取り組んでいきます。

アンモニア発電のカーボンニュートラルへの貢献と経済的メリットの両立、及びコスト低減の見通しについてお尋ねがありました。海外市場のうち、特にアジアでは、石炭火力への依存度が高い国が存在し、今後も石炭火力の新設も続く中、伸びゆく需要をまかないつも、脱炭素と両立する現実的な手段が求められていると認識しています。現に様々な政府間対話の場において、カーボンニュートラルに向けたエネルギー移行に関する日本の協力についての期待が示されているところです。こうした中、我が国はアンモニア発電について高い技術を有しており、海外でも日本の技術を活用したアンモニア発電が商用で導入されるなど、ビジネスにつながる形での展開も始まりされます。我が国の強みとなる技術を通じて、アジアでの脱炭素化を積極的に進めてまいります。

お尋ねのアンモニアのコスト低減に向けては、水素基本戦略において、2030年に水素換算で、一立米あたり10円台後半、1kgあたり200円程度の目標を掲げております。この実現に向け、グリーンイノベーション基金を通じた技術開発や、水素社会推進法案の価格差に着目した支援を通じて、コスト低減を目指してまいります。

自動車のライフサイクル各段階における脱炭素化の現状についてお尋ねがありました。まず政府としては、2050年に自動車のライフサイクル全体でのCO2ゼロを目指すこととしています。その実現に向け、製造段階については、国内のエネルギー供給の脱炭素化を促進していくと同時に、ご指摘の製鉄や部品製造を含め、関連するサプライチェーン全体で徹底した省エネルギーや、電化や非化石エネルギーの活用が進んでおります。

具体的には、自動車製造業の脱炭素化は、昨年度は2013年度比で31%削減まで進んだものと承知しています。使用段階については、燃費の向上、電動車の普及、合成燃料の研究開発などを同時に進めており、2023年は、ハイブリッドを含めた電動車の新車販売が、全体の約50%となっています。廃棄段階については、リユース・リサイクルの高度化が鍵であり、蓄電知能・リサイクル技術開発などの取組を進めています。

今後の国際的な脱炭素化の潮流の中で、自動車においても、車の電動化など使用段階のみならず、ライフサイクル全体での脱炭素化が評価されていくものと考えています。各段階でのCO2の削減は、今後の国際競争力に直結するとの認識のもと、引き続き取組を進めてまいります。

カーボンニュートラルに向けた各国地域の自動車産業政策に対する評価と、国際交渉における我が国のイニシアティブについてお尋ねがありました。

EU、米国、中国等の諸外国では、カーボンニュートラルの実現に向けて、EVの導入を促進していくことが、大きな政策の方向性であると認識しています。他方で、例えば英国では、ガソリン車の販売禁止時期が延期をされたり、EUでは、2035年以降もEVとFCVに加え、合成燃料のみで走行する車両の登録を認めるなど、現実に直面する中で、さまざまな動きがあります。

その中で、我が国としては、2035年までに、乗用車審査販売で、ハイブリッド車も含めた電動車100%という目標を掲げ、水素や合成燃料も含む、多様な選択肢の追求を基本的立場としてきました。これまでも昨年のG7広島サミットやAZECなど、さまざまな場で、その重要性を主張し、関連する共同声明に盛り込まれたところです。引き続き、自動車分野のカーボンニュートラル実現に向けて、多様な選択肢を日本が主導して国際社会に発信してまいります。

EUの開発状況やその特性、実用化の見通しについてお尋ねがありました。

合成燃料EFUELは、水素と発電所や工場等から回収した二酸化炭素を活用して製造される、カーボンニュートラルに資する燃料であります。既存の内燃機関や燃料インフラが活用できること、化石燃料と同等の高いエネルギー密度を有することがメリットであり、2030年代前半までの商用化を目標に掲げています。この目標を達成するため、グリーンイノベーション基金により、EFUELの大規模かつ高効率な製造プロセスの開発に約550億円を支援するとともに、NEDを通じて大学や石油基盤等が参加するコストの低減を目指した、次世代型のEFUEL製造技術の開発を行っています。また、自国生産のみならず、日本企業の海外プロジェクトへの参画を後押しすることを通じて、早期のノウハウの獲得を促していきます。引き続き、合成燃料の早期商用化に向けてしっかりと取り組んでまいります。

FCVと水素ステーションの国内普及と海外市場への展開についてお尋ねがありました。

FCVの普及に向けては、車両や水素の燃料価格が高いことや、水素ステーションの自立化に向けては、水素需要の拡大や、水素ステーションの運営費の低減といった課題があります。FCVはEVと比べ、航続距離が長く、充填時間が短いという特性を踏まえ、商用車に充填を置いて導入を進めていくこととしています。

具体的には、トラックやバス等のFCVを導入する企業等への補助、商用車など大規模かつ安定的に水素需要が見込まれる地域への水素ステーションの戦略的な整備など、意欲ある地方自治体と連携しながら、総合的に取り組んでまいります。また、水素ステーションの事業性についても、継続して検証を行っていきます。

海外展開に向けては、欧州や中国等も商用車へのFCV導入に取り組んでいる中で、その基幹部素材である燃料電池について、国内外の市場を一体で捉えて、開発普及を進める必要があります。国内における燃料電池や部品素材の製造能力の強化を支援するとともに、水、電解装置等の様々な用途での活用を進めていくことで、国内外の需要獲得を目指してまいります。

水素社会推進法案における低炭素水素等のCO2排出量の基準についてお尋ねがありました。低炭素水素等のCO2排出量の基準については、現在、海外の制度の参考に、例えば水素1kgの製造に係るCO2排出量が3.4kg以下のものを対象とすることを審議会において議論しており、具体的な内容については今後省令において定めることとしています。また水素については輸送時のCO2排出量について、現段階ではその測定方法についての国際的な議論が集まっていません。このため、我が国では現時点で輸送時のCO2排出量を含めることを想定はしておりません。今後も各燃料における国際的な議論の動向も注視しながら、引き続き検討を進めていきたいと考えています。

価格差に着目した支援や拠点整備支援の内容についてお尋ねがありました。価格差に着目した支援では、低炭素水素等の供給事業者に対し、低炭素水素等によって代替される原料・燃料との価格差を15年間支援してまいります。これにより、低炭素水素等の利用者となる企業・自治体等が、経済合理的な価格で低炭素水素等を調達することができるよう支援してまいります。また、拠点整備支援では水素等の大規模利用に資する共用設備を支援することで、コンビナート等での大規模な水素利用を推進していきます。実際にどのようなプロジェクトが本制度の支援対象として選定されるか、現時点で見込むことは困難でありますが、本制度のみならず、GI基金等の研究開発や規制・制度的措置も通じた取組を組み合わせることにより、自給炉を両面に働きかけ、2030年に最大年間300万トン、2050年には年間2000万トン程度の水素の導入を目指しています。愛知県におかれても地域と企業が一体になって、精力的に検討が進められていると伺っており、我が国のGX実現に資するプロジェクトとなることを期待しております。

CCSに関する国民の理解やCCSの適地事業者選定などについてお尋ねがありました。まずCCS事業は国民の皆様の理解を得ることが重要です。国が主導して地域ごとに説明会を行い、ご指摘の事故リスクやCO2の回収率を含め、CCSの政策的意義や負担・安全性などを丁寧に説明してまいります。苫小牧においてCCS実証を担う日本CCS調査株式会社によれば、我が国には約160億トンのCO2の貯留可能量があると推定されています。国もデータの蓄積を継続し、適地調査を計画的に推進します。

また事業者選定にあたり、CCS事業法案では、工業法も参考に、都道府県知事と協議を行った上で、利害関係者からの意見を踏まえて許可を行うこととしており、トマコマイ市における事例も踏まえて、地元への説明に対応してまいります。CCS事業における環境影響については、工業法も参考に、貯留事業実施計画を認可制とした上で、貯留事業者にCO2の漏洩防止措置を講じさせるとともに、モニタリング義務を課しており、周辺環境に影響を及ぼさないよう取り組んでまいります。

我が国のCCS技術への海外からの評価や、その導入に伴う、我が国の経済的メリットなどについてお尋ねがありました。我が国はCCS技術の開発を20年以上行っており、CO2の分離回収、輸送、貯留のプロセス全体についての技術を保有しています。こうした我が国の技術については、その経済性も含め海外で評価されており、マレーシア、タイ等のアジア対応州の国々が、日本の政府機関や企業と協力覚書を締結しています。また2021年に経済産業省とエリアが主導し、東南アジア主国と日米合委員の14カ国をメンバーとして、アジア全域でのCCUS活用に向けた知見の共有や、事業環境整備を目的とするアジアCCUSネットワークを立ち上げました。こうした取組を通じ、各国のCCSプロジェクトへ、我が国企業の参入が進展することで、CCS技術を必要とする国だけではなく、これらの国々への技術の海外展開等を通じて、我が国経済にとってもメリットがあると考えております。

質疑者等

重徳和彦(立憲民主党・無所属)

https://say-g.com/interview-new-opposition-party-6786

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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